第42話

文字数 2,265文字

金箔の縁の、大理石を思わせる光沢のある白い蓋を開けると、そこには濃厚な抹茶アイスが広がっていた。
なんて美味しそうな色。
これは……どこの抹茶だ?
和香園に決まっているだろう。

一時期、熱狂的な迄に推していたんだ。

昔ながらの製法とクオリティーを保っている。
昔ながらの?

分かった。

宇治抹茶かと。

宇治抹茶は最高だが、薩摩茶だって負けていないのさ。

何しろ宇治抹茶の祖だから。

元祖?

分かった。

食べやすい。

食べやすい?

元祖って言葉に弱いのか?

激熱。
にいさんの祖は知っているかい?

なんと薩摩だ。

薩摩から生み出された点質からなる付帯質と膜からの切り離しで生み出された。

指宿の風に包まれ、にいさんは光の粒と共にお母さんの腕に収まっていったよ。

なんだ?

詩か?

分かった。

ぼくが男の中の男と言われる由縁が。

際どいネタ。
中々ね。

こういう事は言い出せない。

これは太古の昔の話だ。

如何ほど時空の流れに翻弄されようと、生き物はいつだって生まれた場所に戻り、やがて同じように生きるんだ。

これは本能と言えよう。

なんて詩的なんだ。

気に入ったよ。

よく言われる。

詩人か?と。

そのままを言っているだけだが。

ただ、語呂を意識して何となくカッコいい感じに言うように自分を訓練している。

厨二なんて青臭い。

出来る限りの努力。

その中での最善。

自分に架すのはこれのみ。

お前……本当に詩人ではないのか?

真摯過ぎてこちらがひくぞ。

いや、シリウスになるとこれが顕著になる。

そういう形質なんだよ。

嘘つけ!

いつだってみんなを…。

感動の渦に巻き込んで。

いや、アルクは……。

幸薄夫という事を知る前から、硬いぞ、と思って心の氷と凝り固まった澱みを溶かすべく、点質からなる付帯質の間を縫ってクリーンヒットするような優しい言葉を探して話をしただけで。

感動させるとかそんな事は一切考えていなくてね。

口説いているの?

泣けてくるんだけど。

いいな。

口説かれて。

そんな人、周りにいないよ。

口説いているつもりはない。
これで素だというから。

本気で押されたらどうなるんだ。

本気で?

いつだって本気だが。

恋愛の本気か……。

それは恋愛モードに入るだけになるかと。

背伸びしたり虚勢を張ったりすると、真の実力が出せなくなるので。

少し気を巡らせるようにするけど、自然体であってこその恋愛だよ。

なんだと……。

照れすぎるから、辞めて。

なんだ、この空気。

桃色な……胸がキュルルンする。

マジマジと見つめられても困るよ。
……!

駄目だ。

60次元に入りそう。

あれ、それは……。

完成体に近付きそうってこと?

大人しくなれない。

Can you Keep a Secret?

秘密なんて……。

暗号、気付いてないから。

とっくに解読済だよ。

にいさんのそういう素直な所が好きなんだがな。

無理だと。

思う……。

秘密、守りきれそうにない。

にいさん、にいさんはまだ自分のエモに気付いていない。

にいさんのエモ、それは爆笑だ。

オレンジチャクラに染め上げられた、夕日だ。

隣で見ているだけに留めておくんだよ。

分かるよ。

爆笑点穴。

ノックアウトだ。

口は災いの元。

肝に銘じておくんだ。

男の人は、いつだって虚勢を張りがち。

そして頭の軽い女は、虚勢を張った男性の姿を好むんだ。

虚勢が張れないと、男として認めて貰えないのさ。

その中で、虚勢解除してにゃんにゃんごろごろしても良い女性を見つける。

そうして、虚勢モードとにゃんごろモードを使い分けて生きていく。

それが男性としての真の幸せだ。

社会的地位と心の平安、両方をゲットするのさ。

なんということだ。

今までぼくは、にゃんごろモードを許されなかったということ?

それは病むわ。

にゃんごろ……。
今はにゃんごろしていると思う。

何もにゃんごろモードは女性の前だけで晒すものではないので。

男同士で楽しくにゃんごろし合うのもいいんじゃないかな。

その時、性は邪魔になるから取り払って。

性を発散させたければ、自慰か売春宿に行くんだ。

売春宿は嫌だ。

傷付く。

接待か嫌がらせされるだけだから。

自慰で、十分。

男同士の猥談も危険だ。

何回自慰させられたと思う。

そんな……。

知らなかった。

お茶を濁したい気分だ。

ぼくが抹茶好きになったのは、京都に行ってからだ。

抹茶プリンで堕ちた。

しかし最近は美味しい抹茶チョコがない。

抹茶はお茶を飲むだけにして、良いチョコが販売されるまで待つことにしたのさ。

これは猥談じゃないよな?

ほっこり話だよな?

まさかね。

チョコの話だから。

抹茶アイスを食べている時に、猥談は嫌だな。

抹茶に失礼だ。

今は抹茶の美味しいアイスを堪能する時間だよ。

わかったら返事をおし!

ふぁい。
ふぁい。
バント送りした気がする。
脈性スクイズはどうなるんだ?
抹茶のあとは、マスカルポーネにしよう、かな?

いや、こんな事を考えるのは嫌だよな。

それは、鉄板イジリなのか?

読めない。

前提が分からないとね。

取り敢えず、二塁送りにはなっている気がするよ。

そうか……。

えっちか。

天かすを食べている時に感じる、多幸感に似ている。

本当は分かっているんだろ!

天然にいさんよ!

天然?

まさか。

こんなに考えて生きているのに。

おい!

まじか!

Ψ7からの印象と、ψ7から見た世界はまるで食い違っているのは当然だ。

にいさんはψ7からの世界で自分を判断している。

つまり、これは天然さんを現すのさ。

……小文字の7はなんだ。
自分から見た世界の印象と、その反応からなる自己判断の往復。
なるほど。

メモしておこう。

物凄く重要な気がしてきた、ヌース。

noosology?

YES
Ωも大事、と。
空の容器を更に重ねて、マスカルポーネに手を伸ばす。
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登場人物紹介

シールック

シリウス

アクルックス

シェル

スクナヒコナ

ミゾレ

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