第118話 龍吾の秘密
文字数 1,433文字
本日もいつものように、式と榊は探偵会の部室に集まっていた。
何か事件があったり、依頼が来たらすぐに対応するつもりなのだが、そんな都合よく事件が来るはずもなく、ただ暇をつぶしていた。
「少し、席を外しますね」
先程まで本を読んでいた榊が、それを閉じて部室から出て行く。
「ん、わかった」
何のために席を外したのかを察した式は適当に相槌を打つ。
その榊と入れ替わるように、部室に来客が来た。
「式、いるか?」
その人物は、もはや幽霊部員と化している朝霞龍吾だった。
「あれ、龍吾。どうしたの」
久しぶりに顔を見せた龍吾に対し、驚く式。
龍吾は返事をする前に部室を見渡し、
「榊の奴は……いないな。丁度いい」
と呟いた。
「ちょっとこれから出かける予定があってな。そこにお前も一緒に来てほしいんだ」
「俺も? 別にいいけど、なんで」
「理由は後で話す。榊が来る前に早く行くぞ」
「ま、待ってよ。流石に何も言わずに出て行くのは……」
「なら、こうすればいいだろ」
龍吾は適当な紙に走り書きをした。
「これで文句はないな。じゃあ行くぞ」
「……こんなんで大丈夫かな」
一応後で自分の方から連絡を入れよう、と式は思った。
「お待たせしました」
席を外していた榊が部室に帰ってくると、そこには式の姿はなかった。
「式くん……? 彼も席を外しているのでしょうか」
そう呟いた瞬間、榊は机の上にある走り書きに気付いた。
そこには荒々しい適当な文字で『ちょっと出てくる』とだけ書いてあった。
「これは、式くんの字ではありませんね。まさか……!」
誰が書いたのかに気付いた榊は、すぐさま部室の窓から外を確認した。
すると、丁度一台の車が学校から出て行くところが見えた。
「朝霞くん、来ていたのですね……! それにしても逃がしてしまいましたか」
少し遅かったことや逃がしてしまったことを悔いる榊だった。
「それで、どこに向かっているんだ?」
「町はずれにある古びた館だ。そこで会合があってな。俺も参加することになっている」
「会合?」
「いくつかの企業の重鎮たちが集まり、互いに関係を深めたり、ビジネスをしたりと様々なことをするんだ」
「なんでそんな会合に龍吾が参加するの?」
「行けばわかるさ」
しばらくした後、目的地の館に着いた。
「この館は誰かの所有物というわけではなく、ただ単にこの会合のためだけに一時的に借りているものだ」
「なかなか立派な館だね」
インターホンを押すと、中から出迎えが来る。
「お待ちしておりました、朝霞様。早速こちらへ……」
「なんか丁重にもてなされているね」
「いちいち茶々入れんでもいいぞ」
広間に案内されると、そこには複数人の大人たちがいた。
「龍吾様、ようこそお越しくださいました。こちらへどうぞ」
一人が龍吾を席まで案内する。
「こちらの方は?」
「俺の連れだ。気にしなくていい」
「左様ですか」
龍吾の扱いに、式はついていけない。
「なあ、一体どういうことなんだ? なぜこんなにも手厚くもてなされる?」
「もしや、龍吾様のことを存じ上げないのですか?」
「ええ、よくは知らないんです」
「この方は日本でも五指に入るあの朝霞財閥の御曹司なのです」
「ええーーーーーーーーー!!!!」
式はこれまでの人生でも五指に入るほど驚いた。
何か事件があったり、依頼が来たらすぐに対応するつもりなのだが、そんな都合よく事件が来るはずもなく、ただ暇をつぶしていた。
「少し、席を外しますね」
先程まで本を読んでいた榊が、それを閉じて部室から出て行く。
「ん、わかった」
何のために席を外したのかを察した式は適当に相槌を打つ。
その榊と入れ替わるように、部室に来客が来た。
「式、いるか?」
その人物は、もはや幽霊部員と化している朝霞龍吾だった。
「あれ、龍吾。どうしたの」
久しぶりに顔を見せた龍吾に対し、驚く式。
龍吾は返事をする前に部室を見渡し、
「榊の奴は……いないな。丁度いい」
と呟いた。
「ちょっとこれから出かける予定があってな。そこにお前も一緒に来てほしいんだ」
「俺も? 別にいいけど、なんで」
「理由は後で話す。榊が来る前に早く行くぞ」
「ま、待ってよ。流石に何も言わずに出て行くのは……」
「なら、こうすればいいだろ」
龍吾は適当な紙に走り書きをした。
「これで文句はないな。じゃあ行くぞ」
「……こんなんで大丈夫かな」
一応後で自分の方から連絡を入れよう、と式は思った。
「お待たせしました」
席を外していた榊が部室に帰ってくると、そこには式の姿はなかった。
「式くん……? 彼も席を外しているのでしょうか」
そう呟いた瞬間、榊は机の上にある走り書きに気付いた。
そこには荒々しい適当な文字で『ちょっと出てくる』とだけ書いてあった。
「これは、式くんの字ではありませんね。まさか……!」
誰が書いたのかに気付いた榊は、すぐさま部室の窓から外を確認した。
すると、丁度一台の車が学校から出て行くところが見えた。
「朝霞くん、来ていたのですね……! それにしても逃がしてしまいましたか」
少し遅かったことや逃がしてしまったことを悔いる榊だった。
「それで、どこに向かっているんだ?」
「町はずれにある古びた館だ。そこで会合があってな。俺も参加することになっている」
「会合?」
「いくつかの企業の重鎮たちが集まり、互いに関係を深めたり、ビジネスをしたりと様々なことをするんだ」
「なんでそんな会合に龍吾が参加するの?」
「行けばわかるさ」
しばらくした後、目的地の館に着いた。
「この館は誰かの所有物というわけではなく、ただ単にこの会合のためだけに一時的に借りているものだ」
「なかなか立派な館だね」
インターホンを押すと、中から出迎えが来る。
「お待ちしておりました、朝霞様。早速こちらへ……」
「なんか丁重にもてなされているね」
「いちいち茶々入れんでもいいぞ」
広間に案内されると、そこには複数人の大人たちがいた。
「龍吾様、ようこそお越しくださいました。こちらへどうぞ」
一人が龍吾を席まで案内する。
「こちらの方は?」
「俺の連れだ。気にしなくていい」
「左様ですか」
龍吾の扱いに、式はついていけない。
「なあ、一体どういうことなんだ? なぜこんなにも手厚くもてなされる?」
「もしや、龍吾様のことを存じ上げないのですか?」
「ええ、よくは知らないんです」
「この方は日本でも五指に入るあの朝霞財閥の御曹司なのです」
「ええーーーーーーーーー!!!!」
式はこれまでの人生でも五指に入るほど驚いた。