第35話

文字数 922文字

 今朝の夢。
 ミヤザキさんがイタリア映画に出てくるような素敵な部屋を借りている。キングサイズのベッドがあって、私は風邪を引いているらしくそこで寝かせてもらっていて、ヒロキさん(ミヤザキさんの弟さん)がお見舞いに来てくれている。

 三人で話していると、ミヤザキさんに電話がかかってくる。
 ミヤザキさんはきゅうに深刻な顔つきになって、小声で電話と話しだす。

 管理費の四十万円のうち二十万円を掃除のおばさん二人が持ち逃げして、あとの半額をとりあえずミヤザキさんがあずかっているらしい。
 小声なのに丸聞こえ。(夢だから。)

 そこへ玄関の呼び鈴が鳴るから、私は怖くなって、とび起きて走っていってドアチェーンをかけようとする。さっきまで豪華な部屋だったはずなのに、きゅうに安アパートの玄関。
 ドアの外の男の人が必死に「管理会社の者です」と叫ぶ。
 ミヤザキさんがその人を入れてあげて、深刻な話を始める。

 ヒロキさんと私は外すことにする。
 私はキングサイズの掛け布団を引きずったまま表の道路に出てしまって、はずかしい。

 みぞれがちょっと降っている。
 暗い空から半透明の粒が、落ちてきては溶ける。

 私は自分が引きずってきたお布団が濡れてしまって気にしていたら、ヒロキさんが「一階のソファもあるし大丈夫」と言ってくれて、ふりかえると、

 さっきの部屋はまた広いマンションになっていて、今度は二階と一階がぜんぶミヤザキさんのもの。
 一階部分の広いお部屋にこうこうと灯りがともっているのが外から見えて、私は思わず「ここでサラの稽古できるね!」と叫んでしまって、

 そのとたん、ヒロキさんも私も、ミヤザキさんはもちろんそのつもりでここを借りたので、たぶん、じゃなく、まちがいなく、すごく無理をしているということに同時に気づいてしまって、

 ヒロキさんが「兄貴ここ(家賃)いくらなんだろう?」とつぶやくから、
 私はいそいで「大丈夫わたしもお家賃入れる」と言って、

 奥のモダンなキッチンでミヤザキさんが何かお夜食を作ってくれようとしてるのが見えて、
 私はもうお布団も引きずっていず、パジャマでもないので、ほっとして、

 ちょっと泣きそうになりながら、ヒロキさんと灯りの中へ入っていく。

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