謎の屋敷

文字数 1,543文字

 郊外のだだっ広い敷地に建つ、英国の大きな古い城の様な屋敷内に私はいる。
 天井の高いホールの様な室内で、覆面をした複数の男女が裸になって性交している。
 私は以前、これと同じ様な光景を何処かで見た記憶がある。
 何処で見たんだろうと思い出していると、それは自分の体験ではなく、映画の中で見た光景だったと気づいた。巨匠と呼ばれる監督の遺作に、これと似たシーンがあったのだ。衝撃的だったそのシーンが潜在意識として残り、夢として再現されたのだろう。
 広い屋敷内を歩いていると、覆面をしていない男女が廊下に立っていた。
 男がウイスキーの瓶を下げ、二人が交互に飲んでいる。二人はかなり酔っている様で足元がふらついている。二人を見て、何処かで見た事があると思った。もう一度よく見ると、ジョン・レノンとオノ・ヨーコだった。
 二人が驚いている私に近づいて来て、
「ここにいては危ないから、早く出て行った方が良い」
 と耳元で囁く。
「これは、何の集まりなんですか?」
 と私が聞くと、
「今は云えないけど、とにかくここにいたら、やがてキミも殺される」
 とジョン・レノンが云う。
 私は二人の忠告通り急いでこの屋敷から脱出しようと、出口を探し長い廊下を歩いた。
 すると又、覆面をしていない男女に擦れ違った。見た事のある顔だと思っていると、それはジョン・F・ケネディ夫妻だった。
 私はこの迷路の様な広い屋敷内を、出口を探し歩き続けた。
 ホテルの廊下の様に両サイドにドアが続いてあり、全てのドアノブを回すも、どれも開かない。何度目かにトライした後、やっとドアが開いた。
 ドアの先は、暗闇に続く階段だった。
 私は焦りから何も考えず、その階段を下りて行った。暫く下ると、長い廊下に出た。
 やはりその廊下の両サイドにもドアがあり、片っ端からドアノブを回すも、開かない。廊下の突き当りまで来ると、非常階段の出口があり、そこから更に階段を下った。
 私は必死に、小走りで階段を下った。もうどれ程下ったのか見当がつかない。
 私はヘトヘトになり階段途中の踊り場で休んだ。踊り場の壁にも小さなドアがあり、念のためドアノブを回すと、軋みながら開いた。中を覗くと、そこから別の階段に繋がっており、外に出るための非常出口に違いないと、その階段を下りる事にした。
 螺旋の階段をぐるぐる回り下って行くと、真っ暗なボイラー室の様な所に着いた。更にボイラー室の中を手探りで歩いて行くと、又ドアがあったので、そのドアノブを回すと、そこにはガウンを纏った若い美女たちがソファーに座っていた。驚いた顔で美女たちが私を見る。
「出口を探しているんですが、どこから出たらいいのですか?」
 と私が聞くと、美女たちが一斉に「シィ」と人差し指を口に当てた。
 若かりし頃の女優岸恵子似の、いや、岸恵子が私をボイラー室に連れ出し、
「アナタは、どうしてここがわかったの?」
 と聞く。
 私が事の経緯を話すと岸恵子は、
「アナタは今、とんでもない場所に来ているのよ、この事がばれると、アナタはこの場所から生きて帰れなくなる」
 と眉間に皺を寄せながら神妙な顔で言う。岸恵子のガウンの下から覗いている足がとても奇麗だ。
「じゃあ、どうやってここから逃げ出せるのかを教えてほしい」
 と私が言うと、
「もう少し待ってくれたら、私の番が済むので、ボイラー室で待っていて」
 と岸恵子が言う。
「どれぐらい待てばいいのかな?」
 と私が聞くと、
「そうね、多分後一時間もしたら終わると思うわ」
 と岸恵子が言う。
 私はその後、ボイラー室で岸恵子を待っていたら、疲れが出たのかそのまま眠ってしまった。
 目が覚めると、何時もの朝だった。
 枕元には図書館から借りて昨夜途中まで読んだ、秘密結社に関する本が置いてある。
 






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