第69話
文字数 2,228文字
何となくピザを注文し、みんなで切り分けていく。
現界に幸福を求めることそのものが誤りだ。
しかし最終構成期を迎えた現在、区切りを終えればこういった苦行に身を落とす必要性は失われる。
これからは快楽の時代だと言ったが、苦行は贅沢品ともなることを意味する。
余程の向上心の塊か、ドМくらいしか苦を選ばないだろう。
シリウスと言うキャラは世界構築の為に血の滲むような努力で天界システムを整える為の活動をしてきたが、シリウスは地上天国の恩恵を受け取るつもりはなかった。
三千世界の霊魂全てがパンを受け取るまで座れずにいて、シリウスは自分のパンなんて考えていなかったんだ。
ところが、天はそれを許さなかった。
シリウスにもパンが配られる事が決まったのさ。
イエスはパンを増やしたのではなく、切り分けただけだと思うが。
しかし切り分けたパンだけでは皆は納得しない。
明らかに量が足りなくて。
ここで重要なのは、パンを増やすことでも皆に行き渡らせることでも満腹感を得ることでもない。
パンを受け取った大衆が、自らパンを焼く手段を覚えることであると思う。
配布人が増えれば、皆は満腹に近くなれるね。
そういう気持ちを視野に入れられるようでなければ駄目だ。
その教訓だろう。
ピザを食べ終え、三人はスマホの時計を確認した。