第18話

文字数 1,967文字

三人はゆるゆると歩き続け、やがてスターバックスへとたどり着いた。


適当にメニューを見る。

カスタマイズの呪文、忘れた。
クリーム多め?
あったんだけど。

生クリームを増やしてくれるやつ。

メモをしておいたんだけど。

普通にキャラマキでいいよ。
それもそうだな。

キャラマキにシナモンパウダーでも入れるか。

え?

シナモンなんて。

少しでいいんだが。

まあ、あまりしないよね。

本当は得意なんだけど、一人でやってもつまらない。

大勢で呪文を唱えるものだ。

スタバ店員はよく覚えられるなと思う。

余程のスタバ好きだろう。

なら、どうしても我慢出来ないことが。

あの絵は辞めて欲しい。

ムカつく。

え?

下手糞にあたったのかな?

結露にマジックペン、嫌いだ。
淹れてから書くのは駄目だね。

空の容器に書けという話で、そんな余裕がないなら最初から辞めるべきだ。

いや。

絵が濡れるのが嫌。

すぐに捨てるし。

なるほど。

勿体ない精神ね。

タンブラー買えば?

あまり来ないのに。
諦めろ。

所詮は店員の自己満だ。

スルーだよ。

無理だよ。
動体視力を鍛えろ。

楽しむのは一瞬だけ。

サッと見て、7割楽しめれば御の字だ。

7割。

分かった。

動体視力は良い方だ。

昔、バイクに乗っていた時に道路に十円玉が落ちているのを発見して、拾った経験がある。

時速50キロくらいだから出来たことだが。

どんな動体視力だよ!
無理だよな。

ぼくもびっくりした。

しかし、動体視力な。

分かった。

それや、あの。

昼間の話?

仕事帰りだったから日暮れだ。

ガソスタのライトで発見した。

何?

ガソスタの?

だから、有り得ないんだって。
シリウス、白い目で見られるよ。

超人じみていて。

知らん。
なんか、きっと銅の素粒子を感知して、とか言うんだと思うよ。

物理現象を超えている。

そうかな?

カービィ3の2面のイライールのミニゲーム、一度も外した事がない。

普通だと思っていた。

嘘だろ?

一番キツイやつだよ。

コックカワサキが一番キツイよ。
いや、コックカワサキは一番簡単だよ。
3面だろ、簡単なのは。
三人で組めば無双出来るね。

4面は役割分担で。

役割分担か。

分かるよ。

ぼくは赤だね。

青。
黄色か。
やがて注文の番が回ってきた為、全員キャメルマキアートのラージを注文した。


適当に空いている席に座る。

にいさん、瞬間記憶が得意なんじゃないか?

3面が得意なんて。

そうかもしれない。

面で捉えるから。

面でゴルドーを記憶するって?

まさか。

アルクは奥行きの記憶が得意そう。

音の違いを利き分けられる?

分かる?

歌が得意。

音を記憶するって?

難しいよ。

ラソファミファって覚えるけど。

絶対音感持ちなんだね。
知らなかった。

これは絶対音感なのか。

すぐに音階に直せるんだ。
音楽は嫌いとか言ってなかった?
いや、音楽教師にイライラして。

ムカつくんだよ、あの音痴。

気ままに歌いたい。

気ままとは?

メロディーに合わせて歌うだけだろ?

作曲してしまうんだ。

それで音痴に。

編曲と言った方が正しいかも。
作り変えるのか。

耳コピならそうだな。

耳コピ……。
その辺は無視だ。

少しくらい音階を外すのは普通だよ。

カラオケの採点はカスだ。

あれを気にしちゃいけない。

ぼくはもう何年も採点なんてしていないよ。

分かった。

採点は無視な。

楽になったよ。

ぼくも編曲はしょっちゅうだ。

月のしずくで92点を取って、それっきりだよ。

月のしずくって。
柴咲コウの?

嘘だろ?

何が?
難しいじゃないか。

ぼくもサザンで98がいいところだ。

声が出ているね。

上手いじゃん。

声の大きさは大きいよな。

100点は難しい。

何回も取っているが。

やはり音の奥行きの理解が得意なんだね。
なるほど。

だからか。

カラオケいきたいか?
アイスでしょ。
いや、歌も。
喉の為を思うなら、酒は駄目だ。

粘膜が焼けて喉が悪くなる。

治すには、酵素ドリンクだ。

まあ、パイナップルを食べておけば間違いない。

シリウスは声を気にしていたね。

なんで?

発声の基礎が出来ていなくて。

霊媒中はヴォイスチェンジが頻繁に起こるから、自分の声を忘れつつある。

基礎が?

遅いね。

このヒューマノイドは脂肪細胞の代謝が悪過ぎて、声が出ないんだよな。

だから諦めている。

どうしても小さい声しか出せない。

そやな。

分かるよ。

声が出ない。

にいさんの場合は、力任せだからだろう。

喉を開いて、ヒバリになったように歌うんだよ。

分かるかな?

美空ひばりじゃない。

アキハバラ電脳組の、花小金井ひばりだ。

え、なんなの?

その真似していいの?

いいよ。

甘ったるい感じに。

知らなかった。

いいのか、あれで。

ピッカッチュー!

が出来るようになる。

マジか!
本当だ。

出来た。

何故だ。

粘膜が癒着しているんだろう。

年齢と共に筋肉量が落ちるけど、前のジャイアンの声の人はずっと声が艷やかだった。

喉の癒着を取っているから。

泣きたくなる。

どうしてそんな事を……。

嗚呼。

本当に。

やがて、空になった紙コップをゴミ箱に捨てた。
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登場人物紹介

シールック

シリウス

アクルックス

シェル

スクナヒコナ

ミゾレ

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