第69話

文字数 2,228文字

何となくピザを注文し、みんなで切り分けていく。
マルゲリータにまたハマった。

バジルがぼくを呼んでくるんだ。

それは分かるよ。

バジルは薬効が高いので、にいさんは滋養を求めているのだと思う。

美味しく健康に。

そう思って。

美味しく健康に?

食べ過ぎるよ。

バジル。

食べるよ。

本当に爽やかで美味しい。

バジルの為にピザを食べている。

爽やかさな。

随分味覚が鋭いのだと感心した。

味覚と言うか、鼻が利くというか。

それより、また仲人をした。

霊的にこっそり。

仲人だ?

誰が?

アルクの持続の一人だが。

いきなり引きずり出された。

死ぬかと。

とりあえず、良い感じになると思う。

しかし徳が高いな!

引きずり出されるものなのか

知らなかった。

乱暴にこじ開けられるよ。

全くもう!

ディバインの何かを急いで呼んで。

ディバインの何か……。

お星さまの人?

それは例え話でね。

しかし、天空の人なので。

やはりお星さまの人とした方が言い得て妙か。

濁している。

はっきり言えないんだな。

中々、天界事情はね。

プライベートもあるし。

どうやって決めるんだ。

運命なんてものは……。

運命だよ。

突然決まる。

そして、突然始まる。

仲介役か。

そうだよな。

仲介役……。
にいさんも無理矢理こじ開けてきたろう!

忘れたとは言わせないぞ!

忘れてるけど!

唯我を望むので、修業が必要になって!

大騒ぎになっている。

唯我?

どうして?

自分の中の想像通りの、しかし自分ではない他人。

理想が高過ぎる。

まずはにいさんがもっと自分を見つめ直す所から始めないと。

ラブラブボンバーには時期尚早だった。

ラブラブボンバーだと?

本当か!

なるけど。

道は遠いよ。

一番ではないけれど、かなり難しいルートだ。

難しいルート。

分かった。

実現まで遠いのか。

耐える。

堪え性もないのに……。

とにかく、極微領域で見ないと勘違いの連続となるので仲人は難しくて。

しかしぼくに皆突撃してくるので、やっとの事で対処を……。

仲人なんて、30代の言葉には見えないぞ。

どこで覚えた。

子どもの頃から聞かされてきたよ。

見合いだなんだと。

田舎の人間なのでね。

田舎の人間な。

そうだよな。

しかしなあ。

びっくりしたけど。

親戚の集まりで、仲人さんだなんだと神前式だなんだとイベントに地味に参加してきた。

言葉を拾っただけだ。

懐かしいなあ。

やはり古い家だな。

祖父の顔が広くて。
祖父の。

そうか。

生え抜きも?

貧乏なのに、家柄とかかなり気にしてきたし。

近所にも生え抜きは多い。

自然な流れさ。

そうだよな。

田舎ならそうなる。

そうなのか。

学歴主義の世間知らずに縁があって、それで認識がバグってしまったようだ。

これが普通の日本人だよな。

日本マンセーする前に、こういったしきたりを……。

と思ったけど、やはり地域差があるな。

地元の感覚で独特な昔言葉を使ったら義父に通じず、何故か嫌われてしまって。

県外移住の難しさを知った。

あれで嫌われたのが。

酷い話だ。

独特な昔言葉……。

どんな?

身バレするから言いたくない。

本当に独特なんだと知ったから。

村社会主義からは脱せないんだなと。

栗きんとん扱いで頼んます。

身バレ……。

分かった。

そんなに独特なのか。

あいつは殺すことにしたよ。

酷いやつで。

もう少しで殺されるところだったよ。

何かあったのか。
……色々。

ここは公共の電波だぞ。

それに、個人チャットだ。

言えないこともある。

結構やらかしているぞ。

後で調べられるから。

スクナ。

ワンカップだよ。

ほら。

ありがとう!

ワンカップ!

大好き!

じゃあね!

大変なんだな、色々。
現界に幸福を求めることそのものが誤りだ。

しかし最終構成期を迎えた現在、区切りを終えればこういった苦行に身を落とす必要性は失われる。

これからは快楽の時代だと言ったが、苦行は贅沢品ともなることを意味する。

余程の向上心の塊か、ドМくらいしか苦を選ばないだろう。

ドМだと?

分かった。

来年の秋まで耐えの構えか。

そうだ。

ぼくだってパンを貰えた。

苦に身を落とさないよ。

パンを貰えたとは?
シリウスと言うキャラは世界構築の為に血の滲むような努力で天界システムを整える為の活動をしてきたが、シリウスは地上天国の恩恵を受け取るつもりはなかった。

三千世界の霊魂全てがパンを受け取るまで座れずにいて、シリウスは自分のパンなんて考えていなかったんだ。

ところが、天はそれを許さなかった。

シリウスにもパンが配られる事が決まったのさ。

あ!

しまったな。

シリウスのキャラ、という事を忘れていた。

書き手と分けて考えねば。

かなり紛らわしい会話を続けているからね。

誤解を招くよね。

パンの話は泣けてくるよ。

シリウス……。

全員がパンを受け取る時代。

聖書の。

イエスはパンを増やしたのではなく、切り分けただけだと思うが。

しかし切り分けたパンだけでは皆は納得しない。

明らかに量が足りなくて。

ここで重要なのは、パンを増やすことでも皆に行き渡らせることでも満腹感を得ることでもない。

パンを受け取った大衆が、自らパンを焼く手段を覚えることであると思う。

配布人が増えれば、皆は満腹に近くなれるね。

そういう気持ちを視野に入れられるようでなければ駄目だ。

その教訓だろう。

深過ぎて。
そしてこの考え方は、資本主義経済に近付くものであると言える。

よくわからなくても、そうなるんだよ。

それが資本主義なんだ。

資本主義?

ここで?

どうしてそうなるんだ。

感動したぞ。

複雑なんだよ。

いきなり資本主義とは、と語れるものではない。

そらそうだが。

どうして……。

ピザを食べ終え、三人はスマホの時計を確認した。
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登場人物紹介

シールック

シリウス

アクルックス

シェル

スクナヒコナ

ミゾレ

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