第97話 探偵会の追求

文字数 1,374文字

 翌日、私は昨日の犯行で使った道具などを処分することにした。
 昨日はほとんど眠れなかった。
 人をこの手で殺めたのだから、無理はない。
 処分しなければならないものは昨日のうちにだいたいまとめておいたので、後はそれを運び出せばいいだけだ。
 問題はどこに処分するか、という点だ。
 妥当なのはゴミ収集所で処分してもらう、という方法か。
 それともどこかの山奥にでも埋めておくか。

「どっちもという手もあるかな」

 例えば足がつきそうなものは処分し、特に足がつかないようなものは山に埋める、などがいいかもしれない。

「それでいこうか」

 私は荷物を車に積みだした。
 準備している途中、父が家にいることに気づいた。

「あれ、お父さん今日お仕事は?」
「……休んだ」
「……そっか」

 父にとっては曲がりなにも愛していた妻が死んだのだから、無理はない。
 でもね、お父さん。
 あいつは生きていたって私たちを不幸にするだけだよ。
 だから死んで当然の女なんだ。

「じゃあ私、ちょっと出かけてくるね」
「……ああ」

 素っ気ない返事を聴き、私は処分に向かった。



 ゴミ収集所で半分ほど処分した後、県外にある山に向かった。
 家から一番近いところにある山だと、すぐに発見されてしまうかもしれない。
 なるべく発見されないように、少し遠出をして県外の山に行くことにしたのだ。
 麓に駐車し、しばらく山の中を歩く。
 人目につかないようなところに着いたら、持ってきたスコップで穴を掘る。

「よし、これくらいでいいかな」

 それなりの深さまで掘れたら、そこに残りの物品を放り込み、埋める。
 人が埋めたというのがすぐにわからないように、なるべく周りの地面と同じように整地した。
 これならぱっと見人が掘ったとは思えないだろう。

「これで全て完了だ」

 やるべきことは全てやった。
 後はあいつが逮捕されれば、この事件は終わりを迎える。
 私は逸る気持ちを抑えながら、家に帰った。

 家に帰ると、一台のパトカーが家の前に止まっていた。

「警察?」

 もしかしたら、あの男が犯人として逮捕されたのを伝えに来てくれたのかもしれない。
 家に入ると、昨日来た警察官と制服を着た二人の高校生らしき人物が出迎えてきた。

「あ、こんにちは」
「綾乃さんですね?」

 高校生の内の男の子が、私に話しかけてくる。

「はい、そうですけど」
「今日はどちらへ?」
「ちょっとお出かけにですが」
「そうですか」

 男の子は一呼吸置いた後、

「もしかして、犯行に使った物品の処分にでも行ってたんじゃないですか?」

 と尋ねた。

「な、何を……」

 その言葉に、私は心臓を撃ち抜かれたような緊張を味わった。
 何で私が疑われているの?
 証拠は何も残さなかったはず。
 それとも、計画のどこかに穴があった?
 何故疑われているのかわからずパニックになっている私に、再び男の子が話しかける。

「あ、申し遅れました。僕の名は式と言います。僕たちはメイド探偵会といって、今回の事件を調査しています。その結果、あなたを犯人だと疑っています。何故疑うようになったのか、それを今から説明します」

 式と名乗った少年は、私の犯行の穴を語り始めた。
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