第52話
文字数 2,249文字
展示されたボーリングのボールを見ながら、他愛ない話は続く。
ドラマみたい?
あまりフワフワしたやり取りはしたくないんだ。
しかしアルクと話すと、まるでアニメによくあるコメディシーンみたいな展開になりがちで。
こんなフワフワ!というんだけど、アルクはフワフワとは思わないらしい。
楽しいんだと。
うちだって、どっちがどうとかのやり取りはあるよ。
例えば旦那は車体感覚ならぬ人体感覚が鈍くて、まるでゲームのマス移動みたいな動きをする。
自分の周囲にスペースを大きく取っていないと気が済まない。
そこである日、まるでドットのゲームの主人公アイコンのようだと言ったんだ。
デッドスペースだらけの。
障がい物に当たると、ズンズン音がする、まるでポケモンの主人公みたいだと。
そしたらそれが気に入ったらしく、それから旦那は障がい物に当たったと判断するとズンズン言ってぼくを煽るようになった。
喧嘩していないよ。
ふざけ合って、誤魔化している。
ほぉん。
浮気でもされているのか?
浮気は暇だからやるもんだ。
つまり飽きられている可能性。
しかしぼくはその程度、なんとも思わないんだな。
他者から見限られることなんていつもの事で。
無視だよ。
子どもが無事で、経済的に何の問題もなければ放置だ。
知らない。
サイズの違う磨かれたボールを、三人はずっと眺めていた。