第38話 現場捜査①

文字数 1,399文字

 二階には、部屋が計三つある。
 一つは焼け焦がれた事件現場である松永楓の部屋。この部屋が真ん中に存在する。

「あの部屋が事件現場の楓さんの部屋ですよね」
「ええ」
「その両隣にある部屋は?」
「右の部屋が樅の部屋で、左の部屋が私の寝室となっています」

 桐が説明する。

「なるほど」

 式たちは事件現場となる楓の部屋に入った。
 現在火は消火されているが、荒れ果てた様子が凄惨な火事があったことを物語る。
 部屋にあるそこかしこの物が焼けており、中には炭になっているものもあるほどだ。

「これはひどいな……」

 式は部屋に置かれているパソコンを調べた。
 画面がひび割れており、起動しようとしても動かない。どうやら爆発で完全に壊れてしまっているようだ。
 椅子はゲーミングチェアだが、これも火事によって所々焦げていたり、破損している。

「この椅子、結構高そうだよね」
「めーぷるちゃんは最近配信での収入が多いようですからね。それだけではなく、視聴者からプレゼントが送られることもあるようです。このキーボードやマウスも高価なものですが、視聴者からプレゼントされたものですよ」
「そうなんだ」

 どうやらめーぷるちゃんはかなり実入りが良いようだ。

「隼人さん、爆発の原因って何ですかね」
「ふむ、今調べている最中だが、特にそれらしきものは見当たらないな」

 部屋には爆発する原因となったものが未だに見つかっていない。
 一体何が原因で爆発したのだろうか。

「隼人さんは引き続き爆発物の捜査をお願いします」

 その間、式は違和感がありそうなところを調べることにした。
 とは言っても、どこもかしこも焼け焦がれているので、調べるのも一苦労だ。
 どうしたものか、と上を見上げた時、蛍光灯が割れていることに気づいた。

(まあ、爆発があったら蛍光灯も割れるよな……)

 そこで式は、蛍光灯のすぐ近くにあった糸切れの存在に気づいた。

(何だあれは? 蛍光灯の紐が焼けたのが残ったのかな)

 特に気にせず、再び部屋の中を見渡した。
 そして部屋の右壁に貼られている綺麗なポスターの存在に気づく。

「このポスター……」
「めーぷるちゃんのグッズの一つですね。これに目を付けるとは、式くんは流石です」
「いや、そうじゃなくて、このポスター綺麗すぎないかな?」

 式が言った言葉の意味を、榊はイマイチ理解できていなかった。

「というと?」
「この部屋で火事が起きたんだから、部屋の物はほとんど焼けてしまっているでしょ。でもこのポスターは紙でできているのに、火事が起こったこの部屋で特に燃えもせず綺麗なままになっている」

 これが意味するのは、このポスターは火事が起きた後に貼られたものであるということだ。
 式がポスターをゆっくりと剥がすと、そこには小さな丸い窪みがあった。

「何だこれ?」
「丸い窪みですね。これがポスターの下にある意味は何でしょうか」

 今のところ、これについてはわからない。
 とりあえず保留することにし、再び部屋の中を見渡した。
 と、その時。
 式は真っすぐポスターを見ていた状態でそのまま後ろを向いた。すると式の視界には部屋の明かりをつけるスイッチが入った。

「……」

 頭の中で何かが閃きかける。
 だがその正体に気づくことはできなかった。
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