ある朝目覚めると、妻は

文字数 2,047文字

 ある朝目覚めると、何時も私より早く起きて朝食を作っているはずの妻の姿がない。妻は別室で乳飲み子と一緒に寝ている。その部屋を覗くと、妻はまだ寝ていた。
「おい、何時まで寝ているんだよ、朝飯の準備をしろよ」と私が云うも、妻は眠ったまま何も云わない。
「おい、どうしたんだ? 早くしないと間に合わないぞ」と私は少し苛ついてそう云った。
 妻は布団を頭から被り、もぞもぞと体を動かしているが、起きようとしない。私は段段腹が立って来た。
「おい、一体何時だと思っているんだ、早く起きて飯の準備しろよ」と私が怒鳴ると、
「うるせえな、でかい声出すと慎太郎が起きるだろうがぁ」と妻が不貞腐れた様子で布団から顔を出して言う。
「えっ?」
 私は妻のぞんざいな口の利き方と態度に唖然とした。妻は、付き合った3年と結婚して2年の間、私にこのような態度を見せた事がない。妻は頗る大人しく、優しい女だった。
「どうかしたんかオマエ? 何かあったのか?」
「どうしたもくそもあるか、オマエが朝から煩いからムカついてんだよ、バカ」
「はっ?」
「はっ、じゃねえよ、くそでかい声出しやがってよ、慎太郎が起きるだろうが、そんな事もわかんないのかよ、このうすのろ」
 私は時間がもう無い為、これ以上云っても仕方がないと思い、自分でコーヒーを入れて冷蔵庫にある食べかけのチーズケーキを食べて、家を出た。
 私は車を運転しながら、妻に何があったのかと、冷静に考えた。昨夜の妻の様子に変わった所はなかった。ここ数日も特に変化は見られない。強いて言えば、産後のひだちが悪いと、天候により頭痛がすると云っていたぐらいである。しかも妻は汚い口の利き方を嫌い、そういうタイプの人間と距離を置く。ならば今朝の妻の口調は誰の真似だろう? 私は運転しながらずっと考えていた。
 私は朝の内こそ妻の事を考えながら仕事をしていたが、業務に追われる内それも忘れていた。退社後車を運転していたら、朝の出来事を思い出した。妻の様子が今朝の状態のままならどうしようと不安を抱えながら恐る恐る帰宅してみたが、妻は又元の妻だった為安心した。
 翌朝目覚めた時、やはり妻の姿が台所にない。私は妻を起こすかどうか思案に暮れたが、取り敢えず様子だけでも見ようと思い、妻の寝室を覗くと、やはり布団をすっぽり被って寝ている。
「おい、大丈夫か? 体調悪いんじゃないのか?」と小さな声で聞くも、反応がない。止せばいいのに私はここでもしつこく、
「おい、どこか悪いんなら病院に連れて行ってやろうか?」と妻の体をゆすった。
「だから、やかましいって云っただろうがよぅ、いい加減にしろよ、このバカ」と妻が私を罵る。
「なんだよ、その言い草は、オマエの事を心配してるのに、バカとはなんだ、バカ」
「だから、オマエはとっとと仕事に行けよ、このウスラバカ」
「ウスラバカとは何だ、オマエは誰に向かってそんな偉そうな口をきいているんだ、このブタ」
「やっかましいわ、オマエこそチビで短足の下衆野郎のくせに、偉そうにほざくんじゃないよ」
「オマエ、ええ加減にしないとぶっ殺すぞ、この野郎」
「オー、殺せるものなら殺して見ろや、オマエみたいなビビり野郎にどうして私が殺せるかよ」
「なんだとぅ、殺す事なんて朝飯前だけど、オマエみたいな小汚いブス野郎を殺したって一銭の得にもならんからやめとってやるけど……、それにしてもオマエ一体誰からそんな汚い口の利き方教わったんだよ」
「バーカ、誰にってオマエに決まってるだろうが、アホンダラ、オマエはよぅ、付き合ってた頃は猫被って紳士ぶっていたけど、結婚した途端、釣った魚には餌あげん体で、散々私を罵倒して来たじゃないか、そんな事も覚えてないのか、この詐欺師のクソチンコ野郎」
「なにや、全てオレのせいにするのか、このクソマンコ野郎が」
「えーえー、どうせ私はクソマンコよ、けど、あんたはこのクソマンコを舐めまくって、挙句には何時も何時も紐で縛って、変態セックス強要したのよね、セックスを毎晩強要する癖に、超下手糞で超早い、こんなセックス下手糞な男私の付き合った男にはいなかったから、本当最悪だったのに、それを毎晩毎晩お付き合いさせられて、私がどれだけ苦痛だったかオマエは全く解ってないだろうがぁ」
「うそー云え、オマエだって、オレの愛撫に愛液垂らして十分応えていたじゃないかよ、オマエのあそこが濡れすぎてバスタオル腰の下に敷いてやったくせに嘘云うんじゃねえよ」
「あんたのセックスなんて最低よ、エロビデオの見過ぎで、ただ強引に入れてやれば女が悦ぶと思うようなバカ男には何を言っても始まらんけどね」
「ならよ、最初からそう云えば良かったじゃねえかよ、やる事は散々やって今更良くなかったなんて、ふざけるんじゃねえよ」
「だから、あんたは最低だって云うのよ、女心なんて全く解りゃしないんだから」
「そんなもん、解らなくてもダイジョーブダヨーン、ふーんだ」
「そういうねあんたの子供らしいところが大嫌いなのよ、全く反吐が出そう」

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