予知夢

文字数 1,039文字

 最近私は、夢で見た事が現実に起きるという体験をした。
 最初は驚いて、夢が何かを暗示しているのかも知れないと思ったが、偶々偶然が重なっただけだろうと気にしない様にしていた、が、二度三度続く夢に気持ち悪くなりながら夢を見ていた。
 まず初めは、街の中を歩いている時、十数年ぶりに元カノに会った夢だ。元カノは数年前に自殺している。夢を見た翌日、私が電車の中で元カノに会ったのである。私は向かいのシートに座っている女を見て、元カノによく似ていると思っていたら、降車したホームで女から声を掛けられた。
「K君じゃない? 私の事覚えてる?」
「サ、サヨコか?」
 私が戸惑いながら聞くと、
「そうよ、貴方全然変わってないわね」
 妻はそう云うと、ポカンとなって佇む私を置き去りにし、足早に去って行った。
 次は、私が昨年殺した女に街でバッタリ会った、夢。女は私に近づいて来て、
「私の事覚えてる?」
 と云った。
 私は軽い遊びのつもりで職場のハイミスに手を出した。女も私に気がある事は何となく気付いていた。女は想像していた以上に淫乱だった。女は私に夢中になった。女が職場で私に馴れ馴れしく声をかけて来る様になり、職場内で噂になった。私が余所余所しい態度を取り続けていると、女が私に嫌がらせをする様になった。家にも何度か電話を掛けて来て、女房と長話をしている。
 私は別れ様と思い、その事を女に云うと、
「それなら、奥さんに今までの事を、全て話すわよ」
 元カノが私を脅した。
 私はかっとなって、女の首を絞めて殺したのである。
 その女と街で会う夢をその前日に見たのである。私が蒼い顔をしていると、
「今度お家にお邪魔するから」
 と云って去って行った。
 三度目は、五年前に死んだ妻に電車の中で会った。
 向かいのシートに座る元カノを見た時から私はそれが死んだ妻である事に気が付いた。
 女も私に気付いている様で、さっきからずっと私を見続けている。
 私は火葬場で妻の骨を拾い骨壺に入れ、霊園にある墓に納骨したので女が死んだ事を知っている。 
「貴方元気そうね」
 元カノが私の目の前にやって来てそう云った。
「お前は如何して……」
「私ね、ちゃんと死ねなかったのよ。
 死んでもあの世に行けずに、又舞い戻って来たの」
「それって、生まれ変わりって事?」
「だから、ちゃんと死ねなかったって、云ってるじゃない」
 女はそう云うと、隣の車両に移動した。
 それ以来夢を見る事は無くなったが、その夢から覚めずにいる事を私は夢を見ながら気付いている。



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