第94話 計画:第三段階

文字数 1,226文字

 いよいよ本番の第三段階だ。
 ここからは一つのミスが自分の逮捕へとつながっていくだろう。
 今ならまだ引き返せるかもしれないが、ここからは完全に犯罪行為だ。
 まずは母を殺害する。
 既に犯人役の浮気相手は手中にある。つまり現時点でのこいつにはアリバイがないのだ。
 この時間帯に殺害しなければ意味がない。
 殺害をする前に、私は着替えることにした。
 私は鈍器を手に取った。
 もちろん触るときには指紋が着かないように手袋をしている。
 これからの流れはこうだ。

 まず私がスマホで警察に連絡する。次にこのビルの場所を話してから殴られたフリをして通話を切る。そしてすぐさま母を殺害し、この廃ビルから脱出する。
 その後は浮気相手の家に急いで向かい、この男を家に置く。そしてその場から離れれば全て完了だ。
 これでこの男に犯行をなすりつけることができるだろう。
 早速私は母のスマホから警察に連絡した。

『こちら110番です』
「た、助けてください! 殺されそうなんです!」

 精一杯演技をする。
 ちなみに声は母に似せて話している。

『誰にですか、場所は!?』
「齊藤義一という男で、場所は……」

 私は窓から見える景色を元に目印となる建物を話した。

「どこかの廃ビルで、赤い鉄塔が見えます」
『廃ビルで、赤い鉄塔が見えるんですね。他に何か目印となるものはありませんか?」
「えっと、後は……」

 もうこれくらいでいいだろう。
 私はビルの壁に強くぶつかった。

「ぐっ!」

 わざとスマホを床に落とす。

『どうしました!?』

 警察の声には返答せず、そのまま通話を切った。
 よし、これで時期にここに警察が来るだろう。
 その前に母を殺し、ここから脱出しなければ。
 私は手に持っている鈍器で母を執拗なまでに殴った。
 これだけ殴れはさすがに死んでいるだろう。
 後は脱出するだけだ。
 急いで車に向かい、男の家まで発進させた。

 この車で走っている姿は、見られてもいい。
 むしろ見られた方がいいのかもしれない。
 ただし、私がこの車に乗っていることは見られてはならないので、やはり急いでこの男の家へと向かった。
 数十分後、ようやく家に着く。
 早速私は後部座席から男を運びだし、家に入った。
 家の鍵はこいつが持っている物を使っている。
 とりあえずこいつの部屋のベッドにでも寝かせておこう。
 拘束を解き、ベッドに寝かせておいた。
 最後に指紋を残していないかをチェックし、問題がなさそうなので家から脱出した。

 車から折りたたみ自転車を取り出し、それで車を回収してから家に帰る。
 これで全て完了だ。
 計画を滞りなく終えた私は、成功の喜びからか高まる鼓動を抑えることができなかった。
 今にも心臓が跳びだしてしまいそうなほどだ。
 このまま事故を起こさないよう、気をつけて運動公園に車を回収してから家に帰った。
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