第54話 謎の死体
文字数 1,722文字
事件現場に着くと、そこには今朝の里中の自宅のように野次馬が多数集まっていた。
式は刑事の一人に死体の場所へと案内された。
「二人とも着いたか。これが例の焼死体だ」
その焼死体を眺めてみる。
焼死体は上半身が灰になるまで燃えていた。下半身もほとんど残っておらず、唯一わかるのは足の一部だけだった。
「この死体、身元はわかるんですか?」
「ああ。残っていた足の一部からDNAを抽出して調べた。被害者の名前は赤城哲也という25歳の男性だ」
男の写真を見せた。
「よく足だけで人物を特定できましたね」
「この赤城という男はいろいろ問題があってな。元々警察も目を付けていたんだ」
「というと?」
「赤城は最近勢力を上げてきている暴力団のリーダーでね。武器の密輸や違法薬物の取引などで警察も以前からマークしていたんだ。その赤城が、このように焼死体となって発見されるとは……」
「ということは、違法取引絡みの犯行ってことですかね」
「まだ詳しくはわからないがな。とりあえず他の構成員たちに話を聞こうと思って、今捜索中だ」
隼人は新たにいくつかの写真を式たちに見せた。
写真を見てみると、その中の一つに式たちが見覚えのある人物がいた。
「あれ、この男って……」
「式くん、この男は昨日朝霞くんと一緒にいた男ですよ」
やはりそうだった。
朝霞龍吾と揉めていた男も赤城の暴力団の一員だったのだ。
「この男か。こいつは赤城智也16歳。この赤城哲也の弟なんだ」
「弟、ですか」
「それにしても朝霞龍吾という男は赤城とも関わりがあったのか。里中初音の事件といい、この一連の事件に関わっていることは間違いないな」
「一体朝霞くんは里中先生の自宅付近で何をやっていたのでしょう。それに赤城智也とも関わっていたみたいですが、どうしてでしょうか」
「朝霞龍吾が犯人であるなら、里中初音は注意された恨みで殺害、赤城哲也は弟の智也との因縁絡みで殺害、といったところか。それならば、弟の智也も狙われるかもしれないな」
隼人は刑事の一人に指示をした。
「急いで赤城智也とコンタクトを取ってくれ。それと朝霞龍吾の居場所を特定することも忘れずにな」
隼人が指示をしている間、式は事件について考えていた。
(二つの事件に関わりがあると思われる朝霞龍吾が犯人。確かにあの男が里中先生の自宅付近をうろついていたのは怪しいし、今回の被害者である赤城哲也の弟と関わりがあったというのも偶然にしては出来過ぎている。だが、何かが引っかかる……)
そこまで考えて、式はあることを思い出す。
(そうだ、あの里中先生の反応だ!)
自分の記憶が確かなのかを確認するため、榊に尋ねる。
「榊さん、昨日里中先生が朝霞龍吾を発見したときに言っていた言葉を覚えてる?」
「えっと、まず『あら、あの子は……』と言って朝霞くんと揉めている男の二人を発見し、『ちょっと待ってね、二人とも。……おーい!』と言って二人に近づいていきましたね」
「その次は?」
「里中先生が近づくと、朝霞くんと揉めていた男がそれに気づいて逃げ出しました。それに対して里中先生は『あ、待ちなさーい!』と声をかけたものの、それに目もくれずにそのまま立ち去りました」
榊の話を聞いて、式は確信した。
「その後、里中先生は言っていたよね。朝霞龍吾に対して『私の学校の生徒よね』と」
「確かに言っていました」
「あの時里中先生は朝霞龍吾に見覚えがあったから、遠くから発見したときに声を掛けたんだと思っていた。でももしかしたら、実は朝霞龍吾ではなく彼と揉めていた赤城智也に声を掛けたのかもしれない」
「まさか……」
「もちろん確証はないから、これから調べた方がいいと思う。隼人さん、里中先生と赤城智也に関わりがないかどうかを調べてください」
「わかった。手配しておこう」
隼人が刑事に指示を出すのと同時に、新たな情報が入ってくる。
「園田警部、赤城智也の住所を割り出しました」
「わかった。今から向かおう。君たちも来るかい?」
「はい。ぜひ」
パトカーに乗り、赤城智也の家に向かった。
式は刑事の一人に死体の場所へと案内された。
「二人とも着いたか。これが例の焼死体だ」
その焼死体を眺めてみる。
焼死体は上半身が灰になるまで燃えていた。下半身もほとんど残っておらず、唯一わかるのは足の一部だけだった。
「この死体、身元はわかるんですか?」
「ああ。残っていた足の一部からDNAを抽出して調べた。被害者の名前は赤城哲也という25歳の男性だ」
男の写真を見せた。
「よく足だけで人物を特定できましたね」
「この赤城という男はいろいろ問題があってな。元々警察も目を付けていたんだ」
「というと?」
「赤城は最近勢力を上げてきている暴力団のリーダーでね。武器の密輸や違法薬物の取引などで警察も以前からマークしていたんだ。その赤城が、このように焼死体となって発見されるとは……」
「ということは、違法取引絡みの犯行ってことですかね」
「まだ詳しくはわからないがな。とりあえず他の構成員たちに話を聞こうと思って、今捜索中だ」
隼人は新たにいくつかの写真を式たちに見せた。
写真を見てみると、その中の一つに式たちが見覚えのある人物がいた。
「あれ、この男って……」
「式くん、この男は昨日朝霞くんと一緒にいた男ですよ」
やはりそうだった。
朝霞龍吾と揉めていた男も赤城の暴力団の一員だったのだ。
「この男か。こいつは赤城智也16歳。この赤城哲也の弟なんだ」
「弟、ですか」
「それにしても朝霞龍吾という男は赤城とも関わりがあったのか。里中初音の事件といい、この一連の事件に関わっていることは間違いないな」
「一体朝霞くんは里中先生の自宅付近で何をやっていたのでしょう。それに赤城智也とも関わっていたみたいですが、どうしてでしょうか」
「朝霞龍吾が犯人であるなら、里中初音は注意された恨みで殺害、赤城哲也は弟の智也との因縁絡みで殺害、といったところか。それならば、弟の智也も狙われるかもしれないな」
隼人は刑事の一人に指示をした。
「急いで赤城智也とコンタクトを取ってくれ。それと朝霞龍吾の居場所を特定することも忘れずにな」
隼人が指示をしている間、式は事件について考えていた。
(二つの事件に関わりがあると思われる朝霞龍吾が犯人。確かにあの男が里中先生の自宅付近をうろついていたのは怪しいし、今回の被害者である赤城哲也の弟と関わりがあったというのも偶然にしては出来過ぎている。だが、何かが引っかかる……)
そこまで考えて、式はあることを思い出す。
(そうだ、あの里中先生の反応だ!)
自分の記憶が確かなのかを確認するため、榊に尋ねる。
「榊さん、昨日里中先生が朝霞龍吾を発見したときに言っていた言葉を覚えてる?」
「えっと、まず『あら、あの子は……』と言って朝霞くんと揉めている男の二人を発見し、『ちょっと待ってね、二人とも。……おーい!』と言って二人に近づいていきましたね」
「その次は?」
「里中先生が近づくと、朝霞くんと揉めていた男がそれに気づいて逃げ出しました。それに対して里中先生は『あ、待ちなさーい!』と声をかけたものの、それに目もくれずにそのまま立ち去りました」
榊の話を聞いて、式は確信した。
「その後、里中先生は言っていたよね。朝霞龍吾に対して『私の学校の生徒よね』と」
「確かに言っていました」
「あの時里中先生は朝霞龍吾に見覚えがあったから、遠くから発見したときに声を掛けたんだと思っていた。でももしかしたら、実は朝霞龍吾ではなく彼と揉めていた赤城智也に声を掛けたのかもしれない」
「まさか……」
「もちろん確証はないから、これから調べた方がいいと思う。隼人さん、里中先生と赤城智也に関わりがないかどうかを調べてください」
「わかった。手配しておこう」
隼人が刑事に指示を出すのと同時に、新たな情報が入ってくる。
「園田警部、赤城智也の住所を割り出しました」
「わかった。今から向かおう。君たちも来るかい?」
「はい。ぜひ」
パトカーに乗り、赤城智也の家に向かった。