第57話 朝霞龍吾と三つ目の遺体

文字数 1,286文字

 翌日、式たちは通常通り授業を受け、放課後に警察の調査を聴く予定になっていた。
 そしてすべての授業が終わったので、今から警察に向かうところだった。
 しかし、式はすぐに警察にはいかず、先にある用事を片付けることにした。

「榊さん、先に警察に向かってて。俺はちょっと用事があるから」
「何の用事ですか?」
「すぐ終わるよ。だからよろしくね」

 式は職員室に向かった。
 職員室で、式は担任の佐倉を呼び出す。

「すみません、佐倉先生はいますか?」

 式の声を聴いた佐倉が駆け付ける。

「あら式くん。どうしたの?」
「ちょっと聞きたいことがあるんですが……」

 式は佐倉に耳打ちする。

「ええ、それなら……」
「あ、ちょっと待って!」

 大声で静止する。

「ど、どうしたの」
「すみません、俺の耳元で言ってくれませんか?」
「え……?」

 佐倉の顔が赤くなる。

「ま、まさか式くんそういう趣味なの……? 最近流行りのASMRっていうのよね。でも私みたいな年増よりも、もっと若い子の方がいいんじゃ。例えば榊さんとか……」
「ち、違いますよ! 何勘違いしているんですか」
「あ、ち、違うのね」

 勘違いを恥じる佐倉。

「でも、若い子の方がいいというのは否定しないのね」

 ボソッと呟く。

「え?」
「何でもないわ。それでさっきの件だけど」

 佐倉は言われた通り耳打ちで式の質問に答えた。

「……やっぱりそうだったか」
「これで何かわかったの?」
「ええ、ありがとうございます。では俺はこれで」

 佐倉にお礼をし、式は警察へと向かった。



 警察へ向かう途中、式は見知った人物を見かけた。

「あれは……!?」

 2m近くの身長、そして遠目から見ても目立つ銀髪。
 その人物とは朝霞龍吾だった。

「朝霞龍吾……!」

 式は彼に気づかれないよう後を付ける。
 そこでタイミングがいいのか悪いのか、携帯に着信が入った。

「式くん、大変です!」
「ごめん、榊さん。今ちょっと忙しくて。後で電話をかける」

 榊の話を聞かず、電話を切った。
 しばらく朝霞龍吾の後を付けていると、森に囲まれた廃墟の建物に着いた。
 朝霞龍吾はその中に入っていった。

「こんなところに何の用だ……?」

 怪しげに思いつつ、式も中に入った。
 廃墟の建物はエレベーターを見たところ5階建てのようだった。
 だが当然エレベーターは動いていない。
 朝霞龍吾は階段を登って上の階へと上がっていったので、式もその後をつけた。
 しかし、朝霞龍吾は式が後をつけているのに気づいたのか、足を速めた。

「くっ、バレたか!?」

 式も必死にその後を追う。
 階段を駆け上がる音から察するに、どうやら朝霞龍吾は5階まで登っていったようだ。
 五階には部屋が一室しかなかったので、式がその部屋に入っていくと、そこには驚愕の光景があった。

「えっ!?」

 式の目に映ったのは、十字架のようなものに張り付けにされた四肢を切断された遺体と、その死体の前にいる朝霞龍吾だった。
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