第90話 決意
文字数 1,430文字
翌日、私は早速探偵に連絡した。
今回依頼したのは日本でも有名な探偵事務所で、ここに所属している探偵ならばどんな事件でも必ず解決すると言われていた。
連絡してみると、いきなり今日の午後に話を伺えないかと言ってきた。
幸い予定もなかったので、待ち合わせをして会いに行った。
そこで出会ったのは、私よりも年若い女性だった。
女性というよりも、女子といった感じか。
(大丈夫かなあ……。この子に解決できるのかな)
内心心配だったが、彼女と話してみると印象は少し変わった。
年齢に合わない話し方で私の事情を聴いてくれた。そして問題を解決するにはどうすればいいのか、その道しるべも教えてくれたのだ。
「まずはお母様が本当に浮気をしているのか、それを調べなければ始まりません。調査に数日いただきますが、よろしいですか?」
「はい、よろしくお願いします」
その日はそれで別れた。
数日後、早くも件の探偵から連絡が来た。
なんでも、母が浮気していた証拠を手に入れたらしい。
私はそれを見せてもらった。
母親と見たことがない男性がホテルに入っていく写真だ。
そしてもう一つ、ホテルの入り口付近で二人が会話していた内容を録音した音声も聞かせてもらった。
『こんなに頻繁に会いに来て大丈夫なのか?』
『大丈夫よ、証拠は何もないんだし。夫も娘も内心は疑っているだろうけど』
『そっか。じゃあ今日も……』
『ええ、楽しみましょう』
会話はそこで途切れていた。
男の声に聞き覚えはなかったが、女の声は毎日聞いている母の声だった。
「写真だけではなく、会話の内容からも浮気をしているのは明らかですね」
「……ええ」
薄々わかっていたことだが、やはり事実を突きつけられると落ち込む。
「それにしても、あなたとお母様はよく似ていますね。最初は綾乃さんが来たのかと思ってしまいました」
よく言われることだ。
小さい頃は母に似ていると言われて嬉しがっていたが、今では当然嬉しくもなんともない。
むしろ迷惑なくらいだ。
「それと、こちらが浮気相手の情報です」
資料を受け取った。
名前は斎藤義一。
年齢や性別はもちろん、職業や経歴、住所まで記載されていた。
「よろしければ、今後の手続きの方法などもお伝え致しますが、どうしますか?」
「……いえ、一度父と相談してから決めたいと思います」
「……そうですか。また何かありましたら遠慮なくご連絡ください」
彼女から名刺を受け取り、解散した。
帰り道、私は暗い表情で歩いていた。
母が浮気をしているのは確定した。
後は裁判などを行って離婚すれば、慰謝料などもこちらに入ってくるだろう。
しかし、それでいいのだろうか。
仮にこちらの望みどおりに事が運んでも、結局あの二人はのうのうと生きていることになる。
離婚して慰謝料を支払う。これだけで罰は足りるのだろうか。
もっと社会的な制裁が必要なのではないか。
だが、仮に母が社会的に抹殺されようが、また別の男でも捕まえてそいつに寄生することができるだろう。
女を武器にして働かずに生きていこうとするはずだ。
浮気をするような女なのだから、それくらい考えているだろう。
ならば、あいつにふさわしいのは。
「……」
私は心の中で殺害を決心した。
家庭を壊した愚か者には、それ相応の末路を与えるべきだ。
今回依頼したのは日本でも有名な探偵事務所で、ここに所属している探偵ならばどんな事件でも必ず解決すると言われていた。
連絡してみると、いきなり今日の午後に話を伺えないかと言ってきた。
幸い予定もなかったので、待ち合わせをして会いに行った。
そこで出会ったのは、私よりも年若い女性だった。
女性というよりも、女子といった感じか。
(大丈夫かなあ……。この子に解決できるのかな)
内心心配だったが、彼女と話してみると印象は少し変わった。
年齢に合わない話し方で私の事情を聴いてくれた。そして問題を解決するにはどうすればいいのか、その道しるべも教えてくれたのだ。
「まずはお母様が本当に浮気をしているのか、それを調べなければ始まりません。調査に数日いただきますが、よろしいですか?」
「はい、よろしくお願いします」
その日はそれで別れた。
数日後、早くも件の探偵から連絡が来た。
なんでも、母が浮気していた証拠を手に入れたらしい。
私はそれを見せてもらった。
母親と見たことがない男性がホテルに入っていく写真だ。
そしてもう一つ、ホテルの入り口付近で二人が会話していた内容を録音した音声も聞かせてもらった。
『こんなに頻繁に会いに来て大丈夫なのか?』
『大丈夫よ、証拠は何もないんだし。夫も娘も内心は疑っているだろうけど』
『そっか。じゃあ今日も……』
『ええ、楽しみましょう』
会話はそこで途切れていた。
男の声に聞き覚えはなかったが、女の声は毎日聞いている母の声だった。
「写真だけではなく、会話の内容からも浮気をしているのは明らかですね」
「……ええ」
薄々わかっていたことだが、やはり事実を突きつけられると落ち込む。
「それにしても、あなたとお母様はよく似ていますね。最初は綾乃さんが来たのかと思ってしまいました」
よく言われることだ。
小さい頃は母に似ていると言われて嬉しがっていたが、今では当然嬉しくもなんともない。
むしろ迷惑なくらいだ。
「それと、こちらが浮気相手の情報です」
資料を受け取った。
名前は斎藤義一。
年齢や性別はもちろん、職業や経歴、住所まで記載されていた。
「よろしければ、今後の手続きの方法などもお伝え致しますが、どうしますか?」
「……いえ、一度父と相談してから決めたいと思います」
「……そうですか。また何かありましたら遠慮なくご連絡ください」
彼女から名刺を受け取り、解散した。
帰り道、私は暗い表情で歩いていた。
母が浮気をしているのは確定した。
後は裁判などを行って離婚すれば、慰謝料などもこちらに入ってくるだろう。
しかし、それでいいのだろうか。
仮にこちらの望みどおりに事が運んでも、結局あの二人はのうのうと生きていることになる。
離婚して慰謝料を支払う。これだけで罰は足りるのだろうか。
もっと社会的な制裁が必要なのではないか。
だが、仮に母が社会的に抹殺されようが、また別の男でも捕まえてそいつに寄生することができるだろう。
女を武器にして働かずに生きていこうとするはずだ。
浮気をするような女なのだから、それくらい考えているだろう。
ならば、あいつにふさわしいのは。
「……」
私は心の中で殺害を決心した。
家庭を壊した愚か者には、それ相応の末路を与えるべきだ。