28. 死の道
文字数 1,607文字
ここは
陽はずいぶんと西へ
視界は良くない。矢の襲撃にはあわずに済みそうだ・・・と、レッドはせめて思った。
大雨の日以来何事もなく来ることができ、今、国境を目前にしている彼らであっても、その意識の中に、このままスッとそこを越えられるという期待や安心感は、
前方にある左右の丘の上に、黒い
「また別の待ち伏せ組か。」
ライアンがいまいましげに舌打ちした。
「この状況じゃあ、
そう言うルーサーの声は
「大胆で
ジョーイも、言葉のわりには恐れもせず口にした。
「だが戦力を二人取られるぞ。」と、ザイルは、
レッドは、これまで駕籠を担いでくれていたその二人を交代させることにした。そして隊員たちを見回して、中でも特に身ごなしに無駄がなく、
「ジェイクとロイ、交代してやってくれ。頼むぞ、いざという時には戦いながら走ってくれ。」
「
ジェイクが呆れたように言った。
「どこまで無茶させる気だよ、リーダー。」と、ロイもわざとらしく肩を落としてみせる。
が、そこで二人は目を見合うと、こう声をそろえた。
「臨むところだ。」
「この戦場において隊長の判断は絶対だ。必要なら、俺たちは何でも従う。」
そう続けたのはデュランだったが、隊員はみな一斉にうなずいた。
同じように微笑み返したレッドは、とうとう地面にシャナイアを下ろした。
「やり切れよ、最後まで。」
「最後まで・・・。」
強くうなずいてみせたシャナイアに、レッドも目を見てうなずき返した。
「正念場だ、突っ切るぞ。三人は後ろにつけ。」
イリスとモイラをまとめながら、シャナイアは言われた通りに移動する。
駕籠の
逃げ場はない。策もない。
今、堂々と姿を現している敵は、恐らく出番を待ってここに何日も張り込んでいた予備軍。スフィニアの王女を仕留められなかったのだと理解して、この最後のアタックに、余るほど力を蓄えたそれらもまた、直球でぶつかってくるだろう。
そこは、もはや死の道。
「一つ、いいか。」
ホークが言った。
「なんだ、この非常時に。」と、グリード。
ホークは、
「最高のチームだった。」
その言葉が、隊員たちの心をとらえた。それはカウンターのようにグッと胸に食い込んできて、臨戦態勢でいた彼らを一瞬引き戻したのである。
「それに、最高のリーダー。」と、あとに続けてイリスが言った。
これに共感できるなど、初めは誰も思わなかった。だがこの時、その誰もが心の中でまたうなずき、上に立つ者を尊敬しきっている忠実な部下としての
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