第121話 事件発生
文字数 1,659文字
「さて、これからどうするんだ?」
部屋に戻った式が龍吾に尋ねる。
二人は龍吾の部屋に集まっていた。
「どうするも何も、このまま迎えが来るまで待つしかないだろう」
龍吾は携帯をただじっと見つめている。
「少なくとも、この館に何かを企んでいる奴がいるのは明白だ。一応釘を刺しておいたが、果たしてどれほど効力を持つものか……」
「でも、ああ言っておけば犯人も迂闊なことはできないんじゃないの?」
「どうだろうな。……俺は少しミスをしてしまったからな」
「ミス?」
龍吾は自分のミスを説明した。
「誰も部屋から出るな、とは言ったが、逆に言えばあれは犯人以外の行動を制限してしまうことになる。犯人は当然俺の言いつけなど守る気はないだろうから、奴らの行動を自由にしてしまうんだ。例えば部屋の窓から侵入して強引に殺害するなんてこともできるし、その他にも全員部屋に閉じこもっていることがわかっているから、何をしようにも安心して行動することができる」
「それなら、龍吾だけ部屋から出て見回りをすればいいんじゃないか? 龍吾が外をうろつく分なら他の人たちも文句は言わないだろうし」
「それも考えたが、例えば俺が一階にいる間に二階で何かを起こされたら咄嗟に対応ができないというデメリットもある。その隙を突かれて何か行動を起こされたらまずい」
「でもこのまま動かないのも危険ということか……手詰まりだね」
「早く迎えが来てくれればいいんだがな」
それからしばらく待ったが、迎えはまだ来ない。
式は時計を確認するが、まだ数十分しか経っていない。
こういう状況だと時間が経つのが遅く感じるのがもどかしかった。
そして更に数分待つと、突然、
「うわあああああ!!!」
という叫び声が館中に響き渡った。
「い、今のって……」
「……行くぞ!」
式たちは部屋から出て、声がした方へと向かった。
「こっちの方だ!」
声がしたのは近藤の客室だ。
客室のドアは開いており、中を覗くとそこには胸から血を流して倒れている近藤の姿があった。
「おい、大丈夫か!」
龍吾が近寄り、脈を確認する。
しかし既に息絶えていた。
「どうなんだ?」
「……もう事切れてやがる。さっき悲鳴を聞いてから大して時間もかからずにここに来たのに、もう死んでいるってことは即死のようだな」
恐れていたことがついに現実となってしまった。
「こうなったら、全員一か所に集めたほうがいいな」
「じゃあ皆を呼ばないと」
と式が言ったその瞬間、
「きゃあああああああ!!!」
今度は女性の悲鳴が館中に響き渡った。
「ま、またか!?」
「今度はこっちだ!」
声が聞こえた方へ駆けつけると、そこには座り込んでいる中野の姿があった。
「どうした!?」
「あ、そこに倉野さんが血を流して倒れていて……」
「ちっ、またか」
龍吾が死体を確認しようとすると、今度は一階から悲鳴が聞こえてきた。
「一体どうなってやがるんだ!?」
死体の確認をせずに一階に降りると、そこには近藤と同じく胸から血を流して倒れている山上の姿があった。
龍吾は一応生死を確認してみるものの、
「……ダメだな」
やはり結果は予想通りだった。
「もう三人も殺されているのか……」
「こりゃ皆殺しもあり得るな。急いで全員を集めなければ……」
と龍吾が言った途端、やはり館中に悲鳴が響き渡る。
「いい加減にしやがれ、くそがっ!」
さすがの龍吾も苛立ちを隠せなかった。
自分のミスによって犠牲者を出しているのが許せないのだろう。
声がしたのは先ほど中野がいた場所だ。
戻ってみると、そこには背中から血を流して倒れている中野の姿があった。
龍吾が死体を確認しに行こうとすると、二つ隣の部屋で大きな物音がする。
「な、なんだ!?」
「まさか、犯人がいるのか」
龍吾が勢いよく扉を開けて部屋に入るが、そこには誰もいなかった。
部屋に戻った式が龍吾に尋ねる。
二人は龍吾の部屋に集まっていた。
「どうするも何も、このまま迎えが来るまで待つしかないだろう」
龍吾は携帯をただじっと見つめている。
「少なくとも、この館に何かを企んでいる奴がいるのは明白だ。一応釘を刺しておいたが、果たしてどれほど効力を持つものか……」
「でも、ああ言っておけば犯人も迂闊なことはできないんじゃないの?」
「どうだろうな。……俺は少しミスをしてしまったからな」
「ミス?」
龍吾は自分のミスを説明した。
「誰も部屋から出るな、とは言ったが、逆に言えばあれは犯人以外の行動を制限してしまうことになる。犯人は当然俺の言いつけなど守る気はないだろうから、奴らの行動を自由にしてしまうんだ。例えば部屋の窓から侵入して強引に殺害するなんてこともできるし、その他にも全員部屋に閉じこもっていることがわかっているから、何をしようにも安心して行動することができる」
「それなら、龍吾だけ部屋から出て見回りをすればいいんじゃないか? 龍吾が外をうろつく分なら他の人たちも文句は言わないだろうし」
「それも考えたが、例えば俺が一階にいる間に二階で何かを起こされたら咄嗟に対応ができないというデメリットもある。その隙を突かれて何か行動を起こされたらまずい」
「でもこのまま動かないのも危険ということか……手詰まりだね」
「早く迎えが来てくれればいいんだがな」
それからしばらく待ったが、迎えはまだ来ない。
式は時計を確認するが、まだ数十分しか経っていない。
こういう状況だと時間が経つのが遅く感じるのがもどかしかった。
そして更に数分待つと、突然、
「うわあああああ!!!」
という叫び声が館中に響き渡った。
「い、今のって……」
「……行くぞ!」
式たちは部屋から出て、声がした方へと向かった。
「こっちの方だ!」
声がしたのは近藤の客室だ。
客室のドアは開いており、中を覗くとそこには胸から血を流して倒れている近藤の姿があった。
「おい、大丈夫か!」
龍吾が近寄り、脈を確認する。
しかし既に息絶えていた。
「どうなんだ?」
「……もう事切れてやがる。さっき悲鳴を聞いてから大して時間もかからずにここに来たのに、もう死んでいるってことは即死のようだな」
恐れていたことがついに現実となってしまった。
「こうなったら、全員一か所に集めたほうがいいな」
「じゃあ皆を呼ばないと」
と式が言ったその瞬間、
「きゃあああああああ!!!」
今度は女性の悲鳴が館中に響き渡った。
「ま、またか!?」
「今度はこっちだ!」
声が聞こえた方へ駆けつけると、そこには座り込んでいる中野の姿があった。
「どうした!?」
「あ、そこに倉野さんが血を流して倒れていて……」
「ちっ、またか」
龍吾が死体を確認しようとすると、今度は一階から悲鳴が聞こえてきた。
「一体どうなってやがるんだ!?」
死体の確認をせずに一階に降りると、そこには近藤と同じく胸から血を流して倒れている山上の姿があった。
龍吾は一応生死を確認してみるものの、
「……ダメだな」
やはり結果は予想通りだった。
「もう三人も殺されているのか……」
「こりゃ皆殺しもあり得るな。急いで全員を集めなければ……」
と龍吾が言った途端、やはり館中に悲鳴が響き渡る。
「いい加減にしやがれ、くそがっ!」
さすがの龍吾も苛立ちを隠せなかった。
自分のミスによって犠牲者を出しているのが許せないのだろう。
声がしたのは先ほど中野がいた場所だ。
戻ってみると、そこには背中から血を流して倒れている中野の姿があった。
龍吾が死体を確認しに行こうとすると、二つ隣の部屋で大きな物音がする。
「な、なんだ!?」
「まさか、犯人がいるのか」
龍吾が勢いよく扉を開けて部屋に入るが、そこには誰もいなかった。