第5話

文字数 638文字

 うとうとして、またへんな夢。

 私、母の言いつけで、お城を返してくれるよう、竹中半兵衛に頼みに行く。
 甲冑姿の半兵衛が出てきて返してくれる。半兵衛は猫。きじとら。

 お城の中は工事中で、トイレもすっかり掘り返されていて、わらの混じった赤土がむき出しで、ガラスの破片も散らばっている。母は朝食を作っているらしい。
 私、棚にタオルが、お店のように美しくそろえて積まれているのを、ずり落ちないように並べ替えようとするけれど、棚が手前にひどくかたむいていて無理。そしてタオルがいつのまにか私の新旧のパンツになってる。古いのが手前で新しいのが奥。どんどんずり落ちてくる。
 はずかしい。

 今日はサラの本番の日で、気の早いお客さまがもう四、五人来て座って、ミヤザキさんと楽しくお話ししている。
 私、ふと、まだ台本を書いてないことに気づいて青くなる。
 だけど、私以外の誰もそれに気づいていない(ミヤザキさんも、ピアニストのフブキくんも)。

 私は一人でこっそりパニック。トイレに隠れて台本を書こうとするけれど、どの個室も合戦のせいで床が掘り返されているから使えない。
 赤土とガラス。
 母の呼ぶ声。

 私、うつむいて、だけどこれはおかしい、誰も気づいてないなんておかしい、この夢から覚めることはあるんだろうか? この夢から覚めるにはどうしたらいいんだろうか、と考えて、考えて、

 ふと体の向きを変えたら、夢から出て現実のベッドの上にいた。

 訂正。
 竹中半兵衛は猫じゃなくて、トビハゼだったかもしれない。

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