第50話

文字数 1,074文字

 今朝の夢。

 世界で住みやすい国1位はアイスランドと聞いたけれど、それを抜いて快適1位になった、架空の国に来ている。丘から見下ろすとうっすらと明るく、だんだん畑のような地形が続いている。

 私は透きとおった石英の砂を拾ってきていて、こぼしてしまい、いっしょに拾ってくれるよう弟に頼んで、ふたりで鉢にきれいにおさめる。でも弟は幼すぎて、おさめかたがいろいろだめなので、私がこっそり直す。
 右手しか使ってはいけないらしい。

 その砂の鉢を持って、丘の上でピクニック。
 大きなスクリーンがあり、皆がそれぞれ持参した鉢の砂に書きこまれた言葉が、拡大して映し出される。どれも、驚くほど薄っぺらな人生訓。明日の百より今日の五十、のような。

 あきれて眺めていると、土地の名士らしい白人の紳士に話しかけられる。君は昼間どこそこにいたろう、など、いろいろ。私、ドイツ語で答えようとして、あまりにできないので英語にしようとして、どっちもどっち。
 
 しどろもどろのやりとりの最後に紳士の名前をたずねると、苗字を言わないので、聞き返すとほほえんで「知らないの?」と。その国を開拓した創始者の直系の一族の、当主様だった。
 スコットランドのキルトのような民族衣装を着ている。

 突然、その一族のパーティの会場になる。
 天井の高い豪華な館。鉢を持ってうろうろする私。

 そのうち、私自身がその一族の娘になる。

 私は音大生で、好きな楽器を習っていいと言われていて、トランペットを習いたいのだけれども、練習する部屋がない。
 あきらめて、エレベーターの横の小部屋に入ると、そこに集まっていた家族らしき人々に歓迎される——ひととおり。

 名家だけに、家族どうしのあいさつも、冷え冷えしたものだ。私のような娘がいることなど、誰もが忘れていたらしい。

 たまらなくなって部屋のすみに行き、ペットの黒いなめらかな毛皮の生き物(カワウソ?)を抱きしめると、きゅっと泣いて、おもらしされる。

 着替えがない。
 家族の誰かから借りられないか考える。
 ラックにかけられたたくさんの服。私の服はない。

 それでも、その黒いカワウソが愛しくてたまらず、濡れた服のままその子を抱いて、いそがしげに行きかう人のあいだに、私はぽつんと立っている。


※トランペットを習ったことはないし、習いたいと思ったこともありません。ただ、高校の同学年で、トランペットのすばらしく上手な男の子がいました。
物静かできれいな目と手をしていた彼は、若くして亡くなりました。
そのせいか、ときどき、トランペットの音に、天国との近さを感じることがあります。

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