第116話 真相解明:証拠提示
文字数 1,664文字
「山中さんの事件についてですが、実は彼女を殺害した犯人は池上さんとは思っていません」
「え、じゃあ一体誰なの?」
「山中さんを殺害したのは、この館の主である更科阿弥さんだ」
式の言葉に、ただ二人を除いて全員が驚愕していた。
「どうして阿弥さんが山中さんを?」
「それは池上さんが調べていた若い女性の行方不明事件が関係している。あの事件は実は阿弥さんが起こしていたものなんだ」
「阿弥さんが……!?」
阿弥とは前々から知り合いだった女性三人が顔を青ざめさせる。
「これは俺の知り合いの警察の人に調べてもらった結果、判明したことです。実は県警も阿弥さんを犯人だとマークしていた。だが決定的な証拠が出ていなかったため、この館に調査をすることにしたんです。そうでしょう、池上さん」
式は池上に目を向けるが、彼は答えない。
「池上さんは、少なくともこの館に来た時点では行方不明事件の犯人を阿弥さんだと確信していた。後は決定的な証拠を手に入れれば、すぐにでも逮捕するつもりだったんでしょう」
「でも、なんで阿弥さんはそんなことを」
「それについては正直想像の域を出ない。だが愛さん、あなたなら知っているんじゃないですか?」
全員の視線が再び愛に向かう。
「……」
「この付近で行方不明事件が起きていたということは、この館がその現場になっていたはずだ。丁度今日のようにね。となれば当然あなたもその事情を知っているはず」
しかし、愛は口を閉ざしたままだ。
「まあ、これについてはこの館を徹底的に調べればわかることです。それは警察に任せましょう。話を戻しますが、阿弥さんは山中さんを殺害した後、榊さんや春崎さんも同様に殺害しようとしたが、池上さんに見つかってしまい逆に殺されてしまった」
「池上さんはどうして殺害を?」
「凶悪犯である阿弥さんを止めるには、並大抵のことでは難しいと判断して仕方なく殺害したんじゃないかな。生かしたまま捕らえるよりも殺した方が遥かに楽だろうし」
「……待ってくれ」
ようやく池上が言葉を出した。
「君はどうしても僕を犯人にしたいようだが、それならば証拠はあるのか?」
「証拠、ですか」
「答えてくれ。ないのなら僕を犯人と断定することはできないぞ」
挑発するような池上の視線を、式は軽く受け流す。
「……正直、ここで証拠を提示しなくても警察がきちんと捜査すれば自ずと犯人は絞られます。先ほどの俺の推理はほぼ当たっていると思いますので、疑われるのはあなたか愛さんだ。となれば、あなたよりも愛さんの方が状況的に疑われると思います。はっきり言って愛さんが犯人である可能性も否定できないので、俺はそれでもいいと思いますけど」
「……!」
今の式の言葉で、池上は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
「しかし、それはあなたが望む展開ではないでしょう。だから証拠を提示します。とは言っても、証拠はあなた自身が自白したんですが」
「自白、だと?」
「あなたは先ほど言っていましたよね。『愛さんが犯人などあり得ない』と」
「それがどうした!」
その池上の言葉で言質を取る。
「先ほども言った通り、犯人候補は池上さんか愛さんだ。となればあなたの目線からすれば、当然自分が犯人ではないはずだから、自然ともう一人の犯人候補である愛さんが犯人確定となる。だがあなたは『愛さんが犯人などあり得ない』と否定してしまった。じゃあ一体誰が犯人なんですか?」
「そ、それは……」
「それはつまり、あなたは自分が犯人であると自白したも同然なんですよ、池上さん」
ちなみに愛の場合は、『犯人が誰なのかはわからない』と発言していた。決して『池上が犯人である』と言っているわけではなくはぐらかしてはいるが、池上のようにもう一人の犯人候補に対して『彼は犯人ではない』とは言い切っていないため、一応筋は通る形になっている。
「……流石だな、もう反論できないよ」
観念したかのように、池上は項垂れた。
「え、じゃあ一体誰なの?」
「山中さんを殺害したのは、この館の主である更科阿弥さんだ」
式の言葉に、ただ二人を除いて全員が驚愕していた。
「どうして阿弥さんが山中さんを?」
「それは池上さんが調べていた若い女性の行方不明事件が関係している。あの事件は実は阿弥さんが起こしていたものなんだ」
「阿弥さんが……!?」
阿弥とは前々から知り合いだった女性三人が顔を青ざめさせる。
「これは俺の知り合いの警察の人に調べてもらった結果、判明したことです。実は県警も阿弥さんを犯人だとマークしていた。だが決定的な証拠が出ていなかったため、この館に調査をすることにしたんです。そうでしょう、池上さん」
式は池上に目を向けるが、彼は答えない。
「池上さんは、少なくともこの館に来た時点では行方不明事件の犯人を阿弥さんだと確信していた。後は決定的な証拠を手に入れれば、すぐにでも逮捕するつもりだったんでしょう」
「でも、なんで阿弥さんはそんなことを」
「それについては正直想像の域を出ない。だが愛さん、あなたなら知っているんじゃないですか?」
全員の視線が再び愛に向かう。
「……」
「この付近で行方不明事件が起きていたということは、この館がその現場になっていたはずだ。丁度今日のようにね。となれば当然あなたもその事情を知っているはず」
しかし、愛は口を閉ざしたままだ。
「まあ、これについてはこの館を徹底的に調べればわかることです。それは警察に任せましょう。話を戻しますが、阿弥さんは山中さんを殺害した後、榊さんや春崎さんも同様に殺害しようとしたが、池上さんに見つかってしまい逆に殺されてしまった」
「池上さんはどうして殺害を?」
「凶悪犯である阿弥さんを止めるには、並大抵のことでは難しいと判断して仕方なく殺害したんじゃないかな。生かしたまま捕らえるよりも殺した方が遥かに楽だろうし」
「……待ってくれ」
ようやく池上が言葉を出した。
「君はどうしても僕を犯人にしたいようだが、それならば証拠はあるのか?」
「証拠、ですか」
「答えてくれ。ないのなら僕を犯人と断定することはできないぞ」
挑発するような池上の視線を、式は軽く受け流す。
「……正直、ここで証拠を提示しなくても警察がきちんと捜査すれば自ずと犯人は絞られます。先ほどの俺の推理はほぼ当たっていると思いますので、疑われるのはあなたか愛さんだ。となれば、あなたよりも愛さんの方が状況的に疑われると思います。はっきり言って愛さんが犯人である可能性も否定できないので、俺はそれでもいいと思いますけど」
「……!」
今の式の言葉で、池上は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
「しかし、それはあなたが望む展開ではないでしょう。だから証拠を提示します。とは言っても、証拠はあなた自身が自白したんですが」
「自白、だと?」
「あなたは先ほど言っていましたよね。『愛さんが犯人などあり得ない』と」
「それがどうした!」
その池上の言葉で言質を取る。
「先ほども言った通り、犯人候補は池上さんか愛さんだ。となればあなたの目線からすれば、当然自分が犯人ではないはずだから、自然ともう一人の犯人候補である愛さんが犯人確定となる。だがあなたは『愛さんが犯人などあり得ない』と否定してしまった。じゃあ一体誰が犯人なんですか?」
「そ、それは……」
「それはつまり、あなたは自分が犯人であると自白したも同然なんですよ、池上さん」
ちなみに愛の場合は、『犯人が誰なのかはわからない』と発言していた。決して『池上が犯人である』と言っているわけではなくはぐらかしてはいるが、池上のようにもう一人の犯人候補に対して『彼は犯人ではない』とは言い切っていないため、一応筋は通る形になっている。
「……流石だな、もう反論できないよ」
観念したかのように、池上は項垂れた。