第46話 パトロール

文字数 903文字

「今日も特に依頼が来ないですね」

 メイド探偵会のホームページやSNSを見ながら、榊が呟く。

「まあ、そんな頻繁に事件が起きるわけないし、仕方ないよ」

 ゲームをしながら答える式。
 探偵会が発足してからそれなりに事件を解決してきたが、あくまでも地元での知名度は広がったものの、全国的に名が知られているわけではない。
 SNSで拡散されることも増えたが、やはり高校生探偵というのが珍しさを際立たせつつも、不安を煽っているようだ。
 よって基本的にメイド探偵会が引き受けるのは明戸高校付近の事件ばかりだが、式の言う通り地元で頻繁に事件が起きるわけもなく、大半は特に何もせず一日を終えていた。
 そして今日も例に漏れず当てはまりそうだ。

「……仕方ありませんね。なら今日はパトロールに行きましょう」
「……は?」

 突然わけのわからないことを言う榊。

「パトロールって何するの?」
「もちろん、街中で事件が起きていないかを見て回るのです。待っていても事件がこないなら、自分たちで見つけましょう。さあ行きますよ」
「なんてことだ……」

 榊に引きずられながら、式たちは部室を後にした。



「さあ、さっそくいろいろと街中を見てみましょう!」
「そんな都合よく何か起きるわけが……」
「おや、あれは……」

 二人が何気なく街を歩いていると、見知った人物を見かけた。

「あれは里中先生ですね。買い物袋をいくつもぶら下げていますが、何かイベントでもあるのでしょうか」
「何かのお祝い事じゃないの?」
「ちょっと聞いてみましょうか」

 好奇心旺盛な榊は里中に話しかけた。

「里中先生」
「あら、あなたは榊さん。それに式くんも」
「こんにちは。結構大荷物ですが、何かあるんですか?」
「これはね、今日帰ってくる夫のために用意しているのよ」

 里中は本日帰ってくる予定の夫について話した。

「なるほど、それはおめでたい日ですね。よかったら荷物をいくつか持ちますよ」
「ありがとう」
「俺も持ちますよ」

 荷物を式と榊に渡そうとした瞬間、里中はある二人の人物を見かけた。

「あら、あの子は……」
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