第39話
文字数 3,618文字
二人だけの初めて時間は、とても熱くて長かった。
理子は、蒔田のものが体の外へ出てからも、ずっと貫かれたままのような錯覚を覚えた。
ジンジンとして熱く、痛い。
蒔田はそんな理子の首の下から腕を入れて、自分の胸に抱き寄せた。
蒔田の肌を自分の肌に直接感じて、理子は慄いた。体は火照り頭も熱くボーっとするが、少しずつ自分を取り戻しつつある。
額に優しくキスをされた。恥ずかしくてまともに蒔田の顔を見れない理子の顔を持ち上げて、蒔田は理子の唇に口づけた。
啄ばむような優しいキス。理子はうっとりした。
蒔田は理子の髪を撫でながら、手を取り、甲に接吻した。
それだけで、体がビクリと跳ねた。
たかが手の甲なのに、こんなに感じるものとは知らなかった。
「先生.....」
理子が掠れた声で蒔田を呼んだ。
「先生.....、あたし.....」
「どうした?」
「怖い.....」
「怖い?」
蒔田は不思議そうに理子の顔を見た。
「自分がどうにかなりそうで。.....それが、怖いの」
どうにかなりそう、か。
何もかも初めての経験で、自分が変ってゆくことに恐れを感じているのかもしれないと、蒔田は思った。
「理子.....」
蒔田は理子を優しく抱きよせると、前にも増して髪を撫でる。
とても愛おしい。いくら愛してもやまない。
事後も心身ともに醒めることなく、ずっと手放したくない、また貫きたいと思うのは初めてのことだった。
蒔田自身も、そんな己に恐れおののいている。
心も体も昂ったまま穏やかにならないでいる。
まだ猛っているのだった。
そんな彼の猛りを理子も敏感に感じ取っているのではないか。
その猛りによって自分が壊されてゆくような恐怖を感じているのかもしれない。
蒔田は自制した。理子はこれが初めてなのだ。
「先生.....」
二人は見つめあった。
理子にとっては至近距離にある蒔田に見つめられるだけで胸が高鳴る。
「理子、愛してる」
蒔田はそっと唇を重ねてきた。
何度口づけを交わしても、馴れるということの無い理子だった。
そばにいるだけで、見つめられるだけで、胸が焦がれる思いがする。
その腕の中で静かに抱かれているのが、一番落ち着くような気がした。
肌と肌が直接触れ合うと、そこから体が痺れてきて疼く。どうにも堪えられなくなってくる。
先生は私をどこへ連れて行くのだろうか。
「理子、ごめんな。痛かったろう」
「先生.....」
「こんなに早く奪うつもりは無かったんだ.....。何もしないって言ったのにな。嘘つきだな、俺は」
蒔田は苦笑いをした。
「お前を愛してる」
鼻にかかった魅力的な声で、美しい顔から発せられると、それだけで興奮してくる。
この素敵な人から愛されて、とても嬉しい。言葉では言い表せないくらいに。
だが、愛される理由が未だに理解できないでいる。
先生は、どうしてこんなにも自分に夢中なのか。
いつか醒めてしまうのではないか。そんな不安が付き纏う。
自分に自信がない。
「先生は、.....どうして私をそんなにも愛してくれるの?」
蒔田は眼を丸くした。今更何を言っているのかといった顔だ。
「理子は、俺を愛してはいないのか?」
蒔田は理子の問いには答えずに、とんでもない事を訊いてきた。
「先生ずるい。私の質問には答えずに自分が質問してくるなんて」
蒔田は頬に笑みを浮かべた。
「教師ってそんなもんさ」
「やっぱりずるい!」
しかも、その質問の内容ときたら。
「さぁ、答えて」
蒔田は催促してきた。
「そんなこと.....。恥ずかしくて言えない.....」
理子は顔をそむけた。
「答えてはくれないのか?」
そんな風に言われたら、答えないわけにはいかないではないか。
しかも、寂しそうな表情を浮かべている。
答えなかったら先生を傷つけてしまいそうな気がした。
「愛してなかったら、ここにこんなふうにしていません…」
理子は恥ずかしげに小さな声で言った。
蒔田はふっと笑った。
「じゃぁ理子は、どうして俺を愛してるのかな?愛する理由を述べよ。字数の制限はなし」
「だからそれは、私の質問じゃないですか」
「いいから、答えるべし」
なんだか口頭試問みたいだ。
仕方ない。
だが、改めてそう言われると明確な答えが湧いてこない。
最初から好きだったような気がする。
まず最大のポイントは眼鏡だ。眼鏡がとてもよく似合っていて素敵だった。
でもそれだけでは、憧れ以上のものにはならなかったろう。眼鏡の素敵な人は他にもいるし。
キャラクターかな.....。
知的でクールな雰囲気を持つハンサムなルックスなのに、中身は意外と偏屈だ。でも、そういう人はやっぱり他にもいるだろう。
なんだかよくわからない。
気が合う。相性がいい。でもやっぱり、そういう人は他にもいる。
例えば同じクラスの耕介とか。あいつとはとっても気が合う。
だが、それ以上のものは感じない。
結局のところ、あえて言うならフィーリングか.....。
(う~ん、難しい)
理子の一所懸命考えている様子を見て、蒔田は笑っていた。
「結局のところ、わからないんだろう?」
そう指摘された。
「そ、そんな事はありません」
理子はむきになった。
「いいさ。むきにならなくても。俺もこれまで色々考えた。どうしてこんなに愛してるんだろうって」
蒔田は言葉を続けた。
「それで気づいた。愛する事に理由なんて無いってことに」
「理由がない?」
理子は驚いた。
「そう。一見ありそうには見えるけど、よくよく考えたら無いんだ。だってどの理由も、他の人間にも当てはまることだろう?」
確かにその通りだ。同じ条件の人間は他にだっている。
なのに、何故、この人なのか。
「その人でないとならない、何かがあるんだろうとは思う。でもそれは具体的なものじゃない。何故だか知らないけど無性に惹かれるんだ。魂ごと持ってかれる、そんな感じかな」
「魂ごと.....?」
何となくわかる気はした。
何度否定しても心が言う事をきいてくれなかった。
「俺は、理子の何かに無性に惹かれた。事あるごとに理子が俺の心の中に入ってきた。客観的に見れば、別にどうってこともない女の子なんだけどな」
「あっ、酷い。ちょっと傷ついたかも」
「大丈夫。俺にとっては最高に魅力的な女性だから」
蒔田のその言葉に理子は頬を赤らめた。
「それって、あばたもえくぼに近いものがありませんか?」
理子の指摘に蒔田は大きく笑った。
「そんな事を自分で言うもんじゃない。理子にあばたは無いと思うけどな」
「そりゃぁ、実際にあばたは無いですけど、夢中になってる時って欠点が見えなくなるものでは?」
「そういう所が理系っぽいよな。分析家だな、お前は」
「いやですか?」
「まさかっ!俺と似てる。だから好きだ」
理子は再び頬を染めた。
「それって、もしかしてナルシスト?大好きな自分に似てるから好きとか.....」
「はっはっは!そうだ、それだ!ナルシストだから好きなんだ、理子が」
蒔田は大笑いした。
理子はなんだか茶化されているような気がした。
でも理子は、この人のこういう所も好きだった。結局、全てが好きなのだ。
「理子.....」
いきなり甘ったるい顔をして、長い腕を理子の体に絡めてきた。
「お前には何だかわからないが、不思議な魅力がある。それが俺を引きつけて離さない。知れば知るほど好きになる。愛が深まってゆくのを感じるんだ」
そう言うと、蒔田は顔を近づけて理子の耳たぶを軽く噛んだ。
理子は喘いだ。
蒔田の足が理子の足に絡んできて、体の一部に熱くて硬いものが当たっているのを感じた。
蒔田は何度も耳たぶを甘噛みすると、高い鼻先で理子の首筋を撫でていった。
体が再び熱くなってきた。
「理子、また欲しくなった。.....いいか?」
蒔田が悩ましげな顔を上げて、理子を見る。
「いやっていったら、どうするの?」
「勿論、やめるさ」
「.....本当に?」
「そんな事を言うってことは、やってもいいって事だな」
蒔田は笑った。
「先生はやっぱり、意地悪ね・・・」
「意地悪なのが、俺の真骨頂だからな」
そう言いながら、嬉しそうな顔をして濃厚なキスをしてきた。
長い指が理子の体中を這いまわる。
蒔田の指先は指紋が薄いのだろうか。とても滑らかで気持ちが良かった。
薄くて柔らかい唇も、その後を追うように体中を這った。
最初の時とは違う感覚が理子の中を駆けた。
やがて再び、蒔田を迎え入れる。
とても熱かった。
最初の時は裂けるような激しい痛みを感じたが、今度はそれほどでも無かった。だが、押し開かれるような感じがして矢張り痛い。
それに前の痛みも残っているのでヒリヒリした感じがした。
「理子、やっぱり痛いか?」
蒔田の声は掠れていた。
理子は頷いた。
「ごめんな。でも痛いのは最初のうちだけだから」
結局この日、理子は三度も蒔田に貫かれたのだった。
理子は、蒔田のものが体の外へ出てからも、ずっと貫かれたままのような錯覚を覚えた。
ジンジンとして熱く、痛い。
蒔田はそんな理子の首の下から腕を入れて、自分の胸に抱き寄せた。
蒔田の肌を自分の肌に直接感じて、理子は慄いた。体は火照り頭も熱くボーっとするが、少しずつ自分を取り戻しつつある。
額に優しくキスをされた。恥ずかしくてまともに蒔田の顔を見れない理子の顔を持ち上げて、蒔田は理子の唇に口づけた。
啄ばむような優しいキス。理子はうっとりした。
蒔田は理子の髪を撫でながら、手を取り、甲に接吻した。
それだけで、体がビクリと跳ねた。
たかが手の甲なのに、こんなに感じるものとは知らなかった。
「先生.....」
理子が掠れた声で蒔田を呼んだ。
「先生.....、あたし.....」
「どうした?」
「怖い.....」
「怖い?」
蒔田は不思議そうに理子の顔を見た。
「自分がどうにかなりそうで。.....それが、怖いの」
どうにかなりそう、か。
何もかも初めての経験で、自分が変ってゆくことに恐れを感じているのかもしれないと、蒔田は思った。
「理子.....」
蒔田は理子を優しく抱きよせると、前にも増して髪を撫でる。
とても愛おしい。いくら愛してもやまない。
事後も心身ともに醒めることなく、ずっと手放したくない、また貫きたいと思うのは初めてのことだった。
蒔田自身も、そんな己に恐れおののいている。
心も体も昂ったまま穏やかにならないでいる。
まだ猛っているのだった。
そんな彼の猛りを理子も敏感に感じ取っているのではないか。
その猛りによって自分が壊されてゆくような恐怖を感じているのかもしれない。
蒔田は自制した。理子はこれが初めてなのだ。
「先生.....」
二人は見つめあった。
理子にとっては至近距離にある蒔田に見つめられるだけで胸が高鳴る。
「理子、愛してる」
蒔田はそっと唇を重ねてきた。
何度口づけを交わしても、馴れるということの無い理子だった。
そばにいるだけで、見つめられるだけで、胸が焦がれる思いがする。
その腕の中で静かに抱かれているのが、一番落ち着くような気がした。
肌と肌が直接触れ合うと、そこから体が痺れてきて疼く。どうにも堪えられなくなってくる。
先生は私をどこへ連れて行くのだろうか。
「理子、ごめんな。痛かったろう」
「先生.....」
「こんなに早く奪うつもりは無かったんだ.....。何もしないって言ったのにな。嘘つきだな、俺は」
蒔田は苦笑いをした。
「お前を愛してる」
鼻にかかった魅力的な声で、美しい顔から発せられると、それだけで興奮してくる。
この素敵な人から愛されて、とても嬉しい。言葉では言い表せないくらいに。
だが、愛される理由が未だに理解できないでいる。
先生は、どうしてこんなにも自分に夢中なのか。
いつか醒めてしまうのではないか。そんな不安が付き纏う。
自分に自信がない。
「先生は、.....どうして私をそんなにも愛してくれるの?」
蒔田は眼を丸くした。今更何を言っているのかといった顔だ。
「理子は、俺を愛してはいないのか?」
蒔田は理子の問いには答えずに、とんでもない事を訊いてきた。
「先生ずるい。私の質問には答えずに自分が質問してくるなんて」
蒔田は頬に笑みを浮かべた。
「教師ってそんなもんさ」
「やっぱりずるい!」
しかも、その質問の内容ときたら。
「さぁ、答えて」
蒔田は催促してきた。
「そんなこと.....。恥ずかしくて言えない.....」
理子は顔をそむけた。
「答えてはくれないのか?」
そんな風に言われたら、答えないわけにはいかないではないか。
しかも、寂しそうな表情を浮かべている。
答えなかったら先生を傷つけてしまいそうな気がした。
「愛してなかったら、ここにこんなふうにしていません…」
理子は恥ずかしげに小さな声で言った。
蒔田はふっと笑った。
「じゃぁ理子は、どうして俺を愛してるのかな?愛する理由を述べよ。字数の制限はなし」
「だからそれは、私の質問じゃないですか」
「いいから、答えるべし」
なんだか口頭試問みたいだ。
仕方ない。
だが、改めてそう言われると明確な答えが湧いてこない。
最初から好きだったような気がする。
まず最大のポイントは眼鏡だ。眼鏡がとてもよく似合っていて素敵だった。
でもそれだけでは、憧れ以上のものにはならなかったろう。眼鏡の素敵な人は他にもいるし。
キャラクターかな.....。
知的でクールな雰囲気を持つハンサムなルックスなのに、中身は意外と偏屈だ。でも、そういう人はやっぱり他にもいるだろう。
なんだかよくわからない。
気が合う。相性がいい。でもやっぱり、そういう人は他にもいる。
例えば同じクラスの耕介とか。あいつとはとっても気が合う。
だが、それ以上のものは感じない。
結局のところ、あえて言うならフィーリングか.....。
(う~ん、難しい)
理子の一所懸命考えている様子を見て、蒔田は笑っていた。
「結局のところ、わからないんだろう?」
そう指摘された。
「そ、そんな事はありません」
理子はむきになった。
「いいさ。むきにならなくても。俺もこれまで色々考えた。どうしてこんなに愛してるんだろうって」
蒔田は言葉を続けた。
「それで気づいた。愛する事に理由なんて無いってことに」
「理由がない?」
理子は驚いた。
「そう。一見ありそうには見えるけど、よくよく考えたら無いんだ。だってどの理由も、他の人間にも当てはまることだろう?」
確かにその通りだ。同じ条件の人間は他にだっている。
なのに、何故、この人なのか。
「その人でないとならない、何かがあるんだろうとは思う。でもそれは具体的なものじゃない。何故だか知らないけど無性に惹かれるんだ。魂ごと持ってかれる、そんな感じかな」
「魂ごと.....?」
何となくわかる気はした。
何度否定しても心が言う事をきいてくれなかった。
「俺は、理子の何かに無性に惹かれた。事あるごとに理子が俺の心の中に入ってきた。客観的に見れば、別にどうってこともない女の子なんだけどな」
「あっ、酷い。ちょっと傷ついたかも」
「大丈夫。俺にとっては最高に魅力的な女性だから」
蒔田のその言葉に理子は頬を赤らめた。
「それって、あばたもえくぼに近いものがありませんか?」
理子の指摘に蒔田は大きく笑った。
「そんな事を自分で言うもんじゃない。理子にあばたは無いと思うけどな」
「そりゃぁ、実際にあばたは無いですけど、夢中になってる時って欠点が見えなくなるものでは?」
「そういう所が理系っぽいよな。分析家だな、お前は」
「いやですか?」
「まさかっ!俺と似てる。だから好きだ」
理子は再び頬を染めた。
「それって、もしかしてナルシスト?大好きな自分に似てるから好きとか.....」
「はっはっは!そうだ、それだ!ナルシストだから好きなんだ、理子が」
蒔田は大笑いした。
理子はなんだか茶化されているような気がした。
でも理子は、この人のこういう所も好きだった。結局、全てが好きなのだ。
「理子.....」
いきなり甘ったるい顔をして、長い腕を理子の体に絡めてきた。
「お前には何だかわからないが、不思議な魅力がある。それが俺を引きつけて離さない。知れば知るほど好きになる。愛が深まってゆくのを感じるんだ」
そう言うと、蒔田は顔を近づけて理子の耳たぶを軽く噛んだ。
理子は喘いだ。
蒔田の足が理子の足に絡んできて、体の一部に熱くて硬いものが当たっているのを感じた。
蒔田は何度も耳たぶを甘噛みすると、高い鼻先で理子の首筋を撫でていった。
体が再び熱くなってきた。
「理子、また欲しくなった。.....いいか?」
蒔田が悩ましげな顔を上げて、理子を見る。
「いやっていったら、どうするの?」
「勿論、やめるさ」
「.....本当に?」
「そんな事を言うってことは、やってもいいって事だな」
蒔田は笑った。
「先生はやっぱり、意地悪ね・・・」
「意地悪なのが、俺の真骨頂だからな」
そう言いながら、嬉しそうな顔をして濃厚なキスをしてきた。
長い指が理子の体中を這いまわる。
蒔田の指先は指紋が薄いのだろうか。とても滑らかで気持ちが良かった。
薄くて柔らかい唇も、その後を追うように体中を這った。
最初の時とは違う感覚が理子の中を駆けた。
やがて再び、蒔田を迎え入れる。
とても熱かった。
最初の時は裂けるような激しい痛みを感じたが、今度はそれほどでも無かった。だが、押し開かれるような感じがして矢張り痛い。
それに前の痛みも残っているのでヒリヒリした感じがした。
「理子、やっぱり痛いか?」
蒔田の声は掠れていた。
理子は頷いた。
「ごめんな。でも痛いのは最初のうちだけだから」
結局この日、理子は三度も蒔田に貫かれたのだった。