第69話 居酒屋での会話
文字数 1,185文字
「おーい、こっちよ!」
佐倉司はとある居酒屋に来ていた。
彼女の友人である、北條舞香の愚痴を聞くためだ。
「まったく、いつも突然呼び出すんだから……」
既に何度もあることとはいえ、いきなり呼び出されると予定が狂うこともある。
しかし、その彼女の性格をわかっているからこそ、彼女は今まで付き合いを続けていられたのだろう。
(まったく、大したものね……)
そう心の中で思いながら、席についた。
「生中一つ、お願いします」
店員を呼び出し、注文をする。
「それで、今日はどんな愚痴を聞かされるの?」
「今日は愚痴じゃないのよ。ちょっとこれを見てほしいんだけど」
北條から一枚の紙を渡される。
かなりボロボロで、年季が入っていることがわかる。
「何これ。かなり古いものじゃない」
「それに書かれている文章を読んでみてよ」
「どれどれ……」
その紙には、こう書かれていた。
『林檎の木がある林には
白馬が通る道筋と
陶犬瓦鶏の犬がいる
瑠璃水晶のようにまた
宝の行方を示したまえ』
「何これ、暗号?」
「そうなのよ。私の曽祖父が残したもので、今から百年くらい前に書かれたものらしくて。その暗号を解くと曽祖父が遺した宝が手に入るって父が言うのよ」
「へえー、宝ね」
「でも祖父も父も暗号が解けないみたいで、かくいう私もね。頭を使うのはあんまり得意じゃないから」
「あんた、一応警官でしょ。頭使うこともあるんじゃないの?」
「大丈夫よ、私交通課だし」
何が大丈夫なのだろうか。
「それで今回呼んだのは、この暗号を司に解いてもらいたいのよ」
「……何で私が?」
佐倉は一瞬焦ったような表情を浮かべる。
「だってあんた、明戸高校の教員として働いているんでしょ。あの高校頭のいい生徒ばかりだから、そんなところで教員として授業を教えているあんたなら、こんな暗号くらいちょちょいのちょいじゃない」
「……パス。私こういうの得意じゃないし」
「えー。あんた以外に頼める人いないんだけど」
「そうは言ってもねえ……」
どちらも困り果てている。
「そうだ、確かあんたの高校に探偵会あったでしょ。最近も大きな事件を解決したっていうし、その探偵会に暗号の解読を頼めないかな?」
「あー、あの探偵会ね。どうかしら、彼らがこういうのに興味を持っていない可能性もあるし」
「せめて頼んでみてよ」
「まあ、考えてみるわ」
「ありがとうっ!」
佐倉の席まで近づき、抱き着く北條。
「ちょっと、三十歳にもなった大人がこんなところでやめなさい!」
「えー、けち」
「はあ……。そんなことよりそろそろ飲みたいんだけど」
ちょうど良いタイミングで佐倉が頼んだビールが来る。
「そうね、飲みましょう。乾杯!」
二人はグラスを交わしあった。
佐倉司はとある居酒屋に来ていた。
彼女の友人である、北條舞香の愚痴を聞くためだ。
「まったく、いつも突然呼び出すんだから……」
既に何度もあることとはいえ、いきなり呼び出されると予定が狂うこともある。
しかし、その彼女の性格をわかっているからこそ、彼女は今まで付き合いを続けていられたのだろう。
(まったく、大したものね……)
そう心の中で思いながら、席についた。
「生中一つ、お願いします」
店員を呼び出し、注文をする。
「それで、今日はどんな愚痴を聞かされるの?」
「今日は愚痴じゃないのよ。ちょっとこれを見てほしいんだけど」
北條から一枚の紙を渡される。
かなりボロボロで、年季が入っていることがわかる。
「何これ。かなり古いものじゃない」
「それに書かれている文章を読んでみてよ」
「どれどれ……」
その紙には、こう書かれていた。
『林檎の木がある林には
白馬が通る道筋と
陶犬瓦鶏の犬がいる
瑠璃水晶のようにまた
宝の行方を示したまえ』
「何これ、暗号?」
「そうなのよ。私の曽祖父が残したもので、今から百年くらい前に書かれたものらしくて。その暗号を解くと曽祖父が遺した宝が手に入るって父が言うのよ」
「へえー、宝ね」
「でも祖父も父も暗号が解けないみたいで、かくいう私もね。頭を使うのはあんまり得意じゃないから」
「あんた、一応警官でしょ。頭使うこともあるんじゃないの?」
「大丈夫よ、私交通課だし」
何が大丈夫なのだろうか。
「それで今回呼んだのは、この暗号を司に解いてもらいたいのよ」
「……何で私が?」
佐倉は一瞬焦ったような表情を浮かべる。
「だってあんた、明戸高校の教員として働いているんでしょ。あの高校頭のいい生徒ばかりだから、そんなところで教員として授業を教えているあんたなら、こんな暗号くらいちょちょいのちょいじゃない」
「……パス。私こういうの得意じゃないし」
「えー。あんた以外に頼める人いないんだけど」
「そうは言ってもねえ……」
どちらも困り果てている。
「そうだ、確かあんたの高校に探偵会あったでしょ。最近も大きな事件を解決したっていうし、その探偵会に暗号の解読を頼めないかな?」
「あー、あの探偵会ね。どうかしら、彼らがこういうのに興味を持っていない可能性もあるし」
「せめて頼んでみてよ」
「まあ、考えてみるわ」
「ありがとうっ!」
佐倉の席まで近づき、抱き着く北條。
「ちょっと、三十歳にもなった大人がこんなところでやめなさい!」
「えー、けち」
「はあ……。そんなことよりそろそろ飲みたいんだけど」
ちょうど良いタイミングで佐倉が頼んだビールが来る。
「そうね、飲みましょう。乾杯!」
二人はグラスを交わしあった。