第31話

文字数 2,254文字

ゲームセンターを出た三人は、しばらく歩いた所にあるスーパー銭湯へと向かった。


源泉かけ流しの、本物の温泉である。

源泉かけ流しとは。

何か良いことがあるのか?

地下から本物の温泉が湧いている。

ボイラーを殆ど使っていない。

ボイラーも悪くはないけどな。

裏方を見ると、何だか申し訳なくなるよ。

地脈が?
そう。

鹿児島の加治木温泉は特に秀逸で、あそこは本当に良い湯が出るよ。

それに近く調整してある。

加治木温泉だと?

行くしかないね。

知らなかった。

鹿児島……。

大分ばかり行っていた。

大分は良いよ。

マグネシウム泉なので、あらゆるものに効く。

九州は特に住みやすいように調整がかけてあるからね。

マグネシウム泉か。

ルルドか?

うん。

有名なペットボトルがあるね。

ペットボトルだと効能が抜けてしまうから、現地に行くに限るよ。

また行くか。

杞憂だったかな。

どうした?
玄海の話さ。

佐賀だろう?

全く問題ないよ。

佐賀の米は美味い。

九州を楽しんでほしい。

地元だったよな?
まあな。

しかし全く知らなくて。

住んでびっくり。

感動の連続だった。

何もかもが美味しいと。

微妙に美味い。

後から、あれ?あの美味しいのは?となって、九州産だと気付くんだ。

明太子好きになったのは、福岡で食べてからだ。

それまでは普通だったのに。

なら、どうして関東に。
一身上の都合により。

生まれ故郷だし。

生まれ故郷なのか。

それなら、そうだな。

フクザッツな事情がある。

中々いえないさ。

これは、例え話でね。

栗きんとんのきんとんを箸でキレイに食べるのは難しいだろう?

ある程度で諦めるよな?

目の前にある全てを食べ尽くす、理解するのは難しいのさ。

ヘラを使えば、となるけど。

権力の神ヘーラーとかけて、力任せに無理にこじ開けるのは良くない。

人道に背く。

だから、ある程度は目を瞑ろう。

分かったけど。

本当に笑ったよ。

何でそんなに面白いんだよ。

これ、鉄板ネタなんだ。

三日月とのやりとりの。

まあ、なあ。

かなり頻度が高い認識で。

三日月が言ったのか、それ?
いや。

一期一振だが。

なんて出来たやつだ。
いや、一期一振が季節外れのお節を作り始めて。 

いつ食べたっていいだろ?

と言うので。

確かにな。

一期一振とは良い友達になれそうだ。

甘党なんだ。

凄く。

食べたくなる。

お節は。

いつでも。

渋い趣味してるね。
渋いか?
渋くない。

日本人だ。

分かったよ。

ぼくは自分からは作らない。

食卓にのぼれば食べる。

そのくらいの認識なんだ。

伊達巻ばかり食べるし。

全く。

いっぱい作らなきゃじゃないか!

どうして一番人気ばかり……。
人気だからだろう。
それはそうだが。

筑前煮を大量に作っていたな。

あれは良かった。

作り過ぎた。

すぐに消えたけど。

それは作り過ぎとは言えない。
受付でタオルなどのレンタルを受け取り、脱衣所へ向かった。
同性同士ってのは楽だねえ。
恥ずかしくないのか。
全く。
こういった事が続くなら、ずっと男でいてくれ。

本当に。

男性型はもう一つある。

にこ一文字と言う刀剣男士だ。

登場はなさそうだが。

現物はすぐに折れたので。

なんだと?

短刀か?

そうだよ。

藤四郎達に混じって戦うよ。

見た目は、翔んで埼玉の壇ノ浦百美に近い。
なるほど。

面白い。

折れたかな?

どうかな。

しかし、鍛冶屋もさ。

まさか打った刀が擬人化されて商業展開されるとは夢にも思わなかっただろうから。

そこ詰めてもね。

栗きんとん。
笑ったよ。

もう気にしないよ。

三人は裸になると、そのまま浴場へと入っていく。


シャンプーは備え付けを使う。

全く安全なシャンプーだから、気にしないでね。
気持ち悪い事を言うな。
待て。

もう銭湯の備え付けは使えないぞ。

気にしすぎだよ。

気にしないだろう?

知らぬが仏だろう。

お前は言わぬが花。

無理だ。

本当に。

自前しかない。

愉快犯が多い。

国籍関係なかったよ。

いや。

そうは思わんぞ。

ああ、なんて住みづらい世界だったんだ。

先にかけ湯した。

入る。

待て待て。

早いぞ!

何でかな。

置いてけぼりな気がする。

金?銀?
銀?

金一択だろう。

熱いじゃん。

銀に行く。

……。
銀に行こう。
2つある、熱い鉄入りの金と通常湯のマグネシウム泉の銀の湯層を行き来し、かけ湯を念入りにしてから身体を湯に沈めた。
身体をゆるゆる温めて、交互湯をしてから金だ。

それがいつものパターン。

なんで?

何かあるの?

心負担を懸念して。

水風呂には肩まで沈まなくても大丈夫。

ふくらはぎだけで充分効果はあるよ。

良かった。

いつも水風呂に入れなくて。

軟弱なのかと。

夏はいけるけど。

冬は駄目だ。

第二の心臓のふくらはぎの血行を良くすると、それだけで体調は整うよ。

やっぱり銀にする。

寂しい。

ほらみろ!

いつもそうだ!

わかったよ、シリウスの言う通りだよ!

もう!

笑い過ぎる。
いつもそうだ。

何故かぼくは不健康ロードを。

アストラル帯と近いから仕方ないね。
アストラルの影響か。

それなら下から攻めよう。

逆に健康を狙えるって?

また縛りプレイを!

何?

駄目?

認識が反転するよ。

それに抗えるかな?

難しいかも。

でもやってみよ。

何の話だか、さっぱり。

やはりヌース関連か?

そう。

アストラル帯の上澄みと水底の話。

定質の認識の位置。

次元調整と無意識からなる行動を決定付ける点質の座標。

分かりやすい説明。

中庸は無理かなあ。

……どの辺が分かりやすいのか説明してくれ。
分からんかなあ。

スマルの観察が足りない。

無理だよ、流石に。
観察っていうけど……。

何がなんだ。

全体像の把握というか。

まあ、ぼちぼちね。

水風呂の中にゆっくりと身を沈めるも、肩まで易易と入るアクルックスに、シールックは信じられないようなものを見る目を向けた。
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登場人物紹介

シールック

シリウス

アクルックス

シェル

スクナヒコナ

ミゾレ

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