第55話 ☆

文字数 2,164文字

じゃんけんゲーム機の前に立ち、三人は端子の発光でグーチョキパーのシンボルが浮かび上がる基盤を見つめた。
これはやったことはない。

勝てる自信がなくて。

すぐ負けるよな。

風船みたいに難しい。

コツはあるのか?

いつも負ける。

シャーペンの芯をちょうどいい長さに出すくらいの微調整が必要になる。

ノックし過ぎず、しかし控えめに。

的確過ぎて!

話が上手いな!

読むのが難しい。

かなり研究した。

連勝出来た。

感覚を研ぎ澄ます訓練にはなるだろう。

中庸の意識への入口さ。

このゲームで中庸が学べるのか?

なんて奥深いんだ!

ぼくたちはいずれ霊素慈に住み、ご近所さんになるだろう。

その時にグーチョキパーの仲良しステッカーを作ろう。

水道局の広告みたいな、裏が磁石の。

冷蔵庫に貼っておくんだ。

シールックにいさんは、グーの係だ。

ぼくはチョキ。

アルクはパーだ。

分かるか?

三竦みだが、途方もなく仲が良いんだよ。

……何故ぼくが。

シリウスに負けるんだ。

ぼくはアルクに負ける?

何故?

最強の手を……。

最強の手なんか使ったら、一人だけハブになるだろ。

三竦みの仲でいようと言うのに、空気読めなすぎないか。

した。

それで、ハブられた。

なんてバカなんだ。

笑ったが。

チョキの係は、少し前までヴィクティニだった。

ヴィクティニはアルクの所へ行き、ジャンケンのチョキでアルクのパーをチョキチョキしていたが、ふと気付いた。

数で負けてる!と。

ピースの2

パーの5

そこでアルクは克つとは何かを知ったのさ。

ヴィクティニな。

可愛すぎた。

心がほどけたよ。

ヴィクティニは勝つと克つを常に追求している。

だから負不知なのさ。

まけしらず……。

これは抜いてはいけないな。

お前、この話を聞いて最強の手を使おうとした自分を恥じないのか。

これは感覚の問題じゃないぞ。

人間性の問題だ。

……恥。

よく分からないが、これは恥だ。

ぼくはグーに徹しよう。

ぼくには勝ってるだろ。

気にすんな。

それもそうか!

そうだな!

克ってる……。
やがてミニゲームコーナーを抜けると、ソフトクリーム売り場へと到着した。

メニューに静かに目を通す。

ミックス一択だが。
まるで同じだ。

うずまきソフトもミックスは大事に食べる。

……ミックスなんて邪道だと思っていたけど、ある日揃って食べたら美味しかったのでそれしか選ばなくなった。
揃って?

開拓精神が足りない。

それよりうずまきソフトだと?

あれを買っていたな、うますぎソフト。

感動した。

会えたのか?
会えなかった。

なんでかな。

全国区の筈だが。

見間違えがあったんじゃないか?

当然買ったが。

ケンブリッジ大学のナンタラカンタラ、という有名なブログ文章のな。

見間違えても仕方ない。

Typoglycemia

タイポグリセニアか。

この期に及んで、タイーポなんて言わないな。

タイーポか。

覚えやすいね。

ネタの発祥元が発祥元だし。

ひろゆきが書いたの?それ。

知らなかった。

たまたま見たんだ。

その時はひろゆき、なんて頭が良いんだと思ったが。

どこからの板からの拝借だったらしい。

ひろゆきは認識が鋭いが、2ch入り浸りのリア充なので常人よりは博識だ。

しかし最近は意見が偏り過ぎていて駄目だ。

老化現象だな。

2ch認識の限界を知った。

それは、5chがパイレーツコースト化したということ?
そうなるな。

右翼左翼のくだらん争いは兎も角、カキコの質も落ちているし、既に新鮮さは欠片もない。

最近は良いネタが見つからない。

オカ板で白隠禅師の名を拾ったくらいで。

5chで白隠禅師を知ったのか?

信じられない。

本当に知らなかったんだよ。

白隠禅師とは?

となってwikiで調べて、note記事を書きながら何となく仲良くなっていった。

あの記事はリアルの文通だ。

霊媒しながらリアル文通。

恐ろしい話だ。

リアル文通……。

このチャットも。

そうだ。

書いている人は、結婚相手と鬼ラインをして関係性を深めていった。

途方もない量のライン交換の末の結婚さ。

旦那はゲラゲラ笑っていた。

それで仲良くなった。

そんな事が。

羨ましくて仕方ない。

ゲラゲラ笑っただと?

ソフトSMとか。

当然、ぼくがSだ。

羨ましくて死にそうだった。
分かるよ。

しかしSなんだね。

普通はMだろう。

女がMをやると長持ちしないよ。

男が飽きると縁切りが発生しやすくなる。

それより早くアイスを買おうぜ。

お店の人が待っている。

いけない。

ミックス三つだな?

そうだな。
少し焦り気味に、ソフトクリームの注文を入れる。

出来上がりを待ちながら、期間限定の味のポップを眺めた。

巨峰味とか好きだが。
ここはマンゴー?

食べないな。

マンゴーは難しいな。

巨峰や抹茶なら食べる。

めっちゃ共感した。

安いマンゴー味は、甘味を足した辛子みたいな風味がするだろう。

マンゴーは好きだが、何でも良いという訳では無い。

甘みを足した。

分かる。

辛子の風味がするな。

元の植物とは別のものを使っている。

プリンに醤油でウニみたいなな。
プリンに醤油?

やったな。

全くウニではなかった。

これは平成初期のキッズネタだ。

分かる層と分からない層に分かれるらしい。

懐かしい。

やらなかった。

食べ物で遊んでは行けない。

ウニは嫌いだし。

ウニそのものも、味の格差が酷くて。

安いウニなんて食べられたものではないよ。

新鮮一番さ。

だよな。

ウニは高いのしか食べられないな。

やがてソフトクリームを受け取り、近くのベンチに座って食べた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

シールック

シリウス

アクルックス

シェル

スクナヒコナ

ミゾレ

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色