第56話 新たな考察

文字数 926文字

 家に着き、式はこれまでの情報を整理する。

(少しずつこの事件がわかってきた。だがまだまだ謎はある……)

 わかってきたこともあるが、式には肝心の犯人の見当がついていない。

(まあ、まだ必要な情報が全て揃ったわけでもないか)

 まだ赤城兄弟と関わりのある須永という男の情報や、街に表れた謎の焼死体の身元もわかっていない。
 これらの情報を手に入れてからでも、犯人の推測をするのは遅くないだろう。
 そもそも、里中の事件と焼死体の事件は関連性があるかどうかもはっきりとしていない。
 二つの事件に共通しているのは、どちらも朝霞龍吾が絡んでいるかもしれないという点だけだ。

(朝霞龍吾。あの男に話を聴ければいいんだけど)

 朝霞龍吾については、未だに行方が知れていないようだ。
 そして、式にはもう一つ気になっていることがあった。

(あの時聞こえた、謎の声……)

 式の頭に直接語り掛けるように響いた謎の声。
 あれは一体何だったのだろうか。

(あの声の通りだとすると、あの時点での情報でもう少しわかることがあったということになる。それは一体何なんだ……?)

 あの時点での情報を整理し始めた。
 そこで式は、里中の事件で見落としていた箇所の目星をつけた。

(待てよ。里中先生の事件で俺は顔見知りの人物が犯人であると推理した。けどもしかしたら……)

 気づいたことを元に推理を再構築する。

(そうか! もしかしたらそういうことかもしれない。そういえばあの時何か言ってたような気が……)

 それを確認すべく、式は榊に電話する。

「榊さん、ちょっと聞きたいことがあるんだけど……」

 式の問いに対し、榊は自分の記憶を辿り回答した。

「わかった、ありがとう」

 続いて隼人に電話する。

「隼人さん、ちょっと確認したいことがあるんですけど……」

 隼人の回答を聴き、式は確信する。

「わかりました。ありがとうございます」

 通話を切り、再度考え直す。

「よし、ようやく真相がわかり始めてきたぞ」

 新たな進展があったことに喜ぶ式。

「それにしても、あの声は何だったんだろう」

 その謎は今は解けることはなかった。
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