第39話

文字数 2,059文字

熱々の明石焼きを取り分けながら、蛸の数を目測で勘定する。
明石焼きは作り手から見ると合理的なたこ焼きだ。

専用器具を使わない。

明石焼きとたこ焼きを混ぜて考えるな!

まるで別物だろう!

全く関東民は!

何が違うんだ?

食べやすさか?

……味とか。

とにかく違うんだ。

あっちに失礼だろう。

歴史的背景か。

兵庫民に遠慮しているのかい?

播磨と言って欲しい。

播磨と上当は違う。

そんな事で対立していたのかよ。

忠義に厚いな!

なるほどな。

上当とはどこか分からないが。

それで、どっちがお上品なの?
明石焼き。
そうだな。

明石はアハシマだもんな。

オノゴロの守護者。

まさにドンピシャの。

しかし、食べ物くらいで、と思うけど。

こういう所が日本人だよな。

歴史的背景を知らないと、お好み焼きかもんじゃ焼きかで悩むくらいのレベルと同じに捉えてしまうんだよ。

気分で選ぶ。

しかし明石焼きは……。

神武天皇の食べ物だとかで……。

え?

神武天皇はたこ焼きの方が好みだよ?

食べやすくて。

ひっくり返すの、楽しいとか言って。

何?

由縁の者か?

すまぬな。

まあ、それはいい。

中国に移住したというアシハラな。

アシハラシコオとはまた別の。

国境とかまるで気にしていなかった。

フロンティア精神旺盛なだけで。

そういう背景を無視されても困るのだがな。

アシハラシコオ?

スバルなのか?

本人はアシハラシコオなんて嫌だ!と叫んでいたが。

ラノベ古事記の、オオクニヌシと同一視されているアシハラシコオの絵を見た途端、スンッとなって。


やっぱりぼくだった。

とか言ってたよ。

……ぽい。

そうなのか。

そうだ。

可愛いバラキエルのスバルちゃんだ。

色男の字はともかく醜男は嫌だと言っている。

全く。

美しさとは表裏一体……。

表裏一体?

そういう意味なのか?

美しさの盃屋?

知らない?

そんな、兵庫で有名な地酒屋のことなんて何一つ知らないぞ。
知ってそうだが。

そこが発祥だよ。

明石焼き。

ふうん。

大方、酒の残りを使ってフワッフワの明石焼きを適当に作って


これは天皇に献上するに値する美味さや!

神武天皇の食べ物!


とか言い触れて回って尾ひれがついたというのが真相だろう。

美味しそう過ぎる。

しかしありそうな。

お情け無用やな。

知らんよ。

崇拝し過ぎなんやない?

全く、これしか娯楽がないんか!

ってくらい寝ても覚めても天皇天皇……。

……!

お母さん!

その作り方なら、確かに明石焼きとたこ焼きは別物だ。

たこ焼きは生地をサラサラくらいにして作るけど、酒で埋めると固まらなくなるから。

なるほど。

試しに作って失敗したんだな。

別物だ。

確かに明石焼きはたこ焼きとは別の食べ物だ。

卵焼き用のフライパンで作るものだ。

卵焼き用のフライパンだと……。

どっちだ?

黙って聞いていれば!

何?

四角いフライパン、というべきか?

銅製の高級なやつか。

銅製の方が高いのか。

いや、四角い専用器具で。

この期に及んで、専用器具も何もないだろう。

庶民が再現する時は、自然と卵焼き用のフライパンを使うだろう。

四角くないと明石焼きっぽくないし。

確かに。

庶民ならな。

しかし銅製を使うなんて聞いたことないぞ。

何?

銅製はくっつきにくいし、まあくっつかない訳ではないが。

銅の補給にも適しているので癖っ毛が収まるし、身体の調子も整う。

高級品やど!

高いけど!

プロ御用達や!

癖っ毛が?

絶対に試す!

ぼくは髪はずっとストレートだが、銅製の調理器具を使うと、石田彰レベルになるだろう。

そのくらい効くよ。

辞めろよ。

本人は気にしている。

石田彰に?

やるしかないだろう!

あいつの髪は驚く程のサラサラだ!

インタビューの本人写真で分かった。

とんでもないサラサラ男だと!

不思議キャラで、掴み所がない。

勝手な想像で近付かれ、そして勝手に失望された上に去り際に砂かけ被害が酷い、そんな偶像崇拝現象が起こりやすい人だ!

勝手にセッションして、怒られるぞ!
霊視はしていない。

情報量の少ないコールドリーディングだ。

これで本当に本人とアクセスは、……まあしていないから。
なんということだ。

しかし庶民の明石焼きな。

試そう。

あのな。

黄桜をたっぷり使え。

飛ぶぞ。

知っているんじゃないか!

なんてやつだ。

黄桜……。

あれは明石焼き御用達だったのか。

試す、絶対に!

そのまま飲むと、青くてね。

古酒にすると最高に美味くなるが。

火を通してアルカロイドの未発酵成分を飛ばすと旨味しか残らなくなって、そのバランスが黄桜は絶妙なんだ。

ほぼ料理酒としても過言ではない。

黄桜料理は天皇家御用達だ。

お前……。

どれだけ博識なんだよ!

おばあちゃんの知恵袋役だと言っていただろう。
魔のヒューマノイドを脱いでしまったけど、一応は魔族集団だし。

このシリウスの肉体はトレミィ型と言って、星座神話の流れを知識としてミルキィウェイの如く垂れ流す性質を持っている。

一応、アルクも。

ミルキィウェイは辞めて。
……ミルキィウェイ?

天の川の何が?

言わせんな、恥ずかしい!
何?

知らないんだよ、星座神話。

チッ!

ねんねちゃんはお母さんのおっぱいでも吸ってな!

??
明石焼きのタコは、それぞれ10粒ずつ取り分けられるようになっていた。
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登場人物紹介

シールック

シリウス

アクルックス

シェル

スクナヒコナ

ミゾレ

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