⒈ 二年前・・・
文字数 1,904文字
あの日から、ここへは戻らないと誓ったはずだった・・・。
だがここへは、
しかし本音を言えば、レッドは今、
舗装されていない
レストランと酒場と宿でひしめき合う、木の壁でぐるりと取り囲まれた場所。そこは、ヴィックトゥーンと呼ばれる、ヴェネッサの町の小さな食堂街だ。
その中にある小料理店に、レッドはとりあえず
午前九時頃。
階段を駆け下りてきたレッドは、そのまま洗面所へ直行して顔を洗い、
その何やら
「どこ行くんだ。朝飯も食わずに。」
「面接。」
レッドは、店のドアを半分押し開けたまま答えた。
「ちょっと、森の向こうの貴族様の屋敷に行ってくる。」
「あそこはグレーアム伯爵の屋敷だぞ。何の仕事するつもりだ。」
「さあ。フィンに紹介されたんだよ。俺にぴったりの仕事があるから、とりあえず会うだけでもってな。」
「ああ、あの
「そうらしいな。もう俺の話をしちまったんだってさ。」
「働く気があるのか?」
「短期契約で気が向く仕事ならな。召使いだったら断ってくるよ。」
レッドは軽く手を一振りして外へ出ると、
曇り空のせいで薄暗い森を進んでいると、レッドは体の異変に気付いた。
実は何となく嫌な感じがしていたが、気のせいだと思いたくて無視していた。ところが、ここへ来て確信した。
体が・・・おかしい。
最初は妙だと思う程度だったのが、今ぞわぞわと
とても立ってなどいられなくなり、とにかく休めそうな場所へと、レッドは思うようにいかない体で、懸命に足を動かした。そして、
レッドは震えながら、体が楽な姿勢を求めるままに横になった。地面に頭をつけてぐったりとし、目を閉じて、自然と回復するのを祈りながら待った。
何か悪いものでも口にしたか。朝 (朝食)は抜いてきた。何が原因でこうなったと困惑しているうちにも、気分はますます猛烈に悪くなっていく。どうにもできない
レッドはゆっくりと首を回して、全てがくすんで見える、陰に覆われた森の中を呆然と眺めた。そばには何の気配もなく、森は無情で冷たく思えた。
自分は戦って死ぬ。そういう使命を負った。だから考えたことが無かった。それ以外のこと ―― 病気や毒 ―― にやられて絶命することを。そのせいで死ぬその前には、こんな苦しみと状態になるのだろうか・・・と、レッドはこの状況で何となく考えた。耐えられるのか・・・助けが必要かもしれない・・・。
そう気弱になり始めたあと、いつの間にか意識は無くなっていた。
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