私は山田

文字数 1,003文字

私は英子が好きだが山田は道子が好きだ 
私は山田だが山田は私とは違う 
私が山田だと思うのに山田が私と思わないのはおかしい 
山田の頭が狂ってしまったのかもしれない 
そういえばこの前山田が私を玲子と呼んだが私は太郎である 
私は玲子のことをしっているが玲子はスズキと言う 
私もスズキだが玲子ではない 
皆が私のことを玲子と呼ぶのはおかしい 
私が太郎だと言っても皆が信じない 
山田が太郎はあなたのお父さんだという 
そんなばかな父は英子のはずだが英子は女だから母ならわかるが父は女だったのだろうか
そんな馬鹿な話はない 
山田も皆もおかしい 
山田が私をきちがい扱いするが山田の方が絶対狂っている 
山田は道子が好きだと言ってるが道子は私の祖母でもう八十を過ぎている 
山田は熟女好きだと言っていたが腰の曲がった老婆が好きだなんて普通ではない
山田はそれに何故私でないと断言できるのか
そこのところが怪しい 
私は山田の狂人説に同意するのはその一点があるからで私は山田が私でない根拠を何も持たない 
山田はきっと誰かにそそのかされて自分が私でないと信じこまされているのだろう
山田だってかっては私であることを誇りにさえ思っていたはずだ 
何故山田は私でないというのか私にはわからない 
私はあれだけ山田のために尽くしてきたのにあんまりだ 
私は段段腹が立ってきた 
山田を殺してしまいたいという思いが私の中に沸沸と湧いてくる 
私は山田でいた時にどれほどの苦労をしたのかわからない
それなのに山田は私のことを忘れてしまっているなんて信じられない 
ならば私が山田を殺しても罪に問われることはないはずである 
山田は私を恨むこともできない
山田が私であった過去をむしろ無意識の内に消そうとさえしているようにも思える 
だからやはり私は山田を殺さなければならない 
しかしその前に私は山田の本心をもう一度確かめたいのだ 
私は私である山田が今でも好きだから山田を虫を殺すようには殺せない 
山田に本心を聞き納得したうえで思いっきり殺す方がすっきりするからだ 
それに私にはまだ山田としてやり残している問題もあるにはあるのだ 
それをやり残したまま山田を殺すときっと後悔するだろうと思う 
後悔してまで大好きだった山田を殺すのは馬鹿馬鹿しい 
と言うことはやはり山田の本心を聞かなければならない
英子と道子のどちらかを選ばなければこの先この問題は一歩も先に進むことができないのである



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