第65話 もう一人の犯人

文字数 1,416文字

「ここからは俺の推測だが、お前は前々から兄を邪魔だと思っていた。理由は単純で、兄が持つ財産や武器、薬などがほしかったからだ。それらを奪って海外に逃亡し、悠々と生活するつもりだったんだろう」

 龍吾は車に積まれている荷物を見ながら話す。
 これらの荷物が龍吾が言っていることの正しさを証明していた。

「そこでお前は兄を殺害する計画を考えた。だがお前自身はそこまで頭が良くないため、別の人物が犯行計画を考えた。ちなみにそいつは今別の奴が捕らえにいっているから、お前は安心して捕まっていいぜ」
「何言ってんだ……」
「そいつの計画通りに、一昨日にお前は兄を呼び出した。本来は暴力団の頭である赤城哲也が誰かと二人きりになるとは思えないが、実の兄弟であるお前ならば何かと理由をつけて二人きりになることはできただろう。『たまには兄弟で腹を割って話したい』とでも言ってな」
「そして呼び出した兄を殺害し、四肢を切断した。胴体部分は廃墟に持って行って貼り付けにし、残った四肢は使う予定の足部分だけとっておいて、残りは処分したんだろう。あるいは暴力団のことだから、体の一部とはいえ保存方法さえしっかりしていればそれなりの値段で売れるだろうし、どこかの海外ルートで売却したのかもしれんがな」

 なぜか暴力団について詳しい龍吾。

「そして昨日、あらかじめ用意しておいたもう一つの遺体の上半身部分と赤城哲也の足を配置して、一つの死体が置かれているようにした。もちろん検死されて身元が判明しないように、上半身は灰になるまで焼いて調査できなくした。それを路地裏に置いて、自分の組の者に発見させた。組の中には、お前の兄に反発する奴も何人かはいただろうし、そいつらを使えば楽に事件にすることができる」

 そう言った後、龍吾は再び懐から写真を取りだした。

「そしてお前は里中初音の事件にも間接的にかかわっている。里中初音を殺害したのはお前ではないが、その犯人とは関わりがあった。その関わりとはお前らの暴力団と武器や薬などを取引していた商売相手というものだ。その証拠に、ある人物の名前がお前らの暴力団から手に入れた顧客リストに載っていた。俺も知っている名前がな」
「お前、そんなものまで手に入れてたのか……!」
「ああ。その犯人とお前の利害が一致して、里中初音を殺害した。先ほども言ったが、その犯人は今別の奴が追いつめているところだ。あっちも上手くやっていることだろう」

 龍吾は夜空を見上げながら言った。



 玄関のインターホンが鳴る。
 モニター越しに見てみると、そこには警察が立っていた。

「すみません、少しお話よろしいでしょうか?」

 警察が我が家に来た。
 一体何の用だ?
 もしかして、あのことがバレてしまったのだろうか。
 応対してしまったからには無視することはできないので、仕方なく通すことにした。

「は、はい。今行きます」

 玄関のドアを開けると、そこにはとある少年の顔があった。

「き、君は……」
「夜分遅くにすみません。お話があるんです」
「話だと? 一体何の」
「それはもちろん、一昨日起きた里中初音さんの殺人事件についてです」

 その言葉を聞いてようやく確信した。
 やはりあのことについて疑っているのだろう。

「里中先生を殺害した犯人はあなただ。白澤教頭先生」

 鋭くにらみつけられ、白澤は冷や汗をかいた。
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