その七十五 造られし神を仰ぐ 中編急

文字数 7,648文字

 太陽が水平線の向こう側に沈み、月が雲の隙間から顔を出し怪しく輝き始めた。暗闇に支配された竹林の中は、葉と葉が掠れる音だけがする。
「いよいよ、絹之神の時間が来る、か……」
 雰囲気でわかる。周りには熊や猪などの猛獣がいないのに、殺気を感じる。かなり黒く、そして深く、さらに悪い感覚だ。間違いなく、時間の流れとともにこの場に近づいている。
「こよいのいけにえは、おまえか。ひとのこよ、なをなのれ」
 上から、声がする。だがこの発音といい、音量といい、そして心を握りつぶすかの迫力。明らかに言葉を放ったのは、人間ではない。
 何かが羽ばたいたので、竹林を風が駆け抜けた。
「あ、あ……」
 斎の目の前に降りてきたそれは、確かに彼女のことを睨み、
「もういちどきく。なは、なんという?」
 確かに語りかけてきたのだ。
「き、き、きぬ……。絹之神、様ですか……?」
 鬼をはじめとした妖怪のような見た目だと思っていた。それか、神だというのだから、もっと神々しいのかもと予想していた。
 絹之神は、蛾……それも蚕の成虫の姿をしている。だが愛嬌は全くない。眼は鋭く見られているだけで鳥肌が立った。脚は刺々しく、そして力強く、地面に構えている。口には強靭な牙まで生えている。体の数倍の大きさはあるであろう二対の翅はよく見ると、桑の葉の形だ。腹の先には、鋭利な毒針がある。そんな悪夢の中に出てきそうな虫の姿をした神が、一般的な民家ほどの大きさなのだから、視界からはみ出てしまい、それが余計に恐怖を助長させてしまっている。もう立っていることができず、斎は尻餅をついてしまった。
「そうだ。いかにもわれが、きぬのかみ、だ。おまえたち、やままゆのにんげんにとみをもたらす。そのたいか……いけにえのおまえの、なまえをきいておきたい」
 紹介されるまでもなく、絹之神は斎が山繭家の人であることはわかっている。
「……随分と名前にこだわるのは、本当は無名の神であることを恥じているから、だろう?」
「だれだ?」
 数本の竹の陰から現れた詠山。彼は絹之神に恐れを抱くことなく、驚く様子も見せず、流暢に言葉をぶつけた。
「ありふれた伝説伝承に名を連ねられないほどに、本当は大した存在ではないのだ。しかもそれは自分が一番よく知っている。だが、認めたくない。山繭家というほんの一握りの血族にしか、崇拝されていない神。その他の大多数には、存在すら知られていない神。名前がある人を貪って、虚しい優越感に浸りたいだけの神。これを惨めと言わずに何と言う?」
「だれだ、そのようなことをわれにいうのは? やままゆのにんげんは、いつからそれだけえらくなったのだ?」
「神代詠山」
「なに?」
「本当は、誰でもいい、と答えたいのだがな。ここは侍の国らしく、名乗ってから相手を討ち取るのが礼儀!」
 絹之神は表情を変えた。
「うちとる、だと? ひとのこのぶんざいで、われをはいじょできるとおもったか! はいせきできるといいたいのか!」
 今まで通りなら、相手はただの生贄で、自分に食われるだけの意味しかなかった。だが目の前に堂々と立つ人物は、自分を負かせてみせると大きな声を出すのだ。
「おんをわすれたか、ひとのこ! やままゆのにんげんが、われなしでいきていけるわけがなかろう! あらためよ、そのごうまんなたいどを!」
「最初に話を聞いた時から、ありがたみを感じないんだよ」
 詠山は、いいや依代人は自分の宗教を選り好みしなかった。南蛮人が持つ聖書に興味を惹かれる者がいれば、東洋の伝説を学ぼうとする者、日本の神話にこだわる者もいた。他人の信仰する教えは基本的に、邪魔しないのが規則だ。
 しかし彼らは共通して、とある概念にだけは嫌悪を抱いていた。
「何故……人を導く存在であるはずの神が、その人に犠牲を強いる? 人間と比べるのもおこがましいと言うほど、偉大なる存在なのだろう? ならば恩など顧みず、信仰し崇拝する人に無限の慈しみを分け与えるべきだ。生贄を欲するのは善意を騙る邪神でしかない」
 彼らは神蛾島やその周辺の島々で、理解できぬ存在による事件を幾度となく解決してきた。助けられた人たちはお礼をくれるが、原則として自分たちからは求めない。自分たちは、困っている人を助けるという、当然のことをしたとしか思っていないからだ。
「ひとのこには、りかいできまい……。かみというそんざいは! ひとがものさしではかりおくそくでかたるなど、できぬということを!」
 詠山の言葉を聞いても、絹之神は態度を改めなかった。絹之神からすれば、人は自分に貢物を差し出し、それに見合った富を与えるのが当たり前。
 詠山は黙った。すると絹之神も表情は変えないが、口を閉ざした。少しの沈黙が竹林に訪れる。決して言い負かされたのではなく、あることがわかったからだ。
「……やはり、打ちのめすしかないらしいな」
 話し合いでは解決しない。わずかな可能性に賭けたが、意味はなかったようだ。
(もっとも……もとからそのつもりだが!)
 しかし計画は何も変わらない。
「絹之神よ! お前がどれほどの神なのかは知らん! だが! 従えぬと言うのなら! ここで我らに屈せよ! そして朽ち果てるがよい! 自らが主導権を握れるが故に脅しをかけ優位に立とうとする者こそ、救いの手を差し伸べることすらできぬ害悪! 貴様を今宵、浮世の塵芥……その内の一粒に変えてやる!」
 大きな声で宣戦布告をした。すると絹之神の方も、
「よかろう! かみしろえいざん、とかいったな? きさまのいのち、よこにいるいけにえとともに、くいつくしてくれる! われにはむかったこと、こうかいするひますらあたえんぞ! じせいのくはうたいおえてここにきているのだろうな、ひとのこぉをぉおおおおお!」
 夜の竹林には大きすぎる声で、咆哮した。

 戦いの火蓋が切り落とされた。だが、あっという間に終わる。絹之神は、詠山の手のひらの上で完全に踊らされていたのだ。彼は嫌悪感だけで、絹之神を逆撫でするような言葉を選び浴びせたのではない。
 そもそも詠山には、一対一で戦う気がなかった。相手は神なのだから、自分たちは全戦力をぶつけるべきだ。それが、邪悪であっても神に対する敬意。だからこの竹林には、既に仲間たちが展開している。刀、火縄銃、槍、火炎瓶など、武器にできる物は何でも持ち込んでいる。闇夜に木陰に隠れ、戦いを息をひそめて待っていたのだ。詠山が攻撃的な発言をしたのも、仲間たちの動きに気づかせず自分に注目させるためだった。
(嫌悪は本心だがな!)
 絹之神は、その思わぬ伏兵への対処ができなかった。
「ば、ばか……な……? われが、かみで、あるわれが………ひとのこに、ま、まけ……」
 加えて、詠山自身の強さも図り間違えた。要御が説明したように、絹之神は過去に侍や僧侶を退けてはいるが、簡単に蹴散らせた彼らとは明確に一線を画す存在だった。
「随分と呆気ないな、絹之神……」
 翅は千切れ、脚は折れ、牙は抜け、針は壊れ、眼は潰れ。見るも無残な姿となった絹之神。それでもまだ、
「う、うう……。ぐううう……。ひ、ひとの、こ………! え、い、ざ、ん………!」
 うめき声は出せるらしい。
「もう苦しむことはないぞ。我らが介錯してやろう」
 そう言い、詠山は最後の一撃を絹之神に加えた。
「ぐうはう…!」
 それでもまだ、絹之神の体は空に溶けていかない。
「……違うな、消えられない、のか…」
 悟った。どういう理由かは不明だが、絹之神はこの世との繋がりが強く、人の力では黄泉の国に送り出すことができない類の存在であるらしい。何も珍しいことではないので、驚くこともなかった。ただ冷静に、
「やはりお前の出番なのだな、回弩」
 この戦い……というよりは一方的な攻撃を、少し先からただ見ているだけの人物を呼んだ。
「相変わらず容赦を知らないな、お前は」
 彼……回弩は詠山の勝利を喜ばず、逆に呆れていた。
「ここまですることじゃなかっただろ、確実に!」
 回弩は、僕にする霊を虫の息まで弱らせることはないだろう、と思った。
「適当に回収してしまえ。下僕としたら、好きに使ってしまうんだ。人間の命令を聞き入れそう行動する……それこそ、絹之神には耐え難い苦痛だろうからな」
「記憶が残っていれば、の話だな……」
 不思議なことに、回弩が僕にするとその霊は以前の記憶が完全に欠落する。全く別の存在に造り変えているのだから、当然かもしれない。
「何か思い残すことはないか? えと、絹之神、と言ったか?」
「え、い、ざ、ん……。われ、は………。みた、ぞ……」
 か細い声で絹之神は、あることを呟いた。
 それは、不気味な予言だった。そう遠くない未来のことだ。暗闇の中、空から細長い筒状の物が大量に町に降り注ぐ。それは地面や民家に当たると火を噴き炎をまき散らし、人だろうが物だろうが周囲の全てを焼き払う。その火炎に飲まれて、詠山の血は絶えるだろう、と。
「神でも負け惜しみというものを言うのだな」
 何を言っているのか、詠山にも回弩にも、いいやその場にいる誰もが理解できなかった。ただ呪いを残したいのだろう、そういう認識に落ち着いたくらいだ。
「回弩、もうやってしまえ」
「承知!」
 回弩が和紙に文字を書き、筆を動かしながら、絹之神の額にそれを当てる。すると絹之神の体は一瞬にして、和紙に吸い込まれるように消えた。

 詠山たちは誰一人欠けることなく、傷一つ負うことなく、山繭家に帰還した。
「詠山! やったんだね?」
 報告を受けるよりも先に、要御が凱旋を歓迎し言った。というのも彼らが絹之神と戦った次の日から、途端にあの病が終息したのだ。
「お父様!」
 それに、愛娘である斎の姿もある。
「嬉しいには、嬉しいことだが……」
 だが同時に、落ち込むこともある。絹之神に生贄を捧げる必要がなくなったのは良いことだが、自分たちが崇めていた神様がいなくなるとなれば、少し思うところがあるのだ。
「その心配はいらん」
 そう返答する詠山。
「次のことを一族に伝えよ。絹之神は確かに我らが祓ったが、蚕や桑への敬いの態度は絶やすべきではない。この約束を破れば第二、第三の絹之神が舞い降り、惨事は繰り返されるだろう」
 釘を刺しておくことで、同じことを繰り返させない。
「わかっているよ、詠山。私たちはいつだって、蚕や桑に感謝をしている!」
「それでいいんだ」
 今日は長旅で疲れたので、ゆっくり休むことにする。詠山はまた、要御の部屋で斎も交えて話をする。
「まず謝らせて欲しい。私は、君のことを信じ切れていなかった。絹之神に負け、一族を大勢失うことになるのではないか……。君たちが陸前の方に出向いてから、その悪夢にうなされた。自分たちだけ助かって欲しいとさえ、願ったくらいだ……」
「頭を下げる必要はない。我らに対し信用がないのは、当たり前だ。何せ、無名の依代人なのだから」
 罪の意識を抱く要御に対し、詠山は気にする素振りを一切見せなかった。一人の人として当然の心配をして願望を持っただけ、という認識でしかなかった。
 だが要御が抱く感謝の感情は本物だった。深々と、それも額が押し付けられた畳が凹むくらいには、彼は頭を下げた。ふと彼は、斎のことを見た。彼女は詠山の横に座り、微笑んでいる。
「私たちは、詠山……君たち依代人のことを詳しくは知らない。きっと理解できないのだろうね。でも、そんな私たちでも! 君たちのことを援助することは可能だ! 無限の支援を約束するよ。それと……」
 一旦息をのみ、それからとても重要なことを伝える。
「それと、斎のことをよろしく頼む。是非とも嫁に貰って欲しい。君の家に嫁がせて欲しい」
 斎が今、死なずに生きているのは詠山のおかげ。だとしたら、その命は彼に最後まで預けよう。
「私からも、よろしくお願いいたします!」
 彼女もそれを快諾した。
「おお、有難き幸せ!」
 詠山も、予想外の展開に驚かず頷いた。
 三人はこれからに関して、詳しく話した。まずは詠山と斎の結婚式についてだ。要御は神蛾島の気候環境に興味があったので、式は島で行うことに。その際、一族を一部連れて行く。彼らが望めば、そのまま神蛾島に住んでもらって、島の養蚕・紡績技術のさらなる発展に繋げる。

 善は急げと、準備が完了すれば神蛾島に向かう。ちょうど帆船がまた本土に戻ってきたので、山繭家が乗る一隻が一緒に航海する。詠山は後者に乗り込んだ。
(やはり、呆気ないんだな……)
 船が港を出発する様子を、少し離れた崖の上で見ていた人物がいる。それは回弩だった。彼は親友である詠山が結婚するというのに……これほどめでたいことは他にないというのに、その式に参列しないのだ。
 彼はあることを考えていた。詠山は自分がやると決めたことを、着実に進めている。第一段階として、山繭家という大きな出資元を手に入れた。再び本土に来たら、本格的に依代人の統治を開始するだろう。
 しかし、自分はどうだ? 言われるがまま彼について行き、頼まれるがまま霊の相手をする。親しい間柄なのだからそれで良いとも思えるが、どこか引っかかる。
(俺も、自分がやりたいことをしよう。まあ、何をしたいか見つけることから始めないといけないんだが……)
 そうだ、自らの人生の道筋を決めよう。詠山のように大きなことは無理かもしれないなら、夢は小さくてもいい。叶えようとする努力にこそ、価値があるのだ。
 そして選んだのは、詠山と一緒に歩んで行かない道。
 だから、彼はこれが今生の別れであることを察知していた。にもかかわらず、涙は出ないし動悸も起きない。心に穴が開いた感覚がない。人生という取り返しのつかない判断の繰り返しで、大きな選択をしたというのに。今まで彼と育んだ友情は偽りではなかったはずでもある。
 二度と会うことがないと感じていたのは、回弩だけではなかった。甲板に斎と手を取り合って立つ詠山は、ゆっくりと遠ざかっていく崖の上に一つの人影を見つけていた。
(別れというものは、必ずしも悲しみを伴うとは限らないらしい)
 回弩の姿だ。今ここで視界の中から外れたら、再び入り込むことはもうないのだろう。直感でわかる。
(浮かれているから悲しめない、のか? いいや違う、物足りないんじゃない。十分に満ち溢れていたんだ、回弩と過ごした時は)
 今、自分は分岐点に立っている。ここから先の道には、これまで頼りにできた回弩はいない。いつもそばで自分を支えてくれた彼がいなくなるのは、自分への試練だ。この別れはその、乗り越えなければならない壁の一枚目でしかないのだ。
 二人は離れていくお互いの姿を消えるまで見送った。

「わたくしが知っているのはこれくらいですね」
 麗子の話は濃密だった。表には知られていない、謎の霊能力者の集団。彼らは人々を恐怖で支配しようとしたのではなく、逆に苦しむ誰かを救おうとしたのだ。
 意外だ。以前話を聞かせてくれた死魂を狩る聖閃は、人使いが荒いだの事情を考えてくれないだの言っていて、そこからは横暴な態度しか連想できないからだ。
 ただ、彼らに共通して言えることが一つ。この世ならざる怪しい力をその身に宿していても、それを使って人々や表社会を攻撃してない。神代という組織が制御している面もあるのだろうが、彼らの共通認識として、
「幽霊が見えない一般人には危害を加えてはならない」
 越えてはいけない一線があるのだろう。
「素晴らしい話をありがとうございました」
 俺は長く深く頭を下げた。祈裡も他のみんなも感謝の意を述べた。
「いえいえ。お礼をしたいのはわたくしの方ですよ。本当か嘘かわからない昔話に、真剣に耳を傾けてくださるのですから」
 依代人と名乗った彼ら……神代のひな型になった人物たちのことは、これから調査を続ける。そしてもっと情報が集まったら、記事にすることを俺は麗子に約束した。
「ですが……」
 が、ここで言葉を濁し始める麗子。
「どうかしましたか?」
 陽一が追求すると、
「初代の神代詠山は猛者だった。それは間違いないと思います。しかしです、科学技術が日々進歩するように、心霊的な力も時代とともに発展していることを考えると、百五十年以上も前の彼らの実力は今を生きる一般的な霊能力者には遠く及ばないでしょう……」
「え? で、でも弱かったら、絹之神に負けてしまうのではないですか? 詠山は、勝ったんですよね?」
 当然の疑問をぶつける雪子。すると、
「それに関して、お二人に聞きたいのです。絹之神は、山繭家の人が勝手に、それこそ口先だけで造り上げた神。そのような存在すらも、自らの僕にできるのでしょうか?」
 麗子が逆に聞き返す。
「う~む……」
 真っ先に黙り込んだ雪子に対し、少し考えて陽一が、
「多分、ですが……。山繭家の人が偽りの伝承を喋ったことで蚕や桑の魂が集まり絹之神に変化した、となるのなら、元々が生き物の霊魂になるわけですから、可能なはずです」
 ある種の言霊信仰だろうか? 絹之神の起源によってはできると彼は断言する。
「まあ~……。俺は絹之神を実際に見て触って聞いたわけではないので……。似たような前例も聞いたことないですし? しかし、何事にも神は魂は宿る! 火のない所に煙は立たないのと一緒です」
 どうして麗子はそのことを陽一と雪子に質問したかったのだろう? 理由はすぐに教えてくれた。
「実はですね、神代……霊能力者の中で、とある噂が囁かれているのです」
 それは怪しい疑惑だった。
「絹之神と戦ったのは、詠山ではなく桑浦回弩だったのではないか、というものです」
 なるほど。詠山の実力では、勝利できたか怪しい。しかし強弱に関係なく魂を下僕にできてしまう回弩なら、その心配がない、ということか。
「そうなると……。回弩のその後が気になりますね。どうなったんですか?」
「わかりません」
 首を横に振る麗子。
「えっ?」
「少なくとも神代の記録には、絹之神との一件を最後に、その後の回弩に関する記載は存在しないのです」
 彼は影の舞台から忽然と姿を消したというのだ。それはこういう解釈ができてしまう。
「詠山にとって、自分の代わりに絹之神を倒した回弩の存在は自分の権威と強さを誇示するには邪魔で、だから彼を闇に葬ってしまった」
 背筋が今、鳥肌に変わった。
「そ、そこまでしますか……? いくら霊能力者の統治・支配のためであっても……。それに二人は親友同士だったのでしょう?」
「神代によって回弩が抹殺されたと考えると、ますます絹之神を祓ったのは回弩の方だった、という見解が強くなるのです」
 理由としては十分か……。友情が策略を前にして破られることなんて、珍しくもないだろう。麗子もこの話を聞いた時、夫に回弩の子孫について質問をしたそうだが、わからない、とだけ返されたらしい。
「神代として彼の痕跡を追おうとしない態度も、何か怪しくありませんか?」
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