第76話 榊さんの解答

文字数 1,061文字

「ところで、榊さんの答えって何だったの?」
「大体は式くんと同じです。いくつか相違点はありますが」
「相違点?」

 榊は自分の推理を話し始めた。
 その人物は、ある弁当が目的でコンビニを訪れた。それは新発売したばかりの弁当だ。
 早速食べようと思い購入するが、そこで初めてイートインスペースに空きがないことに気づく。
 しかし既に弁当は購入してしまい、かつ温めも行ってしまったため、このまま食べなければ損になってしまう。
 とはいえ近くの公園に行こうにも食べ終えた後のゴミの処分が面倒だ。
 それなら、迷惑にならないようにコンビニの前で弁当を食べるしかないと思い至ったのだ。

「式くんは『時間がないから』という条件を加えていましたが、私はそれについては異論があります。時間がないのであれば、お弁当ではなくおにぎりやサンドウィッチなどの軽食を買った方がいいでしょう。行儀が悪いですが、それを食べながら会社に向かえばいいですし、食べ終えたゴミは会社で捨てればいいはずです。わざわざお弁当を購入してコンビニの前で食べるのであれば、それは結構なタイムロスだと思うのですが」
「……確かに、榊さんの言う通りだね。そこが甘かったか」

 式は自分の推理を鑑みて、それに不自然な点があったことに気づく。

「そういえば私気になってたんだけどさ、式くんって普段はどうやって推理してるの?」
「どうやってって言われてもな……」

 答え方が難しい質問だ。

「たとえば今回の問題なら、コンビニの前でお弁当を食べているってことだから、そうしなければならない理由があるんじゃないかなって思ったんだ。コンビニにはイートインスペースがあるんだから、本来ならそこで食べればいいのにそうしない、その理由はできないから。何故なら、そこが既に満席だったから。……みたいな感じかな?」
「なるほどー。そうやって考えてるんだね」

 これまで式の推理はどうやっていたのか謎だったが、彼が話したことでようやく判明した。

「でも、俺の推理より榊さんの方が納得できるものだったから、俺もまだまだだよ」
「そうですね。だからこそ、私たちはもっと勉強しなければならないのです。さて、では次の問題に行きましょう」
「え、まだあるの?」
「ええ。100問ほど用意したので、今日は一日中トレーニングしましょう」

 その言葉を聞いた式と春崎の二人の表情は引きつる。

「い、一日中ですか……」
「ええ。では第二問です」
「ははは……」

 どうやら長い一日になりそうだ。
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