第110話 情報整理

文字数 1,648文字

 三階に着いてすぐ、池上は一つのドアに手をかける。

「ここだな……」

 池上がドアノブを捻ると、ドアがすぐに開いた。

「これは……。鍵がかかっていないようだな」

 一呼吸おいてドアを一気に開けると、物が散らかっている光景が目に入った。
 部屋の隅を見てみると、そこには壊れた機械のようなものがあった。

「多分これが電波受信器だろう。やはり壊れているな」
「池上さん、あれを見てください」

 式が指さした先には、割れている窓があった。

「窓が割れていますよ」
「ということは、犯人はここから出入りした可能性があるな。とりあえず写真を撮っておこう」

 とはいってもカメラなどは持ってきていないため、仕方なくスマホに内蔵されているアプリで写真を撮る。

「後で警察が来たら正式な写真を撮ってもらおう」
「そうですね」
「それより、これからどうするかだが……」
「とりあえずまずは皆さんに事情を話しておきましょう。まだ起きていない人は急いで起こすなりして」

 式たちは二階で寝ていた人たちを起こし、全員で一階に戻って事情を説明した。
 先ほどまで寝ていた面々は、突然の事件に顔を青ざめさせていた。

「それと、庭にある一つの紅葉の木で、山中さんが何者かに殺されていました」

 式がその場へ案内すると、やはり皆同じように顔を青ざめさせた。

「何ということだ。たった一日で二人も亡くなるとは……」
「ただ亡くなっているわけではありません。これは殺人事件ですよ」

 式はその根拠を述べた。

「まず山中さんの死体ですが、腹部を切り裂かれています。あまり見たくはないでしょうが、内臓も少し飛び出ているほどです。これほどまでに腹部を切り裂くならば、当然凶器が必要となりますが、近くにそれらが落ちている痕跡はありません。もしこれが自分で腹部を切り裂いたのならば、この傷の深さから考えてすぐに命を落とすでしょうから、近くに凶器があるはずなんです。にもかかわらずそれがない。すなわち誰かに殺害されたということになります」

 式は阿弥の事件についても同様に説明した。

「次に阿弥さんの死体ですが、彼女は言うまでもありません。首を切断されているということは、誰かに切られたということです。自分の力で首を切断するなんてことはできません」
「じゃあ、犯人は一体どこに……」

 水島が呟く。

「それはまだわかりません。だからこれから調査しないと。幸いにも、ここには警察官である池上さんがいます。池上さん、捜査をお願いしていいですか?」
「それはもちろん構わないんだが、本部にも連絡しなければ。それをどうするかなんだが……」
「愛さん、車はありますか?」

 話を聞いていた榊が、愛に尋ねる。

「は、はい。あります」
「それならば、愛さんと私が車に乗って麓まで降りて警察に連絡します。この山奥では電波が通じなくても、麓まで降りれば大丈夫でしょう。ここから麓までどれくらいかかりますか?」
「えっと、車なら30分もあれば着くかとおもいます」
「わかりました。ついでに壊された電波受信器を直すパーツなどもほしいので、大体1時間後くらいに戻ってきましょう」
「え、直せるの?」
「ええ。先ほど少し電波受信器を見てみましたが、パーツさえあれば何とかなると思います」

 榊がITや電機関係に詳しいとは知っていたが、これほどまでとは知らなかった、と式は驚く。

「その間式くんたちは殺人事件の謎を解いてください。では急ぎましょう、愛さん」
「は、はい!」

 二人は急いで準備を始めた。

「あ、榊さん一ついいかな?」

 式はこっそりと榊に耳打ちする。

「……わかりました」
「じゃあよろしくね」
「こっちは任せてね!」

 春崎が意気込んでいる。どうやら式の捜査を手伝ってくれるようだ。

「池上さん、俺たちも捜査の手伝いをしてもいいですか?」
「ああ、よろしく頼む」

 式たちは事件の捜査を始めた。
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