第52話 緊急朝会
文字数 1,534文字
学校に着いた後、隼人が教員たちに事情を説明した。
その後生徒が登校したタイミングを見計らって緊急朝会が開かれた。
式たちはもちろん、他の生徒たちも体育館に集まることになった。
「皆さんにお話しすることがあります」
教頭の白澤が登壇し、今朝起きた事件のことについて話し始めた。
「ただいま警察からお話がありました。我が高校に教員として勤めている里中先生が、今朝自宅前の門で亡くなっているのが発見されたと」
教頭の口から出た言葉に動揺する生徒たち。
事情を聴いていない一部の教員もざわついていた。
「いきなり自宅に訪問してきた謎の人物によって、冷酷にも里中先生は殺害されてしまったようです。我が校ではこれまでにも殺人事件に巻き込まれた生徒が多数います。こうも不幸な事件が何度も続くことに、遺憾の意を示す所存です」
熱弁とも言える教頭の言葉に、涙を流す生徒もちらほら出ていた。
式は朝会中里中の事件について考えこんでいた。
(朝会が始める前にちらっとクラスメイトを見てみたけど、やっぱり朝霞龍吾は登校していなかった。まあ犯人じゃないとしても登校してこないか)
朝霞龍吾のことも気になるが、問題は里中を殺害した犯人だ。
(警察が今里中先生と顔見知りの人をピックアップして、死亡推定時刻付近のアリバイを確認しているところだけど、果たして先生と顔見知りというだけで特定できるんだろうか。何かもっと犯人候補を絞れる情報はないものか……)
今まで集めた情報や昨日からの一連の流れを振り返ってみた。
(そういえば、昨日先生が朝霞龍吾を見つけた時に一緒にいた男は誰なんだろう)
朝霞龍吾の容姿に目を引かれていて今まで忘れかけていたが、実際には彼の他にもう一人の男がいた。
里中が朝霞龍吾に話しかける前に何かしらの会話をしていたようだが、一体何を話していたのだろうか。
(その男の見た目もうろ覚えだもんなあ。名前もわからないし、どこの誰なのか特定するのは難しそうか)
新たな情報になりそうな気はしたが、結局何もわからず仕舞いだ。
「ねえ、式くん!」
クラスメイトの春崎に肩をたたかれる。
「え、春崎さんどうしたの?」
「どうしたも何も、もう朝会終わったよ」
周りを見てみると、式たち以外に人はほとんどいなくなっていた。
「きっと何か考えていたのですよね、式くん」
「あ、うん」
「何かわかったの?」
「いや、犯人に繋がる情報がないか昨日の出来事なんかを思い返してみたけど、特に何も思い出せなかったよ」
そう言った後、念のため式は榊に確認する。
「榊さん、昨日朝霞龍吾と話していた男について覚えてることある?」
「ええ、顔と身長くらいなら記憶していますが……」
「あの男は、榊さんも知らない人物だよね」
「少なくとも、私たちと同学年の生徒ではないはずです。そもそもこの明戸高校の生徒でもない気がしますが」
身長からして式たちと同世代だろうが、どこの生徒なのかまではわからない。
「一応隼人兄さんにその男についても調べてもらうように頼んでありますが、私たちの記憶だけだと特定するのは難しそうですね」
「だよねえ……。他に何か情報があるわけじゃないし」
現時点で今の式たちにできることは何もなかった。
ため息をついた式の頭に、ある声が聞こえてくる。
『情けない。まだわかることはあるだろうに。今の君じゃその程度か』
「え……?」
「どうかしましたか?」
「あ、いや何でもない」
辺りを見渡してみるが、特に何も異変はない。
(何だ、今の声みたいなのは……)
不思議なこともあるものだな、と式は思った。
その後生徒が登校したタイミングを見計らって緊急朝会が開かれた。
式たちはもちろん、他の生徒たちも体育館に集まることになった。
「皆さんにお話しすることがあります」
教頭の白澤が登壇し、今朝起きた事件のことについて話し始めた。
「ただいま警察からお話がありました。我が高校に教員として勤めている里中先生が、今朝自宅前の門で亡くなっているのが発見されたと」
教頭の口から出た言葉に動揺する生徒たち。
事情を聴いていない一部の教員もざわついていた。
「いきなり自宅に訪問してきた謎の人物によって、冷酷にも里中先生は殺害されてしまったようです。我が校ではこれまでにも殺人事件に巻き込まれた生徒が多数います。こうも不幸な事件が何度も続くことに、遺憾の意を示す所存です」
熱弁とも言える教頭の言葉に、涙を流す生徒もちらほら出ていた。
式は朝会中里中の事件について考えこんでいた。
(朝会が始める前にちらっとクラスメイトを見てみたけど、やっぱり朝霞龍吾は登校していなかった。まあ犯人じゃないとしても登校してこないか)
朝霞龍吾のことも気になるが、問題は里中を殺害した犯人だ。
(警察が今里中先生と顔見知りの人をピックアップして、死亡推定時刻付近のアリバイを確認しているところだけど、果たして先生と顔見知りというだけで特定できるんだろうか。何かもっと犯人候補を絞れる情報はないものか……)
今まで集めた情報や昨日からの一連の流れを振り返ってみた。
(そういえば、昨日先生が朝霞龍吾を見つけた時に一緒にいた男は誰なんだろう)
朝霞龍吾の容姿に目を引かれていて今まで忘れかけていたが、実際には彼の他にもう一人の男がいた。
里中が朝霞龍吾に話しかける前に何かしらの会話をしていたようだが、一体何を話していたのだろうか。
(その男の見た目もうろ覚えだもんなあ。名前もわからないし、どこの誰なのか特定するのは難しそうか)
新たな情報になりそうな気はしたが、結局何もわからず仕舞いだ。
「ねえ、式くん!」
クラスメイトの春崎に肩をたたかれる。
「え、春崎さんどうしたの?」
「どうしたも何も、もう朝会終わったよ」
周りを見てみると、式たち以外に人はほとんどいなくなっていた。
「きっと何か考えていたのですよね、式くん」
「あ、うん」
「何かわかったの?」
「いや、犯人に繋がる情報がないか昨日の出来事なんかを思い返してみたけど、特に何も思い出せなかったよ」
そう言った後、念のため式は榊に確認する。
「榊さん、昨日朝霞龍吾と話していた男について覚えてることある?」
「ええ、顔と身長くらいなら記憶していますが……」
「あの男は、榊さんも知らない人物だよね」
「少なくとも、私たちと同学年の生徒ではないはずです。そもそもこの明戸高校の生徒でもない気がしますが」
身長からして式たちと同世代だろうが、どこの生徒なのかまではわからない。
「一応隼人兄さんにその男についても調べてもらうように頼んでありますが、私たちの記憶だけだと特定するのは難しそうですね」
「だよねえ……。他に何か情報があるわけじゃないし」
現時点で今の式たちにできることは何もなかった。
ため息をついた式の頭に、ある声が聞こえてくる。
『情けない。まだわかることはあるだろうに。今の君じゃその程度か』
「え……?」
「どうかしましたか?」
「あ、いや何でもない」
辺りを見渡してみるが、特に何も異変はない。
(何だ、今の声みたいなのは……)
不思議なこともあるものだな、と式は思った。