新撰組・山南敬助

文字数 1,145文字

 私は馬に乗って、砂利道を疾走している。砂埃が勢いよく、舞い上がる。
 私は、時折背後を気にしながら、走っている。その様子から、何者かに、追われているのかもしれない。
 追手の気配はない。私は安心して、更に馬に鞭をあてる。
 暫く走ると、前方に海が見えてきた。いや違う。湖の様だ。それにしてもでかい湖だ。
 湖の畔の宿で休んでいると、美少年が訪ねて来た。美少年が私の事を、ヤマナミさんと呼んでいる。どうやら私は新撰組の山南敬助で、美少年は沖田総司の様である。
 沖田総司の血相を変えた様子から、私は何か只事ではない問題を犯してしまったらしい。
 二人で今後の対応策を話したが、埒が明かない。二人で出した結論は心中をする事だった。
 今晩は最後の夜だからと、ぐっすり朝まで飲む事にして、そしてついでに関係まで持った。私は沖田総司が好きなのである。
 翌朝、二人で心中しようと、湖でボートを漕いでいると、風もないのに突然大きな波が起きた。すると遠くの方でネッシーが姿を現した。
 私と沖田総司はネッシーに気付かれない様にと、沖にボートを漕いだがすぐに気付かれ、食われそうになった。その瞬間、上空にバナナの形をした宇宙船がやって来て、我々をネッシーから救ってくれた。
 その後我々は、何処に連れて行かれるのかと思っていたら、火星に降ろされた。
 降りる時に、イカの様な宇宙人が、
「オマエ、ココデ、オロスケデ、コノコ、ワシニ、アズカリ」
 と言った。
 私は自分の命が惜しかったので、
「どうぞ、どうぞ」
 と言うと、
「ヤマナミさん、それはないでしょう」
 と沖田総司が半泣きの顔で言う。
 その後私が火星を歩いていると、高杉晋作に会った。二人で場末の飲み屋に入り、旧交を温めていると、隣の席で土方歳三と坂本龍馬の妻のおりょうが飲んでいた。
 しゃくにさわったので、暗殺しようと高杉晋作に耳打ちすると、そりゃあいい考えだが、せっかくだから土方歳三にたかろうと言う話になり、四人で飲む事にした。
 酔った土方歳三が相変わらず渋い顔で、
「どうしてお前は脱走したのか?」
 と聞いたので、
「お前がきらいだから」
 と言うと、泣き出した。土方歳三は酒を飲むと、泣き上戸になるらしい。
 高杉晋作が、
「泣きみそがぁ」
 とからかうと、更に大きな声で泣く。まるで子供の様である。
 おりょうが、
「男の子が、何時までもメソメソ泣くのはあきまへんぞなもしなぁ」
 と妙な方言を使い、土方歳三の頭を一升瓶で思いっきり叩いたら、土方の頭がスイカの様に真っ二つに割れた。三人は、ざまぁみろと笑って店を後にした。
 外はまだ暗かった。やがて、火星の地平線から太陽が昇った。
 高杉晋作が、
「新しい夜明けじゃ」
 と叫び、私とおりょうも、
「夜明けだ、夜明けだ」
 と言って、叫んだ。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み