第115話 真相解明:犯人指定

文字数 2,309文字

 警察がこの館に来たので、捜査を引き継ぐことにした。
 池上がこれまでの情報を警察に伝え、捜査に協力している。
 早速本格的な検死が開始された。
 その結果、式の想像通り山中からは睡眠薬の反応が検出された。

「やはり、式くんの言った通りだったな」
「……」

 式はその話を聞いて、

「わかりました。これからこの事件の真相をお話します」

 と言った。

「もしかして犯人が分かったの!?」
「ええ」
「それはすごいわね。ぜひとも聞いてみたいものだわ」

 昨日も式に興味を持っていた水島が言った。

「まずこの事件の犯人についてですが、実は犯人はある程度絞ることができるんです」

 式の言葉に、一同がざわつく。

「その前に一つ聞きたいんだけど、そもそも犯人は外部の人間って可能性はないの?」

 第一に思いついた疑問を武藤が言う。

「いえ、外部犯はあり得ません」
「どうして?」
「それは割れた窓ガラスを見ればわかります」

 式の誘いで、全員が外に出た。
 そして窓ガラスが割れている三階の部屋に注目する。

「あの窓ガラスを見た後に、他の窓を見てみてください。何かに気づきませんか?」
「何かにって、他の窓は割れてないなーとしか」
「それですよ」

 春崎の言葉に注目させる。

「他の窓が割れていないという事実が、犯人は外部犯ではないということを物語っているんです」
「どういうこと?」
「そもそもの話、何で窓が割れているんだと思いますか?」

 式の問いに対し、岡田が答える。

「そりゃ、あの窓から部屋に侵入するためじゃないの?」
「何故あの窓から侵入するんですか?」
「あそこに電波受信器があるからでしょ」
「何でそれを外部の人間が知っているんでしょう?」
「あ、そういうことですね」

 ようやく榊は気づいたようだ。

「榊さんは気づいたみたいだね。あの窓だけが割れているということは、あの窓に目的のものがあるということが分かっているからなんだ。そもそも外部の人間はこの館に電波受信器なんてものがあるのを知ることはできないし、仮に知っていたとしても何故あの部屋にあるのを知っているのか、という疑問が生まれる。もし電波受信器の存在を知ってはいるものの、どの部屋にあるのかわからない場合は、まずは全部の部屋を探すはずだ。しかし全ての部屋にはカーテンがかかっているため、外から見たのではどの部屋に何があるのかはわからない。ならば一つずつ調べる必要があるはずなのに、なぜか犯人はたった一つの部屋の窓しか割っていない。これは犯人があの部屋に電波受信器があることを知っているからだ」

 式の推理を全員が黙って聞いている。
 その話を聞いていた榊が言った。

「もし式くんの推理が正しいとすれば、犯人が絞れるどころではなく、ほぼ確定するのではないでしょうか。この中で電波受信器がある部屋を知っているのは……」

 全員の視線がある人物に向かう。
 その人物とは、この館で働く高柳愛だった。

「わ、私ですか……?」
「それしかあり得ないと思いますが」
「待ってくれ、どうして愛ちゃんが犯人だということになるんだ。彼女が犯人などあり得ない!」

 榊の問い詰めに対し、反論の意思を見せる池上。

「榊さん、実は電波受信器がある部屋を知っていたのはもう一人いるんだ」
「それは一体……」
「あなたですよ、池上さん」

 式は池上に目を向ける。

「あなたが阿弥さんを殺害した犯人です」

 式ははっきりと言い放った。

「……な、なにを言っているんだ。どうして僕が犯人にされなくてはならない? そもそも僕はあの部屋に電波受信器があることなんて知らなかったぞ」
「いや、あなたは間違いなく事件が起こった日には知っていた。あなたは今朝、俺と一緒に電波受信器の様子を見に行った時に、三階についてから迷わず電波受信器がある部屋のドアに向かった。『ここだな……』といってドアノブに手をかけていましたよね。なんであの部屋に電波受信器があるということを知っていたんですか?」
「そ、それは……」
「それにもし愛さんが犯人だとするなら、わざわざ窓を割って侵入したりなんかしない。愛さんはこの館で働いている人なんだし、あの部屋の鍵くらい持っている。ならばわざわざあんな折れそうな枝を伝って窓を割って侵入してまであの部屋に入るリスクを負う必要はない。鍵を開ければ安全に入ることができるんだから」

 式の言葉に、池上は反論できなかった。

「じゃあ池上さんがあの窓を割って部屋に入ったってこと?」

 春崎が頭を回しながら疑問を口にする。

「それも考えられない。あの窓から部屋に入るには、細い枝を伝っていく必要がある。流石に男性の池上さんではあの枝に足をかけたら折れてしまいそうだし、そんなリスクを負うことはないだろう」
「じゃあどうやって部屋に入ったの?」
「阿弥さんを殺害してから鍵を奪って入ればいい」
「あ、なるほど」

 式の言葉に春崎は納得したようだ。

「じゃあ今も池上さんは鍵を持っているってことだね」
「……なるほど、君の言いたいことはわかった。ならば僕を調べてみるがいい。あの部屋の鍵なんて持っているわけがないのだから」

 池上は自信満々に言い放つ。

「もちろん、あなたが今あの部屋の鍵を持っているとは思っていません。既に普通では見つからない場所に隠してあるでしょう」
「そこはどこだと言うんだ!?」
「それに答える前に、まずは山中さんの殺人事件を片付けましょう」

 池上を静止し、式は話を切り替えた。
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