第10話

文字数 654文字

 このごろまた、《レーゲンスブルク》に帰らなきゃ、と思う夢を、よく見る。

 以前、本当にレーゲンスブルク(南ドイツ)に住んで、東京と往復していたとき、東京に帰るときは「東京に《帰る》」と思い、レーゲンスブルクに戻るときも「レーゲンスに《帰る》」と思っていた。
 帰国してからも、ときどき夢に《レーゲンスブルク》が出てくるのだけど、本物のレーゲンスブルクと似ているときと、ぜんぜん似ていないときがある。

 今回の《レーゲンス》は、大きな温水プールだった。

 自由に歩きまわって泳いでいいのだけれど、とにかく人で混んでいて、お昼ごはんは配給でぶどうパンをもらうのだ。
 私はもらいそこねて、ぼーっとしていたら、親切な白人のおばさん(知らないけど)が、私たちはこんなに集めましたよーと言って、ぶどうパンどころかいろいろな果物をのせた豪華なパンを、それはたくさん見せてくれる。

 どこからこんなパンを? と、なんだか釈然としないけれど、もうそろそろ飛行機に乗らなきゃなのだし、ありがたくいただくことにして、

 まず、足をすすぐ。

 すすいで顔をあげたら、いきなりバーゲンセール会場に来ていて、ワゴンにパステルカラーのジャケットが山積みになっている。
 バーゲンだから、デザインもサイズもちょっとずつ合わない。

 真澄さんが横にいて、「そんなのよしなよ」と言ってくれて、そうだそうだいまからこんなの買ってもスーツケースに入らないし、やめた、

 と思ったところで目がさめた。

 けっきょくジャケットも菓子パンもなし。
 それでよかったのだと思う。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み