第53話

文字数 2,225文字

リズムゲームコーナーに向かうと、三人は幾つも並んだ巨大なけたたましい機械をじっと眺めていた。
ドラム式はやったことない。
またそんな事を。

絶対にプロだろ!

ぼくもやったことはないが。

金がかかり過ぎる事がネックで。

やりたいけど出来ない。

反射神経が鈍いから、とても高得点を出せそうにない。

落ちてくる前に押すくらいの意識でないと絶対に追いつかないよ。

分かるよ。

絶対に無理だ。

しかも2個以上なんて。

忙しくて。

時間も長いし。

いとこは大得意なんだ。

神霊的に見ると、時透無一郎になるんだが。

とんでもなく反射神経が良い。

誰もそんな事を言っても信じないぞ。
時透無一郎……。

冗談だろ?

しかし三日月も一期一振もいると言うし。

善逸だっている。

物凄い剣士だ。

光の神になっちゃったけど。

え?

善逸……?

まさか。

本当にいるよ。

二次平面転生。

よくあることだ。

善逸は雷の呼吸の使い手だが、雷の呼吸は非常に重いので食事を殆ど摂らない。

剣が振るえなくなるんだと。

食べている物は、ミニチュアみたいな小ささだよ。

可愛すぎて。

呼吸が重いから食事を摂らない?

どういうこと?

内臓への負担を極端に減らす為らしい。

エネルギー効率を極限まで高めており、物理計算で剣を振るう。

そうすると、エネルギー過多の状態は危険になるんだと。

嘔吐するとか。

そんな事が。

人体の神秘。

現代医学で分かっていることなんてタカが知れているよ。

黄体ホルモンの話だって、実は未発見だし。

病院に罹患しても、あまりにも認識が原始的過ぎて辟易するくらいだ。

自然派とかじゃなくて。

西洋医学の視点を理解した上でね。

しかしそれでも社会は回っているので、知らないフリをしている。

受け入れられる範囲で適当に要素をかい摘んで情報発信するのみだ。

漢方の話とか。

原始的だって?

そうお父さんが言っていたが。

自然派か?

知らない。

シールックにいさんのお父さんの事は見ていない。

にいさんがたまたまぼくにアクセスしてきたから、話しているだけだから。

え!

そんな?

そんな認識なの?

栗きんとんは基本の型だ。
あまり交流関係を増やすと大変な事になるから、分からないと言っていると思った?

下世話は嫌いなんだよ。

それだけだ。

大変なこと。

例えば?

季節の挨拶とか!

大変だろう!

義実家への気遣いだけでも大変な経済状況なのに!

そんな理由?

お歳暮とか?

そうだよ。

イオンで買うにしても、グレードとか考えると辟易する。

お年賀だって。

気を使うだろう!

そんな事が……。

確かに大変。

面倒臭いな。

基本だろう。

全く、野蛮な。

そういったやり取りの為にお金を稼ごうとは思わない。

縁は縁だ。

お金を稼ぐ理由がそれ?

どうして?

昨今の不景気により、スピ関係で稼ぐなんて無理だ。

雀の涙以下の稼ぎしか得られない。

しかし人脈で食いつなぐ業界だから、何としてでも見栄を張る必要がある。

無理ゲーにも程がある。

本を出すにも、一苦労。

出版社だなんだと挨拶回り。

根回しささやかなプレゼントは絶対だ。

幾らお金があっても足りない!

よく知っているな。

社会性ばつぐんだ。

このくらい分からなくてどうする!

30過ぎて、恥ずかしいだろ!

全く。

妹にもこういう心を教えようとお中元から始めたら、断られてしまった。

お姉ちゃんとのやり取りで時候の挨拶を練習しておくべきなのに。

案の定、義実家に叱られたらしい。

全く恥ずかしいな!

言えないけど!

お姉ちゃんとのやり取りだと?

萌えた!

萌えた?

分かるが……。

萌えるか?
萌えるだろ!

にいさん呼びも良いし!

あまり呼び捨てはな。

アルクは気心が知れているし、いいけど。

ちゃん付けを求めているらしいが、男のシリウスでそれをやってもな。

アーネちゃん呼びは良かったな。
ちゃん付け?

いいな。

呼んで欲しい。

シールックにいさんは、にいさん呼びが良いと自分で言ってたろう!

全く欲張りだな!

ふぁい……。
全く。

利益だなんだと言う前に、こういった地道なしきたりを覚える方が先決だろう。

だから駄目なんだよ。

いや、びっくりした。

あまりにもしっかりしているから。

どうして……。

この程度の認識が最低限敷かれていないと、霊媒なんてとても出来ない。

完全にコミュニケーションの世界だから。

霊力とかは、後回しだ。

まずは挨拶。

そして気遣い。

言い回し。

それだけでここまで来た。

それが無かったら、とっくに殺されていたぞ。

そうなのか。

いや、ぼくは本当にとっぽいかもしれない。

言われたよね?

……言ったけど。

詰めが甘いねえ。

全くキャパ狭なんだから。
これが普通なんだよ。

人間道の限界だ。

……だね。

普賢菩薩。

全く……。

……恥ずかしくなってきた。

どうして。

みんな出来ているのに。

子どもの頃から厳しく躾けられたから惰性で行っているだけだと思うよ。

ぼくの家は貧しかったが、父が会社で色々貰ってくるのでこういうのもあるのかと何となく覚えた。

お中元、お歳暮。

やり取りは無かったけど、少しずつ少しずつ。

環境が人を育てるのも限界があるらしい。

個々の認識に寄るよ。

本当に、ダウン症なの?
心機能が通常より低く、脳の発達が極端に遅い。

トリソミー18だ。

残念なことに。

普通なら知的障害なんだがな。

これで常人だから。

なんでそれが分かったのか?
おい。

スリーサイズを教え合った事を忘れたのか?

霊視だよ。

そうでした。

ごめんなさい。

にいさんの記憶の棚、105個あるのにな。

なんで忘れるんだ?

えっ?

第一段階の?

そんなに?

宝の持ち腐れだ。
シリウスはアルクと共に太鼓の達人を始めた。


シールックは後ろから静かに眺めている。

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登場人物紹介

シールック

シリウス

アクルックス

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ミゾレ

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