第73話
文字数 451文字
夢でお茶の水にいる、のだけど、何か木造の、古いガラスの嵌まった戸のある、小さな工場とも商店ともつかない建物で、私はちょうど、仕事を上がるところらしい。
ほとんど空のガラスケースの棚から、小さな丸筒に入った、たぶん駄菓子、細長くて薄茶色で、ニッキの匂いのする何かを一本取って、買って帰ろうとしている。やっぱり商店のようだ。
ところが、そのお菓子は百五十円なのに、私、細かいお金がない。
しかも、私の前のお客もおつりをもらいたがっていて、ひともめする。
私は、詐欺ではない、本当に細かいのがなくて五千円札しかないのですとけんめいに言い、その顔と口調にほだされたらしい帳場のおじさん(誰)から、ぶじ、駄菓子を受けとる。
背後からそのおじさんの声か、それとも自分の内面の声か、
「少しなまりがある」
と言っていて、
何のなまりか考えながら、下りていく坂が神保町の富士見坂だから、やっぱりお茶の水だった。
そして今日、現実に、神保町富士見坂の古瀬戸珈琲に行ったとき、財布を開いたら本当に五千円札しかなくて、驚いた。
ほとんど空のガラスケースの棚から、小さな丸筒に入った、たぶん駄菓子、細長くて薄茶色で、ニッキの匂いのする何かを一本取って、買って帰ろうとしている。やっぱり商店のようだ。
ところが、そのお菓子は百五十円なのに、私、細かいお金がない。
しかも、私の前のお客もおつりをもらいたがっていて、ひともめする。
私は、詐欺ではない、本当に細かいのがなくて五千円札しかないのですとけんめいに言い、その顔と口調にほだされたらしい帳場のおじさん(誰)から、ぶじ、駄菓子を受けとる。
背後からそのおじさんの声か、それとも自分の内面の声か、
「少しなまりがある」
と言っていて、
何のなまりか考えながら、下りていく坂が神保町の富士見坂だから、やっぱりお茶の水だった。
そして今日、現実に、神保町富士見坂の古瀬戸珈琲に行ったとき、財布を開いたら本当に五千円札しかなくて、驚いた。