第45話 ☆

文字数 2,497文字

運ばれてきた大型の土瓶と湯呑みに茶を注ぎ、思い思いのペースで啜ってから談話はスタートした。
カレカノ第一部のラストで、雪野は有馬に途方もない絶望を与えるね。

有馬とのイチャラブを遠回しに拒否しているせい。

これはカップル間ではかなりショックだろう。

そうだ。

酷いよ、雪野は。

イチャラブ宣言するくらいでないと。

イチャラブ宣言……。

して欲しい。

闇に捕まった、と有馬は表現しているが、見て見ぬふりをしている哀しみと向き合ったということで。

これは夏休みの初セックスの失敗の匂わせだ。

また際どいシーンを。

ドンピシャだ。

いやらしいよな。
いや、これは……。

アニメ版でも勘違いされていたが、この喘ぎ声は雪野でない可能性もあって。

え?

有馬なの?

そりゃ、気持ちは分かるが。

まさか!

現れるぞ!

エロ厨が!

手は雪野だけど。

有馬は堪らず声を出した。

そのくらい言うよな、男なら。

童貞だったなら尚更。

しかし雪野は……。

17時頃にベッドインと想定して、19時とは?

実に2時間しか行為を行っていない。 

もしくはそれ以下だ。

眠ってしまったようだし。

本当に挿入出来たのか?

処女なら無理だよ。

血塗れにすれば何とかなるが。

ベッドを汚したくはないだろうから、無理矢理にはしないだろうよ。

……嬉しすぎて。

本当にシリウスは。

こういうので男は喜ぶ。

分かっていないよ、シリウスは。

処女だと、破瓜の後は興奮して眠りになどつけない。

ドキドキするし。

こんなに図太く眠りにつくなんて、有り得ないんだよ。

ヤリマンでない限りは。

破瓜のあとは興奮して?

性的に?

いや、性欲は去っている。

カタルシスの一種さ。

やっちゃったな、とか。

相手はどうかな、とか。

考える事は山程ある。

脳が冴えて、眠ってなんかいられないよ。

カタルシスだと?

そんな事を考えるのか?

なんだ、雪野は?

なんて図太さだ。

やはり慣れているのか……。

慣れていた。

そう考えないとおかしい。

確かに。

やはり株の事もあるし、売春していたんだと思う。

家が貧しい故に色々気にして……。

夏休みは暇になったと言っているが、有馬と付き合い始めて取り敢えずのケジメは付けたようだが。

有馬は気絶したのか。

よくあることだ、童貞には。

眠くなる。

ショック過ぎて駄目だ。

雪野は汚いおっさんに抱かれまくったのか。

そうなるね。

株券も、貰ったか……もしくは嘘で、売春の売上を言っているのか。

ラブホで2時間の休憩は何もできないだろう。

幾ら有馬が高校生で陰茎の成長が不十分だとしても。

やはり緩かったんだろう。

エロすぎて。

シリウスは恥ずかしくないのか、こういう事を。

成長とか!

別に。
なんて奴だ。

死にそう……。

行為は成功したが、この後有馬は壊れた。

一体何があったのか。

性交が成功とは言わないんだな。
ちょっと我慢したよ。

笑えないんだ。

有馬は取り敢えず落ち着いたように見えるが、何故か心の距離を気にしている。

普通、セックスしたら浮かれきって彼女を独占するだろう。

これまでにも増して。

それなのに、埋めようもないものを勘付いてしまった、なんて変だ。

虐待とか関係なく。

……浮かれきって!

経験あるな。

雪野は有馬を裏切った?

何か言ったのかもしれない。

早漏だとか。

イキ顔をおちょくったりとか。

ぎこちなさに渋い顔をしたり。

辞めて!

絶望するから!

本当に!

それは壊れる。

辞めろ、本当に。

心が死ぬ。

それか。

納得した。

あんなに有馬が病むなんて。

しかし有馬は雪野を切れず、ズルズルと関係を続けてしまった。

お互いの両親に会った手前、別れられなかったんだと思う。

良い家だから尚更ね。

それで自分の生い立ち、これも闇が深いが、振り返りが必要になった、と。

母親が最低なので、女性そのものに不信感が募る。

これは当たり前だろうな。

なるほど。

そう思って読むと、雪野はとんでもない勘違い女だ。

何が譲ってあげないの、だ。

酷い言葉に聞こえる。

ずっと苦しめ続ける宣言か?

そうなるね。

The end だ。

立ち直りかけた頃に、雪野は私のせい、とか言って泣いていたが、有馬が絶望した理由にカスッてもいなかった。

闇を見せてごめんなさい、と言うが、それは虐待からのトラウマの解放についてのみで、自分の本当の意味での失態を自覚していない。

自分の頭脳は金になる宣言をしているのでガメついし、有馬を手放さない為の虚言にも見えてくる。

総一郎の進学のお金を、即自分に渡すように名乗り出るし。

違和感はないな。

泣けてきた。

そんな話だったなんて。

暗いけど……そうに読むと面白い。

ギャグは追うごとに寒くなるし。

そう。

彼氏彼女の事情。

実は男女間のあるある話だったかもね、という。

そうでなくても、男は基本処女厨だ。

雪野の実情を知ったら絶望するだろうよ。

無理矢理繋いだけど、やはり幸せにはなれなくて。

実情……。

まさか……そういう事はあるあるなのか。

しわがれたような気分になる。

けっこうあるよ。

書いている人が現役だった頃はわりと普通だった。

堕ろす人も少なくなく。

堕胎……。

お前、堕胎のやり方を書いていたな。

感謝されているぞ。

残酷なようだが仕方ない。

望まれない子を育てるのはキツイし。

高確率で虐待が起こるし。

当たり前なようで酷い。

クラクラする。

クラクラするよな。

男女間の諍いの原因だ。

お前は、どうなんだ。

堕ろしたのか?

そんな訳ないだろ。

長男が初めての妊娠だよ!

黄体ホルモンが馴染んでいなくて、悪阻で死にそうになった。

悪阻の重さは目安になるよ。

本当に死にかけていたな。

歩くのも困難だった。

2人目はそうでもなかったが。

悪阻で判断するだと?

ああ、もう駄目だ。

分かった。

ありがとう。

フラフラで死にそうになっているのに、母親に悪阻の重さをなじられたが。

母親は流れたとはいえ、4回目だったからな。

全く、酷い人だと絶望したよ。

4回目?

何も信じられなくなるな。

アカシックレコードに全て記載されているよ。

アカシックタトゥーになりそうだが。

アカシックタトゥーだと?

また新語を……。

……確認したら、7回目だとよ。

死にそうになった。

死産や流産なら仕方ないけど、堕胎はな。

いや、托卵もしないけど。

托卵だと?

もう駄目だ。

死んだ。

恐るべし二次平面セッション。
お茶は、冷めきっていた。
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登場人物紹介

シールック

シリウス

アクルックス

シェル

スクナヒコナ

ミゾレ

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