第1話

文字数 2,158文字

人は死んだら仏になります。



そうして波羅蜜浄土という極楽の地へ辿り着き、そこで思うがままに自由に過ごすのです。


今回は、その地で呑気に遊ぶ生活について少々……。



舞台は、某喫茶店からスタートします。

シールックにいさんは、おどろおどろしい雰囲気が好きだったのか。

知らなかった。

おどろおどろしい?

どこが?

ガイコツとかが?

おどろおどろしいだろ……。

禍々しいとすら感じる。

まるでハロウィンの内装のような喫茶店を見渡し、シリウスとアクルックスは溜息を吐いた。
やはり反転か。
どうしてこういうのが好きになれるのか。

ドトールとかでも良かったじゃん。

何がおかしいんだ?

いいじゃないか。

こういう所、邪悪だよね。

電通本社の床のデザインとかも、もしかして?

有りだと思っているよ。
敢えて選ばないやつ。

センスないんじゃない?

なんで!

楽しいだろう!

まあ、なあ。

本人ビジュアル的に、なんか好きそうな感じもするけど。

イケって感じの。

知っているのか。

そう思う?

よくいる陽キャっぽい。

それで、奇を衒った趣味をたまに見せてカックイーとか思われてそうな。

当たりだよ。

喜ばれる。

サプライズだと思われているよ。

実際、そう思った。

趣向を変えたのかな?と。

サプライズ?

普通に趣味だが。

変なの。

狙ってないのか。

狙うとか分からない。

ただ、好きな物を。

変なやつ。
逆にお前らはどうなんだよ。
オシャンな居酒屋とか。

王道を狙う。

アジアン系で攻める。
アルク、実はそれドン引きされるやつ。

敢えて人間関係のふるい分けをしているの?

そんなつもりはないが、確かに変な奴は寄ってこなくなるな。
オシャンな居酒屋なんて、何が楽しいんだ。
自分を楽しませる為に行くんじゃないんだよ。

接待の一環。

よく知らない人にはライトもライトな場所でアイスブレイクを狙って、親密度を上げる努力をしてみるんだよ。

そうして本当に仲良くなった人と、自分の少しお気に入りの、楽しいと思う場所に連れて行く。

長い目で見ているだけ。

なんだと?

そんな戦略が。

分かった。

試してみる。

そんな事も思い至らないのかよ。

天然かよ。

確かに、ちょっと風変わりな場所に連れて行くと、実は密かにドン引きされて人間関係の間引きが出来るけどね。

ビジネスや友好関係で、趣味趣向って実は合致しないから。

ぼくはアルクがアジアン好きと聞いて、最初少し抵抗があった。

しかしぼくはこだわらない性格で、しかも何でも喜んで食べるタチなので難なく受け入れた。

これは一見普通に見えて、全く普通ではない。

マイノリティ、少数派だよ。

そうなのか。

いや、アジアンに抵抗があるのは分かるよ。

ベトナム料理とか、自分からは食べに行かないから。

美味いけど。
食べれば美味い。

ヘルシーで健康的。

しかし、日本風の味付けと少しズレがある。

新規開拓精神がないと、情報量に打ち負けて相手のキャパシティが不足する恐れがある。

そうすると、談話どころじゃなくなるよ。

話題作りにはなるだろうが。

博識だなあ。

占い師みたい。

趣味で占いはしているけど、金を取るつもりはない。

占い師として活躍するなら、カウンセラーの資格を取るよ。

真面目だけど、考えれば当たり前な事だ。
いいなあ。

そういうしっかりした人。

きみに感化されて占い師を試したけど、酷いもんだった。

界隈全体、碌なもんじゃないと言った筈だが?

接待する側に立てない人が多い。

される側が圧倒的多数なんだ。

占い師が接待される側って?
くだらんのだよ、タロットとか。

個人的に読んでみたけど、要素が足りな過ぎて。

つまり、当たらんの。

しかしカード占いをしたいと言う気持ちだけで占い業に手を出す人がいる。

おかしな事に、義も何もなく業務にあたっていると、サービス提供の筈が客に遊んでもらっているだけになる。

相手にお金を払わせて、且つ機嫌を取って貰っているの、彼らは。

こういうのを罪深いと思えないと、占いそのものが出来ないよ。

感動した。

きみにセッションを頼みたい。

してるやん。
めっちゃしてるよ。
分からなかった。

自然過ぎて。

コールドリーディングって言うんだけど。

自然な流れで相手から情報を引き出す手法ね。

こういう言い方をすると相手に失礼になるとして、コールドリーディングそのものが忌避されている。

しかし雑談からしか相手との相互理解は叶わんのだよ。

理解なくして、何が占いだと思うんだけど。

不思議。

これで自分が普通の平凡だと思っているんだよ。

自分くらいの程度は掃いて捨てる程いる、と。

分からない。

非凡だと思う。

……。

いつもそう。

このくらいって思うんだが。

理想が高すぎるのでは?
もっと難しい言葉を使って話すとか?

それは考えるけど。

それはアパッチ効果とも言って。

膜の勢いと共に相手にアピールする手法ね。

分かりやすく、噛み砕いて話すせいか。

なるほど。

そういう人は、あまりいないな。

カッチリ系で理論を言いたいの?

それじゃ誰も理解出来ないよ。

それはあるけど、でもやはり形式とか。

格式張った展開は必要だと思うんだ。

易しい言葉で話すだけだと、ナメてくる輩が多過ぎて。

自他境界線の崩壊が起きるのが腹立つ。

自他境界線がそこで崩壊する?
するよ。

理解した途端に、相手を見下し始める輩。

カタルシスの快感と共に煽ってくるんだけど。

そういう勢いだけで生きているような奴は心底嫌いで。

宇宙が腐り果てるわけだよな。
談話は続く。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

シールック

シリウス

アクルックス

シェル

スクナヒコナ

ミゾレ

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色