第79話 ビーチバレー

文字数 1,380文字

 皆で話し合った結果、待っている間はビーチバレーを行うことにした。
 とはいっても他の利用客もいるので、場所も満足にとれないのが少し残念だ。
 探偵会からは式と榊が、留美たちからは留美と俊哉のペアが出ることになった。

「年下だからって手加減しないからね。行くよ俊哉くん!」
「まあ、お手柔らかにね……」
「こちらも負けてられませんね、式くん」
「別に勝敗はどうでもいいと思うけどなあ」

 何だか似たようなペアリングだな、と傍から見ている春崎は思った。

「頑張ってねー、式くん、榊さん!」
「それじゃ、試合開始!」

 タカの合図で、試合が始まった。

「はっ!」

 榊のサービスが相手コートに落ちる。
 とても素人とは思えないスピードだ。

「す、すごいね榊さん」
「明戸高校の生徒として勉強だけではなく、運動もできなくてはなりませんから」
「はは、俺にプレッシャーかけるね……」

 文武両道な榊に対し、式はどうなのか。

「ではもう一度いきますよ」

 再び榊のサービスだ。
 今度は向こうもしっかりと受け止め、反撃が来る。

「式くん、お願いします!」
「任せて!」

 素早い動きでレシーブし、相手コートに返した。

「お、式くんも結構動けるんだね」

 外で見ていた春崎が感心する。
 実は式は運動ができないわけではない。
 運動神経抜群というわけではないが、どの種目も素人にしてはできる方だ。
 中学生時代にバスケットボールをやっていた経験もあるためか、球技に関しての適応力は高い。
 それでも、運動もハイレベルにこなせる榊や人間離れした龍吾が身近な存在にいるため、霞んでしまっているのだが。

「やるわね、二人とも」

 年下に負けてられないと、留美たちも意地を見せる。

「留美ちゃん、ここは僕が……」
「よし、私がレシーブ……」

 しかし、二人の連携は式たちよりも劣っていた。
 相手から放たれた攻撃に対し、二人ともが受けにまわろうとしてしまったのだ。
 そのせいで二人は激突してしまい、共に倒れそうになる。

「危ない!」

 俊哉が留美の下敷きになるように受け止めた。

「いたっ!」
「ぐっ!」

 二人の倒れた衝撃で、周りに砂埃が舞う。

「大丈夫ですか!?」

 対戦相手として戦っていた式たちや、審判としてみていた美紀、タカも心配して駆け寄っていく。

「えっと、私は大丈夫だけど、俊哉くんは?」
「僕も特には……いてて」

 一見大丈夫そうに見える俊哉だが、足首を押さえている。

「足くじいちゃった?」
「どうやらそうみたいだ……」
「大丈夫か? 肩貸すぞ」

 タカが俊哉の肩を持ち上げ、一緒に立ち上がる。

「ビーチバレーは中止にしましょう。これ以上やって怪我したら危険だし」
「そうですね」
「ごめんね、俊哉くん」

 ぶつかってしまった留美が申し訳なさそうに謝る。

「いや、大丈夫だよ。留美ちゃんに怪我がなくてよかった」

 痛みを堪えながらも俊哉は笑う。
 丁度良いタイミングで、榊の携帯に着信が入った。

「どうやら丁度席も空いたようです」
「お、じゃあ海の家に行こっか」
「なら先に行っててくれ。俺は俊哉を医務室に連れて行くから遅れる」
「わかりました」

 式たちはタカと俊哉を置いて先に向かった。
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