第64話 犯人の正体
文字数 1,633文字
車に荷物を詰めていく。
もう後戻りはできない。早くこの国から脱出しなければ。
荷物を全て詰め終え、車に乗る。
今からならギリギリ最終便に間に合う。
車を発進させ、空港へと急いだ。
しばらく運転していると、突然目の前が光に包まれた。
「な、何だ!?」
眩しさで思わず一瞬目を逸らす。
次に前を見てみると、そこにはとある人物が立っていた。
その人物はこちらに近づくと、突然車のフロントガラスを蹴りで割り、車の中に入ってきた。
「よお、どこに行くんだ? 俺も連れて行ってくれよ」
その人物は朝霞龍吾だった。
「あ、朝霞龍吾……!」
「ゆっくり話そうぜ。こんな狭い場所じゃなくてな」
そう言うと龍吾は首を掴んで割れたフロントガラスから外に投げ出した。
「あの大荷物、高跳びの準備でもしてたのか?」
「……」
「悪いが、お前を逃がすわけにはいかないんだよ。自分の罪はしっかりと償ってもらわなくてはな。そうだろ、赤城智也」
龍吾に指名された赤城智也は何も言えずにいた。
「俺が今日見つけた四肢のない死体。あの人物を殺害したのはお前だ」
「はあ? 何だそれ。何か証拠でもあるのかよ」
「お前、警察に俺に襲われて殺されるって電話していたらしいな。なのにお前はこうして今五体満足で生きている。これが何よりの証拠だろう」
「そんな電話した覚えはねえなあ」
「とぼけても無駄だ。その音声は録音されている。言い逃れなんてできるわけねえんだよ」
赤城智也の言い訳を許さない。
「俺は今日、お前ら暴力団のアジトに行って、情報を聞き出しに行った。だが実は、その情報はお前が用意した罠だったんだ」
龍吾は赤城智也の計画を語りだした。
「その後俺は手に入れた情報を元にあの廃墟に向かった。そこの五階には先ほどいった四肢が切断された遺体があった。俺はそれを調べようと思ったが、部屋に入った瞬間に仕掛けられていた爆弾の起爆スイッチが作動したんだ」
「……」
「起爆スイッチが作動した爆弾は、五分後に爆発するようになっていた。この時俺は疑問に思った。なぜすぐに爆発させずに、五分後に爆発するようになっていたのか」
その答えを、龍吾は考察していた。
「理由は簡単だ。あの死体を発見してもらいつつ、死体を調べさせないためだ。そうする理由はお前の偽装殺人を成功させるためだ」
「偽装殺人だと?」
「あの死体を検死すれば、身元が判明する。お前は警察に電話して如何にも俺に殺されたという状況を作ってあの死体を発見させたのに、いざ調べてみると別人の死体だった、となるとお前が仕組んだことだと容易に推測できてしまう。それを防ぐために爆発させてあの廃墟ごと証拠を隠滅させたんだ」
「……」
「そしてあの死体に四肢がなかったのも理由がある。それは一目見てお前の死体ではないと判断させないためだ。あの死体の体型と、実際のお前の体格が合わなかったんだろう。だが四肢を切断すれば、胴体部分だけになるから一目見ただけでは誰の死体なのか区別がつかない。写真を撮ってしっかりと観察すればわかるかもしれないがな」
そう言いながら龍吾は懐から写真を取り出した。
「もう一つ理由がある。それは事前にあの死体の足部分を使っていたからだ。つまりお前はあの死体の四肢を切断し、足部分だけを別の死体と組み合わせた。それが昨日発見されたこの焼死体だ」
昨日発見された謎の焼死体は、上半身だけが焼かれていて下半身は足だけが残っていた。あれは偶然そのように焼けてしまったのではなく、意図的に行ったものだと龍吾は言う。
「あの焼死体は上半身と下半身が別々の死体だった。下半身は言わずもがな、今日発見された四肢を切断された死体と同一のものだ。そして肝心の四肢を切断された死体は一体誰なのかということだが……」
「……」
「あれはお前の兄、赤城哲也のものだ」
龍吾ははっきりと断言した。
もう後戻りはできない。早くこの国から脱出しなければ。
荷物を全て詰め終え、車に乗る。
今からならギリギリ最終便に間に合う。
車を発進させ、空港へと急いだ。
しばらく運転していると、突然目の前が光に包まれた。
「な、何だ!?」
眩しさで思わず一瞬目を逸らす。
次に前を見てみると、そこにはとある人物が立っていた。
その人物はこちらに近づくと、突然車のフロントガラスを蹴りで割り、車の中に入ってきた。
「よお、どこに行くんだ? 俺も連れて行ってくれよ」
その人物は朝霞龍吾だった。
「あ、朝霞龍吾……!」
「ゆっくり話そうぜ。こんな狭い場所じゃなくてな」
そう言うと龍吾は首を掴んで割れたフロントガラスから外に投げ出した。
「あの大荷物、高跳びの準備でもしてたのか?」
「……」
「悪いが、お前を逃がすわけにはいかないんだよ。自分の罪はしっかりと償ってもらわなくてはな。そうだろ、赤城智也」
龍吾に指名された赤城智也は何も言えずにいた。
「俺が今日見つけた四肢のない死体。あの人物を殺害したのはお前だ」
「はあ? 何だそれ。何か証拠でもあるのかよ」
「お前、警察に俺に襲われて殺されるって電話していたらしいな。なのにお前はこうして今五体満足で生きている。これが何よりの証拠だろう」
「そんな電話した覚えはねえなあ」
「とぼけても無駄だ。その音声は録音されている。言い逃れなんてできるわけねえんだよ」
赤城智也の言い訳を許さない。
「俺は今日、お前ら暴力団のアジトに行って、情報を聞き出しに行った。だが実は、その情報はお前が用意した罠だったんだ」
龍吾は赤城智也の計画を語りだした。
「その後俺は手に入れた情報を元にあの廃墟に向かった。そこの五階には先ほどいった四肢が切断された遺体があった。俺はそれを調べようと思ったが、部屋に入った瞬間に仕掛けられていた爆弾の起爆スイッチが作動したんだ」
「……」
「起爆スイッチが作動した爆弾は、五分後に爆発するようになっていた。この時俺は疑問に思った。なぜすぐに爆発させずに、五分後に爆発するようになっていたのか」
その答えを、龍吾は考察していた。
「理由は簡単だ。あの死体を発見してもらいつつ、死体を調べさせないためだ。そうする理由はお前の偽装殺人を成功させるためだ」
「偽装殺人だと?」
「あの死体を検死すれば、身元が判明する。お前は警察に電話して如何にも俺に殺されたという状況を作ってあの死体を発見させたのに、いざ調べてみると別人の死体だった、となるとお前が仕組んだことだと容易に推測できてしまう。それを防ぐために爆発させてあの廃墟ごと証拠を隠滅させたんだ」
「……」
「そしてあの死体に四肢がなかったのも理由がある。それは一目見てお前の死体ではないと判断させないためだ。あの死体の体型と、実際のお前の体格が合わなかったんだろう。だが四肢を切断すれば、胴体部分だけになるから一目見ただけでは誰の死体なのか区別がつかない。写真を撮ってしっかりと観察すればわかるかもしれないがな」
そう言いながら龍吾は懐から写真を取り出した。
「もう一つ理由がある。それは事前にあの死体の足部分を使っていたからだ。つまりお前はあの死体の四肢を切断し、足部分だけを別の死体と組み合わせた。それが昨日発見されたこの焼死体だ」
昨日発見された謎の焼死体は、上半身だけが焼かれていて下半身は足だけが残っていた。あれは偶然そのように焼けてしまったのではなく、意図的に行ったものだと龍吾は言う。
「あの焼死体は上半身と下半身が別々の死体だった。下半身は言わずもがな、今日発見された四肢を切断された死体と同一のものだ。そして肝心の四肢を切断された死体は一体誰なのかということだが……」
「……」
「あれはお前の兄、赤城哲也のものだ」
龍吾ははっきりと断言した。