第38話

文字数 2,144文字

たこ焼きを頬張りながら、話は弾む。
鰹節が踊っている。

贅沢だな。

分かるよ。

こういうところのは大体冷凍だよね。

こんなに熱々が来るなんて。

コストガン無視だな。
マヨネーズは邪道かそうでないか。

何故こんな事が議論にあがるのだろう。

わかりみが深い。

かかってようがかかってまいが、食べるだけだやな。

紅生姜が生地に練り込まれているかどうかの方が重要だ。
紅生姜なくしてたこ焼きは有り得ない。

その通りだ。

しかし、世の中には生姜嫌いなる層が存在するらしい。

偏食は人生損していると、本気で思ったよ。

紅生姜嫌い?

どんな輩だ。

父がそうだった。

生姜への嫌悪っぷりは異常で。

不健康そうな人だった。

あんなに嫌う事なかったよな。

辛いのが嫌いな訳でもないのに。

つまりアレルギーなのかも。

アレルギーな。

ぼくはこんにゃくアレルギーの気がある。

こんにゃくを食べると頭痛が出る。

何がそうさせるかの分析を続け、水酸化カリウムが原因であることを突き止めた。

ダイオフ、体内細菌叢が死滅する際に発生する毒素により、これはアルカロイド系の代謝物なのだが。

これで腎臓にダメージを受けていたらしいんだな。

どうしてそこまで分析が出来るんだ。

どう見ても医師だろう。

ここまでくると、臨床検査技師レベルだよ。
臨床な。

臨床は好きだよ。

何度もやった。

人に会わずに済むし。

臨床という言葉自体、初めて聞いたぞ。

どんな仕事を……。

主に検査項目の数値を導き出す人、とでも。

それを元に医師は病状を判断する。

臨床系は研究者だね。

外注に出す病院も多い。

院内お抱えは引っ張りだこ。

多忙だが、無理矢理定時で帰る。

外注?

検査か。

検査結果を専門機関に持っていって、それで流れ作業で分析にあたる。

スピッツの状態次第で結果は幾らでも変わるので推奨しないが。

午前中に出して夕方に返ってくる結果なんて信用置けないよ。

スピッツとは。
試験管のこと。

血液などを溜める。

白い粒が入っているが、実は良くない。

しかし分離するので仕方ない。

新鮮一番という訳にもいかないし。

新鮮一番という言葉を使う事にびっくりだよ。
新鮮一番?

血液の?

吸血鬼かよ。

採血は毎日やっても意味がないと思っているが、流れ作業で行われている。

そのせいで、病院は検査で稼ぐとか言われるし実際その通りなのだが、検査で稼がないと病院そのものが潰れてしまう。

案外経営はカツカツなんだよ。

いざ病院にかかりたい時に潰れてました、なんて事になったら目も当てられない。

少しは見逃してやれ、と思う。

看護師の生活もあるし。

実は救済策だよ。

しかし注射痕でボコボコになった腕を見ると切なくなるよ。

疑われるし。

ピストンって、注射のことか。

一体何かと。

何?

下々の文化について疎いんだな。

覚醒剤の血管注射。

これが出来るのは看護師か、医師か……。

一般人は、頑張っても筋肉注射になるから。

看護師だろうなあ。

ヤンキー出身が多くて。

まさか。

そんなに血管注射って難しいのか?

いつもの採血を思い出してみろよ。

チューブで縛ってアルコールで拭いて、失敗したらグリグリして。

一苦労だろう?

グリグリする奴は下手だが。

グリグリしても意味ないのにな。

すぐに抜いて、穿刺し直し。

つまりその程度の頭脳しか持たない看護師が多過ぎるということ。

昔、看護師が認知症予防に抑肝散を飲もうかな?とか話しているのを聞いて愕然とした。

薬効などの一切をガン無視しているので。

そして抑肝散に予防効果はない。

暴れる認知症患者に、気休めに処方されるだけだ。

??

難しくて、分からない。

抑肝散とは?

知らないのか。

抑肝散陳皮半夏。

肝臓に効く漢方薬。

疳の虫に効くというが、実際は腎機能を僅かに蘇らせるだけだ。

にいさんは飲むといいよ。

普通に薬局に売ってるから。

なるほど。

よくかんさん?

探してみるか。

メンタルには効かないよ。

暴れる認知症患者に抑肝散が処方されるせいで、逆に元気になって余計に暴れるわ徘徊するわの悪循環。

認知症になったら、全てを諦めて死は幸いなりを発動し、メマリーを大量に盛った方が幸福次元への扉が開く。

ジェネリックじゃ駄目だ。

先発で。

お前、お気に入りの患者に医者にメマリーを処方するように進言していたな。

死んだ方がマシだという念を受け取って。

そのおかげで眠るように他界した。

次のベッドの人も落ち着いて。

これだから福祉は辛いんだよ。

常に死と隣り合わせだから。

いや、あの人はニックだったから。

全く抵抗なく。

ニック?

シリウスはニックと、仲良しなのか?

反核質だが。

アイツとの関係性は、性は完全抜きで色々と敷居が低くて。

抵抗がない。

シリウスは闇のパピヨンだったな。

その設定で?

そうだが。

闇のパピヨンなあ。

冗談で書いただけなのに、定着してしまったな。
……医療の話は重すぎる。

しかし、アルクもよくそんなに詳しく……。

一体読解力はどこから。

……お前は何を見て。

いや、なんでもない。

元アーネトルネという設定を忘れているのか。

瞬時に解脱できるし。

アーネトルネ?

同じ?

進化系。
魔王だが。

ちょっと陰かな。

……忘れてた。

コイツ……。

シールックは間髪入れずにアクルックスの拳を喰らい、その場に倒れ込んだ。

これはお決まりの鉄板コミュニケーションの一つである。


シリウスは小さく笑うと、たこ焼きの皿を片付けてから今度は明石焼きを頼むことにした。

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登場人物紹介

シールック

シリウス

アクルックス

シェル

スクナヒコナ

ミゾレ

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