第64話

文字数 2,219文字

エビチリの海老を数える様子を見ながら、シールックはふと手を止めた。
こどちゃ好きだよな?

小花美穂ファンか?

りぼんコミックスは一通り集めたが。
同じだ。

パートナーまで。

パートナー。

アンダンテ。

うん。

そのくらいだったか。

昔は大好きだったが、今読むとな。
水の館がイマイチで。

ガッカリした。

わかるよ。

なんか違うってなった。

ハーブはいらない。

ハーブなしでどうやって恐怖を。
真子がな。

ひたすら怖くないと。

威圧感でゾクッとさせないと、イメージ通りにならないと思うぞ。

真子が。

確かにギャグテイストになって、雰囲気がいまいち。

水の館の正解ルートなどはない。

ああいった男女の諍いに正しさも何もないので。

男女の関係に正解はないと?

そういうものか。

恋なんて七転び八起き、というが。

愛は転ぶ以前の問題で。

転ぶ以前の?

どういう意味だ?

さっきのポリアモリーの漫画にはあのように書いたが、人間の感情はたとえそれが世間に言われる正しいものでなくても、本人が幸せならそれでいいんだ。

第三者が介入するものではない。

だから愛は無いも同然。

転ぶとかじゃなくて、ひっくり返って憎になるか無になるかだよ。

愛はないも同然か。

一応、愛は相手を深く知ること、という答えを導き出していたな。

分析は外すことも多いし、相手がそうじゃないと言ったら、はいそうですね、と素直に引き下がるしかない。

感情の押しつけが発生した時点で愛は消える。

そんな……。

感情の押しつけなんて。

ここで言う感情の押しつけは、にいさんが思っているのと少し違うと思うよ。

愛は難しいんだ。

本当に。

しかし、無いのにあるように見える。

分からない内は、あまり無闇に分析をしない方がいいかもね。

本当に、愛とは何なのか混乱を極めるだけなので。

慈愛すら愛ではなくなるし。

難しい。

どうすれば。

ぼくはシールックにいさんが好きだよ。

それでいいじゃないか。

そうか。

そうだな。

そう言ってもらえればな。

そういう人がいないから、惑うのだが。
トゲがな。

見えないけど、心がウニみたいになっているのだろう。

羽山の話にそういうのがあったよな。

ああ。

子羽山の。

覚えている。

あれは良かったな。

上手いこと、こどちゃに話を戻したな。
ウニ心だと、中々人と本当の意味で仲良くなれない。

トゲを先だけ少し取り払った心を、こんぺいとう と呼んでいるが、それでも本当の意味で誰かと仲良くなるのは難しい。

ウニ心?

こんぺいとう?

ふざけて言っているのか?

爆笑したが。

ぼくはこんぺいとうと言われた。

しかしビジュアルが可愛いので許した。

そんな誰でも仲良くなれる心とは。
わ だよ。

白隠禅師が好んだもの。

富士信仰!

深いな。

深すぎた。

精神球とか感性球とか連呼しているが、これも わ の心だ。

基本は正八面体。

そこに感性がフーリエ変換に基づいて肉付けされ、伸びたり縮んだり。

完全なる球精神を持つものはいない。

そこで、にっこり ほっこり を心に備えると、少しは制御が効くようになる、という。

デルタ。

この認識には感動した。

乙甲も知らなかった。

どうやって調べたんだ。

デルタは数学論。

近似値ってだけで。

P値の動きを予想すれば、自然に理解に至るっていうか。

メリカリは、アイディアノートに書き付けておいただけだ。

創作の案にしようと思って。

創作の案なあ。

勉強ノートになっていなかったか?

分からない。

色々調べたが……確かに知識にはなったか。

創作をする人って大体そんな感じじゃないか?

奇面組の作者の人も、名前を思いつく度にストックを増やし、長年の蓄積の結果から、みたいなことを単行本に書いていたぞ。

よくそこまで読んでいるな。

感心しまくった。

いや。

いわゆる活字中毒で。

読むのは好きで。

活字中毒。

自分もだいぶ読んだつもりなんだが。

友達が少なくて、一緒に遊ぶみたいな機会に恵まれず。

時間が余っていたので、それで読む時間があったみたいな。

典型的な陰キャだな。
今では陽キャか?
普通に近付けるように努力を続けただけだ。

ぼくは子どもの頃、あまりにもクラスメイトと馴染めずにいて、いい人になれば受け入れて貰えるのではないか?と思い立ち、以来知識集めを欠かさなかった。

しかし、別にいい人が受け入れられるということもなく。

ただ人受けは多少は良くなった気がする。

励ますために明るく振る舞うことも覚えた。

ちょっと良いこと言えたらいいな。

という願望もあったので研究し、それがやっと可能になった気がするよ。

今のキャラは無理して振る舞っているのか?
まさか。

そんな疲れることはしないよ。

どこかで諦めて、完全に素で過ごせるように調整をかけた。

現在に至る。

素だよ。

素か。

本当だな?

邪霊に操られることもあるが、大体素だ。

疲れているし、体調も悪い。

気取る元気もないよ。

気取る元気もない?

信じられない。

背伸びは疲れた。

自然派ママを目指すことにした。

食生活的な意味ではなく、精神的な意味で。

自然派ママな。

爆笑したやつ。

それも鉄板ネタなのか!

すげえぞ!

ああ。

少し古いネタだよ。

どんなネタの宝庫が……。

知りたい。

知りうす。
だめだ。

無限に増えていくらしい。

追いつけない。

覚えたネタが、にいさんの全てだ。

縁のあった認識でにいさんはカタチつくられていく。

それが精神球の在り方だよ。

そのままでいいんだよ。

そのままの君で。

約束しよう。

ぼくらはいつまでも仲の良い友だちでいると。

新しい風に……。

そうだな。

きっと思い出す。

とろけるマンゴープリンを食べ、それで三人はなんとなく落ち着いた。
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登場人物紹介

シールック

シリウス

アクルックス

シェル

スクナヒコナ

ミゾレ

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