第49話 事件発生

文字数 1,403文字

 翌朝。
 式は携帯の着信音で目を覚ました。

「何だ……?」

 携帯を起動すると、まだ午前6時前だった。
 着信相手は榊だ。

「こんな時間に何の用かな」

 寝ぼけ眼で電話に出る。

「もしもし……」
「式くん、今から里中先生の家に来てください!」
「え、どうして」
「それは……」

 榊が詳しく説明すると、寝ぼけていた式の脳は一瞬で目が覚める。
 そして急いで着替えて指定された場所へ向かった。



 数十分後、里中の家に着くと、そこには警察と多数の野次馬が群がっていた。
 彼女の家にある門の前で、無残な姿になった女性発見されたという。
 その女性とは、式と榊が良く知っている里中初音だった。

「先生……」

 その光景に、式は思わず目を逸らしそうになる。

「式くん、着きましたか……」

 青ざめた表情で榊が接近してくる。

「あちらに隼人兄さんがいます。詳しくは隼人兄さんから聞いてください」
「うん……」

 式は隼人に近づき、事件の詳細を確認する。

「隼人さん、おはようございます」
「来たか、式くん。せっちゃんから聞いているが、被害者は君たちの学校の教師らしいね」
「はい……」

 式は拳を震わせた。
 里中が殺害されたというのが信じられなかったからだ。
 昨日家で談笑をしていた時は、このように殺害されるなど微塵も思っていなかった。
 彼女に殺害される動機があったのか、そこも疑問だ。

「隼人さん、事件の詳細を教えてください」
「式くん……」
「この殺人は、俺が必ず解決します!」

 はっきりと強い意志を示す式。
 これまでも式は殺人事件を解決してきたが、これほど強い意志で解決しようとするケースはほとんどなかった。

「……わかった。では事件の詳細を伝えよう」

 被害者は里中初音。
 死亡推定時刻は夜十時頃で、死因は心臓を刃物で刺されたことによる出血死。
 第一発見者は近所に住む老人で、彼が午前5時頃に散歩途中に里中の自宅の前を通ったところ、玄関で倒れている彼女を発見したという。
 老人は脈を測ってみたが既に反応はなく、声もかけたが当然返事はなかった。その後警察と念のため救急車を呼んだが、警察が到着するころには死亡が確認された。
 凶器はこの家にあった包丁で、遺体に突き刺さったままだったという。指紋も調べてみたが、家の主である被害者以外の指紋は検出されなかった。

「今第一発見者の老人と近所の住人から事情聴取を行っている」
「隼人さん、先生の旦那さんはどこにいるんですか? 確か昨日先生は年に一度帰ってくる旦那さんのためにたくさん買い物をしていたはず。それなら当然旦那さんは家に帰っているはずでしょう」

 昨日里中が言っていたことを確認する。

「それなんだが、家の中をざっと調べた結果、彼女の夫はいなかった。それどころか、この家に帰ってきた形跡もなかったぞ」
「そんな馬鹿な。何かトラブルがあって帰ってこれなかったとか?」
「あるいは、その夫が犯人かもしれないな」

 里中の夫が犯人。
 それなら、家に夫がいなかったのも、いた形跡がないのも説明がつく。
 だが式はそれが信じられなかった。

「隼人さん、後で家の中を調べてもいいですか?」
「僕と一緒なら構わないよ」
「ありがとうございます。まずは外を調べましょう」

 式たちは調査を開始した。
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