第88話
文字数 220文字
かばんを、平たい、男性が使うような革の通勤かばんを拭いていた、実家のダイニング、古いテレビの前で。一面ずつていねいに拭きあげて、そのあと靴も拭いていた、これは私のいつもの冬の黒いショートブーツ。
でも、そういう夢ではなかったのだ。
これでは、食事をして、箸置きしか覚えていないようなものだ。
電車に乗っていた。和服のはぎれからスカーフを作る、そんな番組が、無音で車内のスクリーンに流れていた。
これもちがう。
そういう夢ではなかったのだ。
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