淫乱

文字数 1,772文字

 ツーショットダイヤルで知り合った女は、半端なくエロい声の持主だった。ただ会話をしているだけなのに、私は何度かいきそうになった。
 女はイクノと名乗り元銀行員だと云った。私はツーショットダイヤルで知り合った女達が、本当の事を云わない事は百も承知で会話を楽しんでいたから、イクノの話も作り話だろうと思った。こんなエロい声の銀行員がいたらと想像してみたが、あの硬い雰囲気の職場にはどうしても馴染まない気がした。
 私も妻子ある四十過ぎの中年である事や、中学校の教師をしている事は、決して云わない。何時も十歳ほど若い市役所の職員と偽っていた。
 この頃の私は、夫婦仲が最悪で職場のストレスや借金問題でも悩みを抱え、何時も現実逃避の為にツーショットダイヤルを利用していた。
 今までに何人かの女と話したが、主婦が夫の出張中に電話しているとか、女子大生が暇つぶしに電話しているといった感じで、何処にでもいそうな普通の感じの相手だったから私も料金の事を気にしながらも許せる範囲で会話を楽しんでいた。
 イクノと初めて話した時、イクノの声に漂う妖艶さに忽ち私は虜になった。
 私達は暫くは取り留めのない会話を続けていた。やがてイクノの携帯番号を聞き、私の方からイクノの携帯に電話する様になった。
 その後、エロいイクノの声に導かれる様に、いやらしい会話をする様になった。
 イクノは私がいやらしい話をすると、
「もっともっといやらしい事云って、もっともっと云って、アーァ、そのままワタシをいかせて」ととろける様な甘い声で私に囁きかける。
「オレ、いきそうだよ」
「アーァ、いっていってワタシも一緒にいくから、アーン」
 私とイクノはこうやってテレフォンセックスまがいの会話を続けていた。
「イクノちゃん、今度会いたいね」私がそう云うと、
「エーッ、ワタシ恥ずかしいな」イクノが甘える様な声でそう云った。
「だってさぁ、そんな色気のある声を出すイクノちゃんを一目見たいじゃない」
「ワタシの声ってそんなかなぁ、だけど、会うのは恥ずかしいよ」
「イクノちゃんこの前さぁ、前の彼氏と何度も野外でセックスしたって云ってたじゃん」
「前の彼氏って変態だったから、山に登って人がいなかったら展望台とかで要求してくるのよ」
「そんなところでセックスに応じたイクノちゃんも凄いと思うよ」
「だって、しつこく迫ってくるから仕方ないじゃん」
「オレだったら、人に見つかったらどうしようと思って、起つものも起たなくなるけどね」
「ワタシだって、冷や冷やものだったわよ」
「でも一回も誰かに見られた事、無かったんだよね?」
「まぁ、すれすれの事はあったけどね」
「何、すれすれって?」
「だから、終わった直後に、突然人が現れたりとか……」
「服は着てしてたの?」
「もちろんよ、そんな所で裸になって出来ないよ」
「そりゃそうだよね」
「後さぁ、車の運転中にも触ってきたんだろう?」
「そうなの、信号待ちの時に胸やあそこを触ってくるし……」
「だってキミが嫌だって云えば、彼だってそんな事しなかったんじゃないの?」
「彼はワタシが恥ずかしがる姿を見るのが趣味なのよ」
「けどさすがに、運転中に本番は出来ないよね?」
「フェラチオは何度かさせられたわ」
「エーッ、彼の運転中にかい?」
「そうよ」
「エッ、信号で止まった時とか、隣の車に見られなかった?」
「わかんない?」
「本当にキミも大胆な事をしてきたんだね」
「もう、彼と付き合っている時は、本当に色々あったわね」
「他にどんな事したの?」
「そうね、彼の友達が運転している車内の後部座席でした事もあったし、その後、河川敷で3Pした事もあったわね」
「……」
「アッ、ごめん、ひいちゃった?」
「いや……、そんな事無いけど……」
「3Pなんて、キミが勿論了承の上でやったんだろう?」
「だから、前の彼ってワタシが恥ずかしがる事なら、何でもさせたのよ」
「他には、どんな事?」
「オナニーしてるところを動画で撮られて、彼の友達に見せたり……」
「結構、酷い彼氏だったんだね」
「そうね、だけど、ワタシが彼の事好きだったから、彼の喜ぶ事なら何でもしてあげたかったから」
「そうなんだ、好きな彼の為なら、3Pだって出来るんだ……」
「それにね、ワタシ淫乱だから、そういう事嫌いじゃないの」
「……」
「だから、ワタシと会うのは止めた方がいいかもよ」
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