第48話

文字数 2,221文字

なあ、もうひとっ風呂浴びてこないか?

なんか勿体ない気がする。

そうだな。

何回でも入り放題だ。

また休めばいいし。
テーブルの上を軽く片付け、備え付きの台拭きで拭くと、三人はゾロゾロと大浴場へと向かった。


素早く服を脱ぎ、マメに交換されたバスマットを踏みながら浴室の扉を開ける。

サウナだ。

今度こそ。

かけ湯をしてからかな。
仕上がりは最高なんだ。
かけ湯をし、三人は当然のようにサウナ室の扉を開け、ムッとするような熱気の中に入っていく。
こういう本格的なサウナしか認めない。

スチームのは寒くて駄目だ。

スチームサウナ?

知らない。

どんなだ。

湯気のサウナさ。

身体の芯まで温めるというが、まるで低温浴と言った感じで。

寒い上にスチームに建材の匂いが混じっていたりして、体調が悪くなりそうだったよ。

低温浴?

37度の湯?

あれは駄目だ。

冷えるだけ。

あれで芯まで温まる人は相当の低体温だ。

だよな。

美容に良いとかで試したが、風邪をひいただけだった。

寒くて意味がないよ。

にいさんは美容に興味があるんだな。

妙に食いつきがいいじゃないか。

きみのnoteは参考にさせて貰った。

本当に効いたぞ。

凄く良かった。

そうか。

良かった。

何となく書いただけなんだがな。

あれを何となくだと?

喜ばれているぞ、かなり!

元々健康マニアだし。

真の美容は健康の上に初めて成り立つもの、と言う信念をずっと掲げていて。

そんな事ってあるか!

お前は健康じゃなきゃ動けなくて。

その為かと思っていた。

それはあるけど。

一応は一旦は不健康ロードを辿って、そこからの改善を狙った。

中々挽回は難しい。

不健康ロード?

どんなだ?

大した事ない。

元々、微妙に健康に気を使う家で。

それでも身体が弱くて。

例えば添加物を摂りすぎると女性器が腫れる事を突き止めたが、これは赤色102号による炎症であるとまでは分からなかった。

中途半端にも中途半端。

赤色102号で女性器が?

男性器は?

前立腺が腫れやすくなるよ。

男女共に性器に代謝物が溜まりやすくなるらしい。

排尿時の軌道がおかしくなるね。

辞めると元に戻るよ。

軌道……。

そこまで見たのか。

和式を使用すると顕著に分かる。

良くないよ。

駄菓子や化粧品は危険だ。

和式?

排尿の軌道?

いやらしいな!

そうは言っても事実だし。

そのくらいは認識出来ないと。

どう分かるというんだ?
真っ直ぐにでない。

カーブする。

残念な事になる。

男性もたまにあるだろう。

あさがおから外れること。

洋式だと悲惨な事に。

……!

曲がる!

分かるぞ!

この間のさくらんぼ飴の後!

気を付けるよ。

リアルに買って食べるとは思わなかった。

申し訳ない。

本当に買って食べたらしい。

みぞれ飴も。

美味しいとか言ってて。

飴を?

買ってまで食べる?

何?

買わないのか?

信じられない。

小梅ちゃんしか買わないんだ。

すまんな。

小梅ちゃんだと……。

最近見ないな。

しかし、それなら大丈夫なんだな?

大丈夫だと思う。

あれは何度食べても美味しい。

飴を頬の端に入れて笑うと痛くなるよね。

大粒だと特に。

笑った。

あるある。

なんて面白い事を言うんだ。

本当に女の子なのか?

そうだが。

いや、これは家族間での鉄板ネタで。

なんて羨ましい家族!

そういう家庭に!

いや、お前が妹に!

にいさんの妹?

襲いかかってくるから嫌だ。

飛鳥時代にそれで孕まされた。

飛鳥時代……。
後の推古天皇である。
何?

なんだその嬉しい話は!

そういう事もあったってよ。

色々な。

ソウルメイトの仲なので。

ソウルメイト……。

そんな理由で。

特に珍しい話ではない。
推古天皇の父がか!
滅多になさそうだけど、婚姻と出産はソウルメイト間ではパートナーをとっかえひっかえは普通さ。

シールックはシリウスを酷く虐めて、無理矢理そういう関係に貶めたよ。

圧が凄くて。

仕方なく折れた。

虐めなんて……。

圧はかけるが。

そうだね。

大体みんな折れるよ。

そうやって仕事も選んで来たんだよね?

それはそうだが。

何故わかる?

おい!

マジかよ!

自分を謙虚そのものだと思っているのだろう。

全くにいさんは。

なるほど。

そういう感じがする。

そんな。

謙虚に、した。

そろそろ上がるか?

水風呂に行こう。

えっ!

寒いよ!

何の為にサウナにいるんだ!

全く!

勿体ないな!

シリウスとアルクがサウナから出るのを、シールックは暫く考えた後に追いかけた。


外に出ると、既に二人は水風呂に浸かっている。

寒くないのか?
交互浴の上位互換だぞ。

血行を良くするから、冷えが取れる。

何も知らないんだな。

それでその美肌。

一体何者だ。

美肌……。

血行を上げるのか。

入ろう。

恐る恐るシールックが入るのを見て、アルクは彼の腕を掴むと一気に浴槽に放り込んだ。


慌てたシールックは、すぐに罵倒をあげる。

何をする!
こんな初歩的な手に引っかかるなよ。
全く、詰めが甘い。
初歩的だと?

この男のノリを理解出来るのか?

たまに、ぼくの中の少年が目覚めるんだ。

頭から抑えて沈めるなんてことも、調子に乗りすぎたらしそう。

今はしないが。

……!

こいつ、男だ!

それはしたいけど我慢だ。

危ないので。

ふう。

かじかんだ後にサウナに入ると、筋肉がジンジンして気持ちいいんだよな。

またサウナに行くか。

自律神経を壊すやつか。

やろうかな。

何?

自律神経が?

気をつけよ。

チクチクするならいいんだけどな。

毛細血管が再生して。

そうすると寿命が延びる。

もう辞めとけよ。

本当の事を言うのは。

二人は水風呂から上がると、銀の湯へと向かった。

シールックは戸惑いながらも彼らの後に続く。

本当にチクチクする。

これが効くんだな。

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登場人物紹介

シールック

シリウス

アクルックス

シェル

スクナヒコナ

ミゾレ

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