第38話

文字数 2,523文字

 やがて、蒔田の手が下半身へと伸びた。最初は気付かなかった。
 蒔田の動きがそれとわからぬような複雑な動きを見せていたからだ。
 蒔田は非常に慎重にゆっくりと、遠回りしながらも着実にそこへと近づいて行った。

 初めての出来ごとに興奮し、うろたえ、恐れ(おのの)いていた理子が気付いた時には、いつの間にかスカートが脱がされ、下着だけの姿になっていた。蒔田の指を、その下着の上から感じた時、理子は恐怖を覚えて体を固くした。

 蒔田もいつの間にか下着だけの姿になっていた。細い筈のその上半身は意外にも筋肉質で、引き締まった綺麗な体をしていた。
 理子の上にいるのは、まさに大人の男だった。急に恐怖心に見舞われる。

「先生.....、いや。お願いだからやめて」
 
 理子は震えながら懇願した。
 
「理子.....」

 蒔田は優しく、乱れた理子の髪を指ですくった。
 蒔田の顔が近づいてくる。その顔はセクシーで悩ましかった。
 そっと唇が重なる。

 優しく口づけられた後、額に、眉間、瞼に鼻先と、次々にそっと唇が当てられた。
 理子の気持ちを落ちつけようとするように、何度も何度も。

「先生.....あたし、怖い。だから、お願い.....」

 蒔田は優しく理子の頬を撫でた。

「何をそんなに怖がるんだ?初めてだから怖いと思うのはわかる。でも、実際は、そんなに怖いものじゃない。理子が欲しい。ひとつになりたい。こんなにも、自分から繋がりたいと思ったことは初めてだ」

 学校ではクールなのに、目の前にいる人はとても熱い。
 (たぎ)る想いが溢れているのがわかる。
 求められている。とても強く。

(でも.....)

 こういう状況を前にして、熱くならない男がいるだろうか。
 こんなシチュエーションなら求めるのが当然だろう。

「先生.....」

 理子は震えた。

「大丈夫だ。体の力を抜いて、俺を信じて全てを委ねてくれないか」

 蒔田の指が、理子の下着にかかった。その瞬間、理子の体は更に固くなった。

「いや!やめて」

 激しく拒絶する。
 蒔田は優しく口づけた。

「理子、ごめんな。本当は卒業するまで待とうと思ってた。だけど、ダメみたいだ。自分のものにしたいと言う、自分自身のエゴに勝てそうにない。理子が欲しくてたまらない」

 蒔田は理子を見つめた。その目の奥には、断固として譲らない強い光があった。

「どうして、なの?どうしてそんなに.....」

 理子は震えながら訊いた。
 理子の問いに、蒔田は微笑んだ。

「お前を愛しているからだ。自分から女とひとつになりたいと思ったのは、お前が初めてだし、
この先もお前しかいない」

 その言葉に、理子の胸は打たれた。

「信じて、いいの.....?」

「信じてくれ。俺はお前を裏切る事はしない。絶対に」

 力強くそう言われ、理子は体の力を抜いた。
 蒔田はそれを見てとると、優しく理子の下着を取り外した。

 理子の体を辿る指が、まるで単独の生き物のように感じられた。
 蒔田はゆっくりと、じっくりと、丹念に理子の体をほぐした後、中へと侵入した。
 理子の体が震え出し、体の中が激しく疼く。

 ゆっくりと突き進んでくる。
 理子の眉根が歪んだ。
 熱くて硬いものに貫かれる。

(痛い.....!)

「理子.....、痛いか?」
 
 掠れたような声で、息をあげながら蒔田が問いかけてきた。
 理子は頷く。
 初めての経験に、ただ身を任せるしかない理子だった。
 

 蒔田は自分の下で苦悶の表情を浮かべる理子を見て愛おしく思った。
 理子の中は未踏の地を進んでいる感じがした。
 進もうとする蒔田のものを強い弾力で押し返してくる。

 蒔田はこれまで多くの女を相手にしてきたが、ヴァージンは初めてだった。
 これまでの相手はみんな性体験が豊富だったから熟れていた。
 理子は全てが初めてだ。誰も触れたことのない理子の体に触れた時、大きな喜びが沸き起こり、突き上げてくるものに襲われた。
 まさに衝動だ。こんな事は初めてだった。

 これまで女の方から悩ましい姿態で挑発されても、反応するのは股間だけで体の底から突き上げてくるものなどなかった。
 心はいつも冷めていた。

 だが理子の場合は違った。愛おしい。
 愛おしくてたまらない。
 だからまず心が欲し、そして体が欲する。

 理子には「何もしない」と言っておきながら、最後までいってしまった。言った時には本気だった。何もしないつもりだったのだ。
 相手は教え子だ。おまけに性体験もない。
 大事にしたかった。

 だが、理子を抱きしめて唇を合わせた時、我慢していたものが一挙に溢れ出してきた。
 毎日学校で顔を合わせていても、恋人らしい会話も交わせなければ触れることもできない。
 目の前にいながら、普通にコミュニケーションを取れないフラストレーションが爆発してしまったのかもしれない。

 蒔田のものが全部理子の中に収まったとき、理子は叫び声をあげた。

「理子、痛いか?」

 理子の顔にかかる髪をそっとよけた。

「せん.....せい.....、痛い.....とても」

 理子は息も絶え絶えにそう答えた。

「ごめん、理子」

 蒔田はそう言うと、優しく理子に口づけた。
 まだ誰も入ったことのないその中は固くて狭く、脈打っていた。早く抜いてやった方がいいのかもしれない。
 だが、体はそれに反抗した。

「理子.....」

 蒔田は理子の胸の薔薇色の先端を口に含んだ。
 理子の中が大きく脈打ち、蒔田のそれに伝わってきて、昂っていくのを感じた。

 理子の白い身体が目に眩しい。
 染み一つないその肌は、透明感のある乳白色だった。まだ誰も使ったことのない絹布のようだ。
 肌ざわりはとても滑らかで、少しの抵抗もなく気持ちがいい。ずっと撫でていたいと思わせる。

 その体の中で、蒔田の熱いものが大きく鼓動している。
 繋がっている.....。

 やがて絶頂がやってきた。理子とひとつになっている喜び。
 それが蒔田の心と体を熱くした。
 自分を受け入れてくれている理子が、この上もなく愛しい。

 射精しそうになった瞬間に、蒔田は自分のものを引き抜いた。
 理子の外に蒔田の熱い液体が(ほとばし)る。
 いつかこれを、全て理子の中に放出したい。
 そのいつかが夢で終わらない事を、蒔田は切に願った。
 
 
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